表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
始まりの魔王と終わりの勇者 ~ふびんな天然最強勇者の僕が、猫になった最凶ワンオペ魔王さんと、大陸を救う旅に出た――食べて戦って呪われて恋もする、ハチャメチャな144日間の記録~  作者: 式見 汀花
第二章 東の都 ~いろいろとデカい都~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/66

第62話 巨龍、襲来 #2

「くっそ――最初から、それがこいつの目的ってわけかい!」


 聖女が毒づく。魔王がすぐに付け足す。


「腐れ聖女よ、とにかく、こいつを追い出すぞ。後の対応については、後で考えろ。今は、追い払うことだけを考えろ!」

「オーケイ!」


 ふたりの魔王は、息を合わせて、魔法の力を集中させる。


 聖女は、再び巨龍を指さし示す。すると、指先に真っ黒な渦が発生し、球状になった。さらにあっという間に膨れ上がり、二メートルほどの大きさになる。

 それはさっきの巨龍の吐いた火球に勝る速度で飛んでいき、翼に命中した。

 巨龍が怯む。が、すぐにこちらへ向き直った。


 それを見て、聖女は舌打ちする。


「ちっ、効かねえなぁ。おい、私が防御やるから、攻撃はアンタやって」

「仕方ないな」


 ふたりが言っている間にも、巨龍は先ほどと同じ火炎の弾を吐こうと口を開ける。


 再び飛来したそれを、聖女がかき消す。

 防御と同時に、魔王が力を集中させた。


 魔王が尻尾を振ると、さっき聖女の作った黒球よりも一回りほど大きい黒球が、一度に五つ、空中に現れる。

 魔王の尻尾の指揮に従って、黒球は一斉に巨龍へと殺到し、爆発を起こす。


 そこへ、声が掛かった。


「勇者どの!」


 兵士長だ。何名かの兵士を連れて、彼はもう駆けつけてきた。


 僕はそれを目で確認してから、巨龍のほうも見る。

 魔王の魔法は、相当な威力だったが。巨龍は魔王の魔法による爆発の煙が晴れても、全くの無傷でたたずんでいる。


「あれは、本当に守り神なのか……? 邪悪の塊、魔物そのものではないか。そのせいか、我が力も効きが悪いな」

「おかしいねぇ。そもそも、あの龍。最初に来たヤツと違うよ」

「なんだと? どういうことだ?」

「最初のは、もっと白いヤツだったんだよ。黒い龍なんかじゃない」

「なに……?」


 不審そうに、魔王ふたりが言い合う。

 僕はふたりの言葉を聞きつつ、兵士長に叫んでいた。


「兵士長さん! 弓矢を貸してください!」

「かしこまりました!」


 彼は、すぐに弓矢を手に、僕に走り寄ってきた。


 僕は弓に矢をつがえて、意識を集中させた。剣気を呼び起こす。

 どういうことが起きているのか分からないが、じっとしてはいられない。

 そして、魔王の力の効きが悪いのなら、僕の剣気を試さない手はないだろう。


「魔王さん。あいつに攻撃させないでください」

「承知だ。どこでもいい、全力のヤツをぶち込んでやれ」


 言われなくとも、と僕は胸中で応えた。

 多少は言うことを聞いてくれるようになった剣気を、矢に宿す。


 ――巨龍までの距離百メートル少々。角度をつければこの弓で十分届く。風はない。


 軌道の計算を終えて、僕は構えた。

 同時に、巨龍のほうも火炎球を吐こうと口を開けた。

 まずい。が、チャンスでもある。魔王も、僕の頭に乗ったまま叫んだ。


「口を撃て、小僧! 火球は腐れ聖女が抑える!」

「人使い荒いねぇ!」


 だが、信頼できる。僕は目を細めて、さらに矢へ、力を流し込む。


 身体から剣気を離すのは、高等技術に入る。剣気を操り、光波として飛ばすまでは、今の僕では難しいだろう。でも、矢にまとわせて放つのであれば、可能だ。


 僕は短い息吹と共に、矢を放った。


 同時に、巨龍の口に集中していた火炎が、ふっと消失する。聖女が、干渉したのだ。

 光り輝くその矢は、あやまたず巨龍の口に吸い込まれる。


 一瞬、巨龍は硬直した。

 そして、さきほどの咆哮とは全く違う、悲鳴のような叫びを上げて、頭を振り回す。

 それだけでも、尋常でない圧力だった。やはりこいつと、市内で戦うわけにはいかない。迂闊うかつに攻撃もできない。


 と――


 空が、いきなり暗くなった。

 なんだ、と僕たちは空を見上げた。


「なんだと……?」


 魔王が呻く。僕も呆気にとられていた。


 なぜ、空が暗くなったか。

 傾きかけた陽が、飛来したもう一匹の巨龍によって、遮られたせいだった。


「龍が、もう一匹!?」


 兵士長の娘が叫ぶ。

 新たに飛来した巨龍は、最初に現れた巨龍とは、明確に別の個体だった。鱗が白く、光り輝いているように見える。


「あれ――あっちが、最初に都を襲った龍です!」


 兵士長が叫ぶ。


 その白い巨龍は、黒い巨龍が見せたように、鋭く急降下をしてきた。

 そのまま、体当たりを食らわせる。


 次に白い巨龍は、黒い巨龍を空中から後肢の爪で掴もうとした。

 黒い巨龍は、翼を振り回し、それを振りほどく。さらに、上空へと飛び立った。

 二匹の龍は、絡み合うように空中でやり合い、どんどん高度を上げていき――


 やがて、完全に見えなくなってしまった。

 取り残されたような形になって、僕たちは全員、なにも言えないまま、空をしばらく見上げていたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ