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始まりの魔王と終わりの勇者 ~ふびんな天然最強勇者の僕が、猫になった最凶ワンオペ魔王さんと、大陸を救う旅に出た――食べて戦って呪われて恋もする、ハチャメチャな144日間の記録~  作者: 式見 汀花
第二章 東の都 ~いろいろとデカい都~

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第64話 騒動のあと #2

 そして日没と同時に、確認を終える。

 兵士長は、僕に言ってきた。


「勇者どの、ありがとうございました。急なことでしたが、なんとか、犠牲を出さずに済みました」

「いえ。僕よりも、魔王さんや、お姉さんに言ってください。僕は矢を一本撃っただけですから」

「うむ。兵士長よ。謝礼は旨い店のひとつでも紹介してくれればよいぞ」


 僕の頭の上から、魔王はそんなことを言う。

 それに、兵士長ははっはと笑った。


「お安いご用です。大通りに、旨い焼き鳥屋があります。いかがでしょうか」

「ほう、ほう……。焼き鳥か……。酒もあるな?」

「ええ。各地の銘酒を取り寄せていて、よりどりみどりです。代金は私につけておくよう、店主に言っておいてください。どうぞ、お好きに堪能してくだされば」

「ふむ、気に入った。兵士長、褒めて遣わす」


 声にはもう、隠しきれない興奮が混じっている。

 僕は嘆息しつつ、兵士長に言った。


「兵士長さん、教会の神聖宝玉が壊されてしまいました。西の都に連絡をして、取り寄せないと。破邪結界を張ることができません」

「そのようですな……。すぐに早馬で使いを送りましょう。勇者どのは、早速、明日にはその、北の山の遺跡へ向かわれるのですな?」

「はい。そのつもりです」

「どうか、お気をつけて。なにか入り用なら、なんなりとお申し付けください」

「あ。じゃあ、新しい弓矢を、用意しておいてもらえますか。今回は剣より、こっちを使うこともありそうなので」

「かしこまりました。他にご用はありますかな」


 少し考えて、僕は思い出した。


「……そうだ。あの。首長さんに伺ったんですが。何週間か前に、潮騒の孤島付近で行方不明になって、見つかったけれど口が利けなくなったという、漁師さんがいらっしゃるそうなんです。その人を見つけて、お話を聞けないかな、と」

「その話は、私も聞いています。この都のさらに東、漁村の漁師ですよ。分かりました、私どもで、そっちは調べてみましょう。これもまた、なにかに関係があるのですな?」

「ええ。白い龍が、潮騒に眠る守り神、というなら……関係があるんじゃないかって気がするんです。なんか……複雑そうな事情とかがありそうな予感がします」

「余計なことを言うなというのに……」


 僕が曖昧に言うのを聞いて、魔王がうんざりとしていた。

 その漁師さんのことは、今、たまたま思い出しただけだ。余計と言われても困る。

 巨龍の事件に無関係だとは思えないのも、事実だし。


 今はまだ、いろんなことがバラバラのまま、分からないことだらけである。

 ただ、明日、山に行けば、ある程度のことは明らかになりそうな気もする。巨龍を無事呼び出せて、話を聞くことができれば。

 それに賭けるしかない。


 と、横から、兵士長の娘が声をあげた。


「お父さん。あの……私、勇者と一緒に山に行きたい」


 その提案に、僕は少々驚いた。

 兵士長も、驚いたようだった。しばらく、僕と娘とを、見比べている。

 それから、うんと頷いた。


「うむ……。いいだろう。近くで、勇者どのの働きを勉強してきなさい。よろしいでしょうか、勇者どの。不肖の娘ではありますが、ご迷惑でなければ」

「ええ。大丈夫です。君は、大丈夫? またあの龍が出てくるかもしれないし、真っ正面から戦いになることもあるかもしれない」

「……それは、お兄ちゃんだって一緒でしょ。弱体化してるってのに、お兄ちゃんは、この都のみんなのために、行くんでしょ?」


 それに、僕は頷いた。


「うん。もちろん」

「……じゃあ、私も行く。私だって、少しは強くなったんだから。足手まといには、絶対にならないから」


 ちょっと、思い詰めたような言葉に不安になるが。

 だからこそ、一緒に行動したほうがいいような気がした。僕は頷いた。

 兵士長は困ったように笑うと、僕に言った。


「では、勇者どの。よろしくお願いいたします。我々は西の都への早馬の手配と、瓦礫の片付けがありますので、どうか、お先にごゆっくりお休みください」

「はい。お疲れさまです。兵士長さんも、ご自愛ください」


 挨拶を交わして、そして頭の上の魔王に急かされて――

 僕たち四人は、兵士長行きつけの焼き鳥屋へと飛び込んだ。


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