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始まりの魔王と終わりの勇者 ~ふびんな天然最強勇者の僕が、猫になった最凶ワンオペ魔王さんと、大陸を救う旅に出た――食べて戦って呪われて恋もする、ハチャメチャな144日間の記録~  作者: 式見 汀花
第二章 東の都 ~いろいろとデカい都~

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第49話 聖女は語る #1

 巨大パフェを仲良く食べ終えたふたりは、それでもまだ足りなかったのか、僕のアップルパイも食べてしまった。

 この人らはどんな胃袋をしているんだろう。問題の巨龍とは、大食い対決かなにかで平和的解決を図れないだろうか、などと考えてしまう。


 それはまあ、冗談として。

 その後はそれぞれ飲み物を注文し――魔王はミルクシェイク、聖女はコーヒー、僕はホットのレモンティー――さっき入りかけた説明を、聖女が再開させる。


「で、なんだっけ? 少年」

「ああ、ええと。聖女さんは――」


 僕が言いかけると、聖女はちっちっち、と指を振ってきた。


「昔みたいにさぁ、お姉さんって呼んでよ、少年。その猫の言う通り、私は聖女でもなんでもないんだし。せっかくの再会だ、もっと距離を近づけようじゃないの。そんな他人行儀になっちゃって、私は悲しいぜ?」

「じゃ、じゃあ……。お姉さん」

「んんー、いいねぇ、なんか……背徳的な響き」


 身体を震わせている。意味は分からない。

 魔王はうえー、という顔でストローからシェイクを飲んでいる。


「お姉さんは、さっき、巨龍を殺してはいけない、って言いましたけど。それは、どうしてなんですか?」

「ああ、それね……。まあ、理屈は簡単さ。あの龍はたぶん、守護神だからさ」


 新しい煙草に火をつけつつ、聖女は言う。


「……守護神?」

「そう。守り神。それも……この都の、なんてケチなもんじゃなくてねぇ。古くより存在する、この大陸の守り神みたいなのさ。考えてもみなよ。どの街にも、魔物避けの結界が張ってあるこのご時世だけど、あの龍はそれをものともせずに侵入してきたんだぜ? ってことは、邪悪な魔物とは違うモノ、ってことだねぇ」

「そんな――」


 僕は、レモンティーのカップを持ったまま、固まってしまった。


 守り神、なんてものが現実にいるなんて、初めて知ったからだ。

 この大陸には、いわゆる宗教というものは存在していない。大陸の外には、そういうものがある、とは聞いたことがあるが。


 それでも、神という概念は、広く共有されている。


 それは、この世界を作ったすごい人、という程度の認識であったり、長く使ってきたものには心があるとか、そういう類のものだ。だから、守り神といわれて、どういうものかなんとなくピンとくるような気持ちは、みんな持ってはいると思う――遙か空の上から、僕たちが健やかに過ごせるよう見守ってくれているなにか、くらいの考えだが。


 しかし、それらを祀るためのお社だとか寺院だとか、教えを広めるための教会だとかが具体的にあるわけではない。


 僕たちの大陸の各地にも、教会や寺院は存在する。

 でもそれは、なにか特定のありがたい存在を崇拝するためではなくて。収穫の時期などに自然に対して感謝の祈りを捧げたり、お祭りをしたり、結界を張ったり、病気の人やケガをした人を癒したりと、公共の行事や福祉、医療のために開かれている場所として、存在しているのだ。


 だから、この聖女のような人が修道士をお咎めなしにやったりできるのだろう。この大陸外海の教会は、厳しい戒律を守らないといけない場所でもあるらしいので、もしそういうところに勤めたら、この人なら一日で破門のはずだ。


 旨そうに煙草を吸う聖女に、僕は続けた。


「守り神さまが出てきたとして。なんで……この都を襲ったりしたんです?」

「さあねぇ。そんなのは一介の敬虔けいけんな修道女には分かんないねぇ」

「人間なぞもはや守る価値なしと判断したんだろう。で、手ずから滅ぼす気になったんじゃないのか」


 しれっと、魔王はそんなことを言ってくる。


「なに言ってるんですか。ねえ、お姉さん」

「ふふ、まぁ、私は少年の味方をしてやりたいけど、こればっかりは魔王側の意見だわ、私も。むしろ私は元とはいえ、純粋な魔王だったしねぇ」


 不敵に笑いながら、聖女は言う。

 なんてことだ。このテーブルには、すごい力を持った人がふたり、人間滅ぶべしなどという考えを持って座っている。

 世も末だぞ、と思っていると、聖女が笑って言った。


「でもま、猫の言うことは違うでしょ。やる気なら、一発でこんな都滅ぼせるくらいのパワーがあったし。私の虚仮威こけおどしくらいで帰ってくれたのが、奇跡みたいなもんよ。それに、十分に時間も空いているのに、再襲撃に来ないしねぇ」


 言われてみれば、その通りだ。

 僕は聖女に訊いた。


「お姉さんは、その守り神さまに勝てますか?」

「ひとりで? うーん、勝つの定義にもよるけどねぇ。単純にぶっ殺すってのは、ちょっと無理だしやりたくないねぇ。良くて相討ち。元々、私はそんなに強い魔王じゃないし。力なら、少年やそこの猫のほうが、私より上さ。君らは、この千年だけでなく、歴史上稀に見る実力者だからねぇ」


 灰皿に煙草を置き、コーヒーをすすってから、聖女は僕を見てくる。


「ともかく、初手でいきなりぶっ殺し、ってのはやめといたほうがいい。アレが出てくるからには、なにか理由があるのさ」

「理由?」


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