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始まりの魔王と終わりの勇者 ~ふびんな天然最強勇者の僕が、猫になった最凶ワンオペ魔王さんと、大陸を救う旅に出た――食べて戦って呪われて恋もする、ハチャメチャな144日間の記録~  作者: 式見 汀花
第二章 東の都 ~いろいろとデカい都~

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第41話 東の都への馬車の中 #1

 僕と魔王は、東の都へと向かう馬車の中にいた。


 あの号外が出た日から、さらに二週間弱が経過している。(西の都を出発してからは、十日――いや、九日というところか)

 西の地方は、完全に破邪結界を施すことができたので、結界作成が終わり次第すぐ、僕たちは東の都へ出発したのだ。


 おかげで、まだ四月下旬だ――なんとか四月中に東の都に到着できそうだった。


 西の都から東の都へは、急ぐためにいくつかの馬車を乗り継いでの旅になった。

 途中、中央部を通るので、経過報告に王城へ寄り、僕の装備の修理状況などを訊ねたりした。まだ直ってはいなかった。

 ついでに親のところに顔を出して、父に魔水晶鉱山の火炎蜥蜴を討伐したということを自慢しておいた。

 父は苦笑いしつつも、嬉しそうであった。


 そんなこんなで、王都も出発して、僕たちは予定通り、また馬車を乗り継ぎ――

 東の都はもう目の前、というところまで来ていたのだった。


 僕は馬車の中で、地図を広げて眺めている。

 魔王は僕の肩に掴まって、そこから顔を出している。ちょっとだけ重いが、最近はこんなふうに肩に乗ったり、ぶら下がってくることが多い。


「なにもなければ――予定としては、東や南よりも、北の方がいいんじゃないか、ってことにはなると思うんですけどね」


 僕は、魔王に言った。魔王も頷く。


「まだ早いとはいえ、これから雪解けの季節になっていくからな。だが、北の守りはそこまで考えずとも、大丈夫だろうよ」

「そうですか?」

「うむ。この大陸には、中央の王都だけでなく、東西南北に四つの大きな都市がある。西は港湾都市。東は城塞都市。南は商業都市、とそれぞれ特色があるな。そして北は……魔王城最接近防衛圏、といったところか」

「まおうじょうさいせっきんぼうえいけん」


 舌を噛みそうな呼び名だ。復唱した僕に、魔王は答えた。


「うむ。魔王城に面する北側には三重の防壁を備えているという、要塞都市だな。軍人にも手練れが多い。元勇者の血を引くものもいるだろう。破邪結界は、当代の勇者にしか張れない。だから今回の主役は、お前なのだが――北の戦士たちならば、ある程度は防衛できるはずだ」

「それに任せちゃって、大丈夫ですかね。確かに、北の戦士長さん、めっちゃ強い人ですけど。魔法使いも、すごい魔法使いさんがいますけど」

「大丈夫だろう。魔王が私であったこの千年間は、最接近防衛圏とは名ばかりだったが。これからは、本当に最初の壁として奮戦してもらう必要が出てくるかもしれぬ。いきなりお前が顔を出して甘やかすよりは、少しは泳がしておくほうが吉よ」

「そういうもんですかね」

「そういうもんだ。それに、魔王城は北にある。だからこそ北の都は、よほどのことがない限りは最後に回ることになる。そうでないと、効率が悪いだろう? 空でも飛べれば別だがな。で、これから向かう、東の都だが――」


 魔王は尻尾で、ちょいちょいと都の場所を指す。


「規模そのものは、王都を上回るのだな。かなり大きな都だ。そして、名物の古城があり、市壁……というよりは頑丈な城壁にいだかれている、城塞都市だという。今まで、魔物一匹通したことがないそうだな」

「ええ。すごいですよ。もし王都や王城になにかあった際は、こっちに遷都せんとできるようになっているんだとか」

「うむ、聞いたことはある。有事の際に、王族たちの緊急避難先になるとな。そして、王室の軍隊とは別に、都市で軍隊を持っている。健康な市民には、兵役も課される」

「そうですね。そういうところです」


 僕は頷いた。

 軍隊を持っている都市は、東の都と、北の都のふたつだ。中央の王都は王立軍が守っていて、王立軍は大陸各地に派遣されることがある。

 都市の軍隊は、その都市を魔物から守るためだけに使用されなければならない、と王国法で定められている。つまり、専守防衛の軍だ。


 西の都、南の都に、軍隊はない。


 西の都には、優秀な神官たちが詰めていて、港湾都市という風土から、力持ちな人が多い。漁業や運輸に携わる人たちの組合があって、その組合の人たちが、いざという時は武器を取るようになっている。王都の軍も、すぐに駆けつけてこられる場所である。


 南の都も、商人たちの組合が存在していて、都が軍隊を持っていなくても、その組合、あるいは商人たち個々人で私設の軍隊を持っていることがある。

 私設軍も、魔物などから個人の財産や命を守るためにしか使用してはいけない、という厳しい法がある。


 人と人が争うのは、絶対に禁止されていて、それはずっと守られている――少なくとも、魔王が存在するこの千年間、この大陸では人と人との戦争なんて起きてはいない。


「私はふわっとしか知らぬが。強いんだろう? その、東の軍隊は」

「ええ。僕が小さかった頃から、東の都の兵士長さんとは、よく手合わせをしてもらって。強かったなぁ、あの人。すごく真面目な武人さんで、他の兵士さんたちもみんな真面目で強い人ばっかりで。あの人たちだったら、下手な魔物なんかに絶対遅れは取らないだろうな、って思います。あと、兵士長の娘さんも強いですよ」

「ふむ。だが、下手な魔物ではなく、上手な魔物が相手なら、どうなるかな」

「ええ。巨大な龍かぁ……」


 僕は、もごもごと呟いた。

 西の都に僕たちがいたときに、飛び込んできた号外――


 東の都が、巨大な龍に襲撃された、というすさまじいニュース。


 まずは魔王軍の襲来であると報じられ、それは現在をもって修正されていない。

 それは魔王軍の襲来であったと確証が取れたからではなく、その襲撃以来、巨大な龍とやらが姿を見せないからであった。


 僕たちは、西の都で結界を張る仕事をしている最中、どんなニュースにも目を通した。

 だが、大きな続報はないまま、僕たちは東の都に向かうことになった。

 王都でも、王城でも話を聞いたが、巨大な龍が突然街を襲ってきた、ということしか分からなかった。詳しく分かったのは、その被害状況くらいだ。


 まず、家畜が襲われた。その後、市壁が体当たりで壊され、都に侵入してきた龍は、炎を吐き、大暴れをした。

 住民、兵士を合わせて百人ほどが重軽傷を負ったが、幸い、死人は出なかったらしい。

 軍が大量の矢を射掛けると、龍は空に舞い上がり、どこかに飛び去っていったという。

 そして今日まで、その姿はようとして知れないまま、というわけだった。


「あの。勝てるんですかね、僕」

「無理じゃないか? 被害状況を鑑みると。あの火炎蜥蜴とはわけが違う。今のお前は、その辺の兵士より強いくらいには戻っているだろうが、まだまだだ」


 が、魔王は僕の瞳を近くから覗き込むと、ふっと鼻息を吹きかけてきた。


「しかし、いい稼ぎ相手だ。しかとぶちのめして、力の糧とせよ。それほどの強敵であれば、かつての勇者としての力が、いくらかは戻るはずだ。『龍殺し』を名乗れるようになるチャンスでもあるのだぞ。張り切っていけ」

「ううん。できるだけ、頑張ってみますけど……」


 なぜかテンションの高い魔王だ。僕はそれを見て、どういうわけか気分が下がる。


「どうした小僧。龍が相手なのだぞ。相手にとって不足はない。古来より、勇者というのは『龍を倒す冒険』に憧れたものだ。ドラゴン相手の冒険クエストだぞ。気合いを入れてかからなくてどうする」

「なんか……魔王さんって、わりとこういう、それっぽい感じが好きですよね」

「そういうお前は普段は無邪気にしておるくせに。なんだ、その態度は。これだから、現代っ子というやつは……」


 冒険の妙味が分かっておらぬ、と魔王は首を振っている。


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