表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
始まりの魔王と終わりの勇者  ~猫になった最凶魔王と天然最強勇者のハチャメチャ144日間大陸救済旅~  作者: 式見 汀花
第二章 東の都 ~いろいろとデカい都~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/104

第73話 魔王の考え

 少し歩くペースを落として、そちらに耳を傾ける。


「ご明察さ。そうやって、魔物を殺しまくれば、勇者は次第に、邪悪なものを殺すことに関して、一切のためらいを抱かなくなる。そういう心の制限みたいなものを外すために、デザインされてもいるのさ。よく考えるよなぁ」

「それは、つまり……」

「ああ。魔王ってのは、魔を極め、邪悪に染まったとはいえ、元は人さ――勇者が今までバケモノと戦っていたから大丈夫でも、いきなり人の形の敵とやり合うってのは、拒否反応を示したっておかしくないだろ? だからさ。邪悪な魔物の延長に邪悪の首魁たる魔王がいる、って感覚をつけさせて、ためらいなく殺せるようにってことだよ」


 僕は、首を振った。

 なんてことを考える人なんだ。


 言われれば、それこそが合理的ではあるのかもしれないが。

 魔王の理想の勇者とは、魔物を殺しまくり、どんなものも殺せるほど強くあり、そのうえであれだけ強い魔王に対して少しの躊躇も見せずに殺してみせる、そういう存在なんだろう。


 それだけのことができる勇者なら、単独で封印されしものを消してしまうことだって、できる気がする。

 そういう存在こそ、魔王は求めていたのだ。


 前を歩いている、兵士長の娘の頭にしがみついている魔王を見た。


 僕は――どうなんだろう。当然、不合格か。

 魔王城で、降参してほしいと言った僕に、あの人は失望の目線を投げかけてきた。

 強さはギリギリ及第点でも、思い通りの勇者ではなかったからだろう。


 と、聖女が、また言った。


「初日に呑んでた時にねぇ、あいつは愚痴ってたよ。すべてにおいて相応しいヤツが現れたと思ったら、とんだ腑抜けだったってねぇ」

「やっぱり」

「あはは。でもねぇ……。なんとなく、あいつは嬉しそうにしていたよ。せっかくの設計を台無しにするような馬鹿が、よりによって千年目で出てくるかって。私の完璧なシステムをひっくり返すようなヤツがいたんだ……ってねぇ」

「ただの愚痴では?」

「どう捉えるかは、自由さねぇ。まぁ……でも、あいつ自身、今までの魔王と勇者の構造を、それこそ逆手にとって完全にひっくり返しちまった、とんでもない魔王さ。少年。君は、さらにそいつをひっくり返してみせたのさ。結果、あいつに愚痴を言わせたくらいの存在なんだってことは、確かだよねぇ」


 ぽん、と聖女は、僕の肩を叩いた。


「ともかく、この大陸をどうにかするのは、少年とあの猫だろうって、私は絶対にそう確信してるよ。聖と邪が合わさるとなんか最強に見えるだろ? そういうことさ。少年とアイツなら、きっと、誰も考えもしなかったような答えに辿り着ける。ふたりとも、全部をひっくり返してきた勇者と魔王なんだからねぇ。私は、そう思ってるよ。だから……最後まで、ちゃんと頑張れ。な?」


 僕は、聖女の顔を見上げて、頷いた。

 激励の言葉は、僕の胸を、強く打った。頭を下げる。


「……はい。ありがとうございます。お姉さん」


 言うと、聖女はむはあ、と酒臭い息を吐いた。


「……可愛いわぁ。なぁ、少年。全部カタがついたら、お姉さんのところ来なよ。宿で祝盃あげよう。で、翌日、宿の主人に『ゆうべはおたのしみでしたね』とか言われようぜ」

「意味が分からないです」

「んんー、子供には分かんねぇかぁー。まあ、いずれちゃんとお姉さんが教えてやろう」


 手をわきわき動かしながら言ってくる。なんか、半径三メートル以内に近づいてはいけない感じの人だ。

 恐いので、兵士長の娘たちに追いつく。

 と、そちらはそちらで、なにか話をしていたらしい。会話が聞こえてくる。


「ねえ、作ったのが魔王なら、なんであんなキモい虫とかをモチーフにするの? なんか、可愛い魔物とか作れなかったの?」

「馬鹿もの。可愛い動物では可哀相だろうが。お前は子犬とか子猫とかと戦いたいのか」

「え、絶対ムリ」

「であろう。やっていいことと悪いことがあるわ」


 なんだか、平和的な話題だ。

 口は挟まずに、しばしそのまま、耳を傾ける。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ