表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
始まりの魔王と終わりの勇者 ~ふびんな天然最強勇者の僕が、猫になった最凶ワンオペ魔王さんと、大陸を救う旅に出た――食べて戦って呪われて恋もする、ハチャメチャな144日間の記録~  作者: 式見 汀花
第一章 西の都 ~海の見える都~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/60

第33話 魔王と魔王

 どう言おうか迷って、結局僕は、無難な話題を選んだ。


「ここに巣食っている魔物は、魔王さんが作ったものなんですか?」

「どうかな。まあ、まず、間違いなくそうだろう」

「自分で言っておいてなんですけど、魔王さんが作った以外の魔物もいるんですか?」

「分からんな。いるのかもしれない。魔王という存在は、私以前にもいたのだから、そいつが作ったものがいるかもな」


 それを聞いて、僕は驚いた。


「魔王さん以前にも、魔王っていたんですか?」

「ああ。勉強していないのか? まあ、この千年は私との茶番にかかりきりであっただろうから、無理もないのか。千年以上前の大昔……そういう時代では、大真面目に人間と魔王は対峙しておったのよ。茶番ではなく、本気で殺し合う関係だ」

「それをモデルにして、魔王さんは茶番を構築した……みたいなことですか?」

「そうだな。まぁ、そういうことだ」

「へえ……。たとえば、『最初の勇者』って言われているくらいですし、魔王さんも最初の魔王なんだと思ってました。そういえばそもそも……魔王だとか、勇者だとか、そういうものについても、僕が生まれてきたときから最初からあったもので……深く考えたことなんて、なかったですね」

「お前の脳みそなら、さもありなんだな」

「ひどいですね。実際、考えるのって苦手なんですけども」

「なら、少し授業をしてやろうか。話すくらいしか、することもないしな」

「いいんですか? お願いします」


 面白そうな話なので、僕は頷いて先を促した。

 魔王はすらすらと、説明をしてくれる。


「元々魔王という呼称は、魔法を極め、その力でもって世を支配しようとしたものに与えられた称号だ。魔の王、ということだな。誰よりも魔法を極め、それによって世界を手中に収められると勘違いした、愚かな僭称者せんしょうしゃのことだ」

「なるほど。で、かつての王様たちは、それと戦ってきた……ってことですね」

「うむ。そうだ。そしてどういうわけか、魔王が現れると、どこからともなく正義の味方――勇者も現れる。勇者が魔王を殺し、世界には平和が戻る」

「へえ……」

「しかし……魔王が滅ぶたび、新しい魔王も出てきてな。そのどれもが、北の城を根城としたらしい」

「昔から、魔王たちの間で、そういうお約束ごとでもあったんですか?」

「さあなぁ。それっぽいからというだけのような気もするが……」


 言いながら、魔王自身腑に落ちていない感じではあった。


「で、千年前だが。私の前にも、魔王がいた。そもそも、北の地に天より降り来る邪悪は、そいつが魔法の儀式によって喚び出したものなのだ」

「え。そうだったんですか?」

「ああ。その魔王は、それを利用して、凄まじい力を手に入れようとした。まあ、召喚自体は成功したが、目論もくろみ自体は崩壊して失敗した……とでも、言えばいいか」

「失敗……。つまり、北の地にはその召喚された邪悪なものだけが残っちゃって。魔王さんが、それを魔王城に封印した……と?」

「うむ。まあ、そんな感じだな」

「あれ? 魔王さんは、その喚び出しをした魔王とは、別人ですよね?」

「当たり前だ」


 答える魔王に、僕は首を捻った。


 魔王の話を読み解くと、千年前、魔王が三人いたことになるのか?


 魔王の前の魔王で、邪悪なるものを喚び出した魔王。

 そして、喚び出されて天より降り来たる、邪悪なるもの。

 最後に、それを封印した、この魔王自身。


 数が合わない気がする。


 この魔王は――『魔王さん』は、一体どこから来たのだろう?

 それを訊こうかと思ったが、先回りをされた。


「まあ、詳しい話は、追々、してやろう。そんな機会があればだがな。あとは、私が話す気になれば、だな」

「……どうしたら、話す気になります?」

「そうだな……。もっと仲良くなったら、というところか」


 冗談めかしたセリフだった。が、冗談に聞こえなかったし、事実、もっと仲良くならなければ、話してくれない気はした。

 僕は深追いせず、頷いた。


「分かりました。僕はもっと、魔王さんと仲良くなりたいです」

「ぬけぬけと。魔王と仲良くなりたい勇者など、聞いたこともないわ」


 それこそ冗談だったのだろう。言って、魔王が吹き出す。

 僕も笑った。


 そんなことを話している内に、僕たちは、地下の最深部に辿り着いたようだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ