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始まりの魔王と終わりの勇者  ~猫になった最凶魔王と天然最強勇者のハチャメチャ144日間大陸救済旅~  作者: 式見 汀花
第二章 東の都 ~いろいろとデカい都~

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第66話 焼き鳥屋にて #2

 僕は頭を振って考えを追い出して、メニューを兵士長の娘に差し出した。


「ともかく、深く考えずにいこうよ。魔王と勇者なんて分け方にも、意味は無いんだから。なに食べる? それか、お父さんと来たことあるから、なにがおいしいか知ってる?」

「あ、うん。たまに連れてきてもらうこと、あるよ。潰れたお父さんを毎回引っ張って帰ることになるから、勘弁してほしいんだけどね」

「あはは。そうだったんだ」

「うん。おいしいのはね……私はいっつも、皮とか頼むかな。ほら、なんか……コラーゲンだっけ、お肌にいいんだって」

「大将! こっちに皮ね!」


 僕たちの会話を受けて、すかさず聖女が手を挙げて言う。


 コラーゲンがどうとかいうのは、母が凝っていたことがあって僕も知っていた。個人的に興味が湧いて本で調べたら、経口摂取ではあんまり意味がない、的なことが書いてあったように思う。

 まあ、いわしの頭も信心、と言うし。僕は学者ではないので、その真偽までは分からないし――余計なことは言わないでおくことにした。


 すぐにやってきた鶏皮の串をつまみながら、僕はさらに聞く。


「他には、どんなのを食べてるの?」

「えーっと……。この、アスパラベーコンとか。トマトチーズとか、おいしいよ」

「変わり種? 確かにおいしそうだね。じゃあ、それ頼もうか」


 と、それを聞いていた魔王がふんと鼻を鳴らす。


「勇者がずいぶんと軟弱なものを頼むな。肉を食え、肉を」

「肉頼むとそっちが全部食べちゃうじゃないですか」


 強欲肉食サイドのふたりを見て言うと、兵士長の娘が訊いてくる。


「お兄ちゃんは、なにかないの? 食べたいもの」

「え? ああ、うーん。あ、野菜だけの串もあるんだね。しいたけとかいいな。ネギとか、長いももおいしそうだな」

「なんか……お兄ちゃんの舌って、老けてない……?」

「えっ」


 そうだろうか。しいたけとか、おいしいのに――僕は訝しんだ。


 そして、同時に対魔王食卓防衛法を学んだ気になった。アスパラベーコンやトマトチーズみたいな注文なら、この人らは興味を失う。結果として、こちらは食にありつける。


 そう思ったのだが――

 そのあと、運ばれてきたアスパラベーコンとトマトチーズは、あっさりと魔王ふたりの胃袋に消えた。


「うむ。トマトとチーズは合う。なかなか良い趣味だぞ小娘」

「アスパラが柔らかくておいしいねぇ」


 ちくしょう、このふたりはなんでも食べてしまうのか。


 それでも負けじと頼んだうずらの卵や、しいたけなどには、ありつくことができた。しいたけは特に、僕が食べるまで、誰も興味を示さなかった。

 僕があんまりおいしそうに食べるので(魔王談)、最終的にはみんなが注文して食べていたが。


 そんなこんなで、時刻は日をまたぎ、午前二時。


 計ったように、魔王ふたりは完全に酔いつぶれて、いびきをかいてテーブルに突っ伏している。

 店内はもう、お客さんの姿はまばらだ。


 僕たちは聖女の身体を抱えて、大将にお礼を言い、宿へと引き上げることにした。


 だらりとした聖女の身体を兵士長の娘と運んでいく。なんだか、死体を運んでいるみたいな気分だった。


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