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始まりの魔王と終わりの勇者 ~ふびんな天然最強勇者の僕が、猫になった最凶ワンオペ魔王さんと、大陸を救う旅に出た――食べて戦って呪われて恋もする、ハチャメチャな144日間の記録~  作者: 式見 汀花
第一章 西の都 ~海の見える都~

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第35話 魔水晶鉱山の死闘 #2

 ごう、と、先ほどよりも強い火炎が、僕に向かって吹き付けられた。


 熱い――ひたすらに、熱い。


 僕は耐えた。気道、肺、内臓を焼かれないように、息を止め、身体を丸める。


 一秒、二秒、とカウントする。永劫とも思える時間だった。

 炎が止む。それを確認すると同時に、僕は走った。


 剣に力を込める。わずかに白く輝いている剣で、僕はまだ立ち上がって腹を見せていた蜥蜴を、一文字に斬りつけた。


 手応え、あった。


 じゃああ、と悲鳴のようなものをあげて、火炎蜥蜴が引き下がる。

 十メートルほどの間合いを空けて、僕はやっと、息を吸い込んだ。


 剣気は、使えた。


 以前の僕からすれば、それはほんの、カップ一杯程度のものだったろうが。それでも、なんとか火炎を生き延び、危機を好機に変えることができた。


 ――あれだけ大袈裟に自分に呼びかけておいて、ちょっと情けないけど。

 それでも、成果は成果だ。ちらりと魔王を見ると、頷いてくれた。


「油断するな、小僧。だが、ほんのわずかの剣気であろうと、お前の剣気であればあの程度の魔物なら、あと一太刀、急所に浴びせれば終わりだ! やれ!」


 ――やれ、でやれたら、簡単なんですけど……。

 僕はひとりごちて、剣を構えた。蜥蜴を見据える。


 火炎蜥蜴は、恨みがましい目で、こちらを見ているようだった。ガラス玉のような感情のない瞳ではあるが、精一杯の憎しみが篭もっている。


 ずっ……と、蜥蜴は四つん這いのまま、身体を低くした。力を蓄えるように、身体をたわませている。


 まさか――と、僕が思ったのと同時だった。


 火炎蜥蜴は、思い切り跳んだ。矢のように、僕を目がけて。


 反応が遅れた。剣気のおかげで死なずには済んだものの、火炎のダメージは結構深かった。そのせいだった。

 横に跳ぼうとしていたのだが、ギリギリで間に合わず、左腕に噛みつかれた。


「ぐっ……!」

「小僧!」


 左腕は肩口から、ばっくりと蜥蜴に飲み込まれていた。細かい歯が、鋸の刃のように食い込んでいるのが分かる。鋸の刃とはいっても、そのひとつひとつが、短剣ほどもあるのが恐ろしい。


 なんとか、腕の感覚はある。防具のおかげで、食いちぎられずには済んだ。が、捕獲されてしまった。


 ジャンプしての噛みつきとは。どこまでも芸達者な蜥蜴だ。


 いや、噛みつきという攻撃を考慮していなかった僕のミスだ。口は炎を吐くだけだという思い込みがあった。攻撃性の高い魔物なのだから、五体すべて武器にして当然なのに。やはり、勘が鈍っている。


 きっと、あの爆発のあと僕に起きた異変は、戦いの経験そのものを僕から奪ったのだろう。魔王が最初に『初期化』と言ったが、その通りだったのだ。

 技でも、記憶でもなく、経験がなくなった。その説明なら、しっくりくる。


 と。


 僕の腕に食らいついたまま、蜥蜴は鼻から息を吸い込んだ。


 ――まさか、こいつ……!


 炎を吐く気だ。こんな状態で吐かれれば、問答無用で即死するだろう。


 今のジャンプ噛みつきを受けたときに、剣は取り落としてしまっていた。両手で持っていたのが仇になってしまった。

 剣はすぐ足元に落ちているのだが、食らいつかれて動きを封じられているせいで、拾うことはできない。


 ――まずい。死ぬ。


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