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始まりの魔王と終わりの勇者 ~ふびんな天然最強勇者の僕が、猫になった最凶ワンオペ魔王さんと、大陸を救う旅に出た――食べて戦って呪われて恋もする、ハチャメチャな144日間の記録~  作者: 式見 汀花
第二章 東の都 ~いろいろとデカい都~

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第48話 聖女のお姉さん #2

「……ええっ!?」


 僕は驚いて、聖女を見る。

 聖女は否定せず、ケラケラと笑っていた。


「そんなことをやってたのは、大昔……もっともっとずっと前の話よ。で、いろいろあって。千年前には、この子に魔王としてのイロハを教えてやった――そんなこともあったねぇ。まぁ、そのときはまさかまさか、本当に千年も魔王を続けるなんて思わなかった――ってことはないけど。おかげでこっちも千年シスターごっこだよ」


 勇者と魔王の時代というのは、今の魔王が君臨する、千年より前からお約束のようにして大陸に存在していた。


 それ自体は、魔水晶鉱山で魔王に教えてもらった。だが――

 それどころか、千年以上前の魔王が、今も生きて大陸に存在していた。それも、子供の頃からの知り合いの聖女が、まさか『それ』だったなんて。


 僕は唖然としつつ、言った。


「すごい……。生きる文化遺産ですね」

「少年、そのたとえはどうなんだ」


 複雑な顔で聖女は煙草をくゆらせている。

 僕は、魔王に視線を移した。


「じゃあ、聖女さんは、盟約とか、全部知ってるわけですか?」

「うむ。知っている。な?」

「まあねぇ。現在の少年たちの事情も、大体想像ついてるよ。いろいろ、情報は入ってくるからねぇ。でも、ちょっと詰めておかないといけないところもあるかな」


 言って、聖女は顔を近づけ、僕の瞳をまじまじと覗き込んできた。

 それから、言う。


「少年、めっちゃ弱くなってるよねぇ。なんで?」

「え? それはですね……言っていいんですよね?」

「構わん。どうせそいつなら、すぐに当たりをつけてしまうだろうが」


 という魔王の言葉をもらえたので、僕は聖女に、旅の経緯を説明した。

 全部聞いて、聖女はふーん、と特に驚くでもなく頷いていた。


「なるほどねぇ。想像通りだ。でも、力が無くなった状態でこの街に来てくれたのは、かえって良かったかもねぇ。いや、ダメか」

「どういうことです?」

「それはねぇ。巨龍を倒しに来たんだろうけど。あの巨龍は、殺しちゃいけないのさ」

「え……?」

「それが、複雑な事情があってねぇ……説明すると」


 と、言いかけたところで、店員がキングパフェと、特大バナナパフェを持ってきた。


 魔王と、聖女の目の色が変わる。

 長いスプーンを取ると、聖女は煙草をもみ消した。顔も、すっかりパフェに向いた。


「少年、話は後だ。とりあえずこいつを食わせてくれ」

「はあ」


 答えると、魔王が尻尾で持ったスプーンを聖女のパフェに伸ばしている。


「おい、それ、キングパフェだろ。一口食わせろ」

「いいよ。あんたのも一口食わせなさい」

「うむ。勝手に食え」

「人のものって旨そうに見えるんだよねぇ」

「私は自分のものが一番だがな」


 と、お互いにまるでパンチの打ち合いでもするように、自分のパフェ、相手のパフェ、自分のパフェ、相手のパフェ、とすごい早さで魔王と聖女は食べ始めた。

 なぜか、周囲の席から拍手や歓声、どよめきが漏れる。


 僕は、なにかを思い出しかけていた。

 そうだ。小さい頃――南の都の新年のお祭りに、父と母に連れていってもらったときに見た、餅つきというやつだ。


 巨大パフェが、みるみるうちになくなっていく。

 僕は、それをぼんやり眺めながら、魔王という職業は、甘いものを大食いできないとなれないんだろうか、と考え始めていた。


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