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始まりの魔王と終わりの勇者 ~ふびんな天然最強勇者の僕が、猫になった最凶ワンオペ魔王さんと、大陸を救う旅に出た――食べて戦って呪われて恋もする、ハチャメチャな144日間の記録~  作者: 式見 汀花
第二章 東の都 ~いろいろとデカい都~

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第53話 調べもの

 それから僕と魔王は聖女の案内で、古城へと歩いて向かった。

 道中、魔王は目敏く店をチェックしているようだった。

 宿から小一時間ほど歩いて、丘の上にある古城に辿り着く。


 古城は、博物館、図書館として一般に公開されていて、誰でも入ることができる。

 もちろん、上階は立入禁止になっているが、一階と二階は、好きに見て回れる。


 観光客の姿はまばらだった。これは、巨龍の騒動が後を引いているのだろう。考えてみれば、昨日の甘味屋も、飲み屋も結構空いていたし、お客さんはこの都の人ばかりだったと思う。

 都の人たちの生活を思うと、早いところ問題を解決しないといけない。


「さーて、少年。ちゃっちゃと調べちゃってよ」

「うむ。めぼしい本を探して持ってこい」


 このチーム魔王にそんな気がまるで無さそうなのが、最大の問題点ではあった。

 聖女は椅子にふんぞりかえり、魔王に至っては馬車で話していたような、子供向けの絵本を開いている。


 僕は絵本を眺めた。


 白い龍の背に乗った勇者らしき人が、邪悪っぽい黒い龍の吐く火炎を斬り裂き、大立ち回りを演じている迫力のあるページだ。

 空想の世界が、羨ましい。現実の勇者というのはこんなに派手で華々しいものではないどころか、一匹の黒猫の言いなりなのだ。


 しかし、僕まで腐ってもしょうがない。昨夜に、この街では今までの人生で味わったことのない理不尽に振り回されることになると認め、腹はくくっていた。

 どんなめちゃくちゃを言われても、僕は戦い抜いてやる――そういう所存だ。

 決意を胸に、まず僕は該当書籍がありそうな書架へ向かった。


 とりあえず、この地方や大陸の伝承についての本を適当に見繕って、魔王たちのところへと持っていく。


 その後は、ひたすら目当ての情報を求めて読み込んでいく作業を進めていく。もちろん、僕ひとりでである。その間魔王たちは楽しそうに絵本を読みつつ、その描写に突っ込みを入れて遊んでいた。


 精査を始めて二時間ほどして、僕はようやく、目当ての情報を見つけた。


「あのー。これじゃないですかね?」

「おー、どれどれ?」


 絵本に飽きた後は、煙草が吸えないためにずっと貧乏ゆすりが止まらなかった聖女が、喜色満面で僕の隣にやってくる。必要以上に身体をくっつけてくる。

 その間に割り込むように、魔王もやってきた。

 僕はうんざりしながら、ページを指さした。


「ほら、これです。『潮騒の中に眠る巨龍あり。守護龍は邪悪の目覚めと共に覚醒し、勇者の笛に従い、それを打ち払うであろう』」


 僕が読み上げると、ふたりはふんふんと頷いた。


「へー。初めて聞いたわ」

「どうやら、最初に疑った通り、潮騒の孤島とやらに鍵があるようだな。そして、やはり龍は守護神であり、勇者にくみするもののようだ」

「そうですね。で、勇者の笛に従いっていうのは……」

「少年が笛をぴーひゃら吹くと、言うこと聞いてくれるってことじゃないかい?」

「その辺の楽器屋さんで、縦笛でも買えばいいんでしょうか?」

「うーむ。それでは、守護神のくせに安っぽいな。専用の笛があるのではないか。その龍の耳にだけ届く、特殊な音色を出す笛とかな」

「うわあ、いかにもそれっぽい感じですね。じゃあ、次はその笛について書いてある本がないか、探しましょうか」


 話は、一段階進んだ。ちょっとやる気が出てきたのか、聖女も魔王も立ち上がる。


「よーし、笛の本ね。それにしても、関係ありそうな話なら同じ本にまとめといてほしいんだけどねぇ」

「全くだ。その本をまとめた学者は手際が悪い」


 悪態をつくのも忘れていない。それに苦笑して、僕はとりあえず、伝説について書かれている本のページをめくった。


「あ。同じ本にありますよ。笛の話」


 歩き出そうとしていた聖女と魔王はずっこけた。


「少年。早く言いなよぉ」

「全く、有能な学者もいたものだな」


 言いながら戻ってくるふたりに、また本を示す。


「ほらほら。具体的に、地図までついてます」

「ホントだねぇ……。この都の北にある山に、遺跡があって。で、その中の宝箱に大事に封印されてる、って書いてあるねぇ」

「いつの時代にも、手の込んだ馬鹿がいるな……。誰だ、そんなところにしまったヤツは。ここの博物館にでも所蔵しておけ」


 こればかりは、僕も魔王に同意だった。


 が、ひとまず、方策は示された。

 北の山に向かい、遺跡を調べる。そして、勇者が吹けば守護神たる龍とコンタクトできるという笛を入手する。


 それらしい話ではある。笛を吹いて、もし、龍が飛んできたら――

 その時は、改めて事情を訊いてみればいいのだろうか?

 そんな簡単に丸く収まるのか、どうか。


 本を眺めながら、なんだかイヤな予感だけが膨れ上がっていくのを、僕は感じていた。


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