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始まりの魔王と終わりの勇者  ~猫になった最凶魔王と天然最強勇者のハチャメチャ144日間大陸救済旅~  作者: 式見 汀花
第二章 東の都 ~いろいろとデカい都~

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第78話 北の山の頂上 #3

「小僧の頑張りが足らぬのではないか。もう一曲歌え」

「別にいいですよ。こうなったら何度でも歌いますよ」

「ちょ、ちょい待ち。それはさすがにヤバいって」


 聖女が慌ててストップをかける。

 鼻から垂れたブランデーを袖で拭いながら、周りを示してきた。


「ほら。冷静になろう少年。少年が古代文字を見つけた巨石は、ほら。時計で見立てると、ちょうど真北――十二時の位置だろう? たぶん、お題が書いてあって、それを順番にこなしていくと、龍か、笛が出てくるんじゃないかい?」

「うん、じゃあ、次のお題を見てみようよ」


 兵士長の娘が言う。

 それに僕は首を振った。


「調べるのはいいですけど。歌ってからでもいいんじゃないですか」

「いやっ! 気持ちだけで十分だ少年。人生捨て鉢になるにはまだ早いぞ」

「それか、小娘にも歌ってもらうか。小僧が下手すぎてなにも起きなかったのかもしれんだろうが」


 さっきは、下手でも精一杯歌えばいい、とか言っていたくせに。いけしゃあしゃあとそんなことを言い出す魔王。

 でも、僕も兵士長の娘の歌を聴いてみたかったので、台座を降りた。


「ええ、でも、お兄ちゃんの後ってハードル高いなぁ」

「限りなく低い。遠慮なく歌え」


 魔王に急かされて、兵士長の娘は台座の上に立った。

 そうして、僕が歌った民謡と、全く同じ民謡を歌う。

 終わると、三人で拍手をした。僕とは雲泥の差があった。もちろん、僕が泥だ。

 しかし、なにも起こらない。


「じゃあ、これでお題を順にこなしていくってのは確定だねぇ。さあ、ちゃっちゃと見ていこう。次はどんな面白いのが見られるかな」

「お姉さんもやってくださいよ。たぶん、誰がやってもいいんでしょうし」

「ああ、構わないよ。じゃあ、順番に回してやっていこうかねぇ」


 そこからは、全員で巨石のお題に挑むことになった。

 ひとつ目の巨石は、歌であった。次の巨石に書かれていた文字の内容は、『魂の踊りを天に向かって捧げよ』であった。


 これは聖女が取り組んだ。酔っ払いの独特なテンションで、バチが当たりそうな奇妙な踊りを台座の上で捧げる。これには、僕も大笑いしてしまった。

 そんな具合で、僕たちはお題を、やけくそになってひとつずつこなしていった。

 日も傾いてきた頃に、僕たちは、ようやく最後の巨石のお題に辿り着いていた。


「はぁ……。いい加減、疲れたねぇ。笑い疲れだけど」

「でも、これで終わりじゃないですか。なんて書いてあるんです?」

「オーケー、ちょい待ち」


 十一個目のお題、動物のものまねで、ヤギのものまねをするためにその辺の植物で白い髭までつける演出をしていた聖女が、真剣な顔で考え込む。(ものまねは迫真で、全員大爆笑だった)


「ええとね……『台座の前で、祈りを捧げるべし。真なる平和への祈り届きしとき、天より手が差し伸べられるであろう』……だってさ」

「最後のだけ、いやに普通ですね」


 ここまで、ひたすら屈辱を煽るようなことばかり要求してきたのに、最後だけやけに殊勝だ。


「そういうものなのだろう。とりあえず、やってみるぞ」


 七個目のお題で、聖女と一緒に即席コントを披露する羽目になった魔王が言う。

 互いに恥をかきあったせいで、僕たち四人は多少のことでは動じなくなっているのは事実だった。


 僕たちは台座の前に並んで立ち、目を閉じて、祈りを捧げた。

 僕は、一心不乱に祈った。こんなお題を出してきたヤツの顔を拝んでやりたい。その一心で、強く祈る。


 すると――


「小僧! 下がれ!」


 魔王が鋭く言った。僕たちは四人で、慌てて後ろに跳んだ。

 その言葉の一瞬後。いきなり、台座から激突音が聞こえた。衝撃波すら伴うような、すごい音だ。埃が舞い上がっている。


「なんだい、なんだい」


 聖女が言う。僕は埃を手で払いのけながら、目を凝らした。

 なんと、台座の上に、人が入れそうなほど大きな、宝箱が鎮座していた。


「……いったい、どこから?」

「上だ。祈っていると、いきなり上空にこれが現れたのが分かった。降ってきたのだ」


 僕の言葉には、魔王が答えてくれた。ちょいちょい、と宝箱を指す。


「開けてみよ、小僧。はたして、鬼が出るか蛇が出るか」

「恐いなぁ。あんまり、宝箱にはいい思い出がないんですよね」


 ぼやきつつ、進み出る。僕は宝箱を調べた。


 なんの変哲もない――あるいは変哲しかない――木製の箱だ。上空から落とされてきたというのなら、バラバラに壊れてしまってもおかしくないように見えるが、そうなっていないということは、なにか不思議な力で守られているのだろう。

 鍵はかかっていない。僕は、思い切り宝箱の蓋を持ち上げた。


 中を覗き込む。と――


「こんにちはー!」


 声がした。驚いて、台座から飛び退く。


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