表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
始まりの魔王と終わりの勇者 ~ふびんな天然最強勇者の僕が、猫になった最凶ワンオペ魔王さんと、大陸を救う旅に出た――食べて戦って呪われて恋もする、ハチャメチャな144日間の記録~  作者: 式見 汀花
プロローグ(という名の最終決戦と真実)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/59

第3話 最終決戦 魔王城 #3

 ――まずい。


 直感に従い、僕は真横に跳んだ。

 それと同時に、魔王が腕を一閃する。

 玉座の間を、黒い雷が切り裂いた。


 僕は振り返って破壊跡を確認した。扉までの床はカーペットごと亀裂が走っている。まともに浴びれば、死にはしなくとも大変なダメージになるだろう。


 次に、魔王を確認する。

 彼女はまだ笑っていた。泥団子を投げつけようと準備するイタズラっ子のような――そんな顔で続けてくる。


「勇者としての本分を全うしてみせろ、小僧。お前が私よりも強ければ、それでいいのだ。その力で私を痛めつけ、平伏させてみせろ」


 喋りながら、もう片腕に残っている黒い雷を放ってきた。

 それも床を転がるようにしてなんとか躱す。

 カーペットにしがみつくような姿勢のこちらに、魔王は言葉を結んだ。


「私を痛めつけろ。降参を相手に懇願するな。力でもって、降伏させれば良いのだ。力こそがこの世の、もっとも純粋なルールのひとつだからだ。泣き叫ぶ私を踏み付け、さらに痛めつけ、許してください、もう悪いことはしません――そう言わせればいいだけのことだ。違うか?」


 違う。そう答えたかったが、答えたところで、耳を貸してくれるとは思えなかった。


 ――力こそがルール? そんなことは、断じてない。


 絶対に違う。それだけは、自分のすべてを賭けて誓える。

 だが、それこそ、言葉にしてみたところで、なんの効果もないだろう。

 僕は、両足に力を込めた。

 立ち上がり、聖剣を鞘から抜く。


「分かりました。あなたを……魔王さんを、死なない程度に痛めつけて、二度と悪いことができないようにします。そうしたら、僕に降参してくれますか?」

「懇願するな、と言っているだろうが。私の意思など考慮するな。ただ、言わせればいい。それだけだ」

「……分かりました。でも、死なないでくださいよ」

「誰にものを――」


 言いかけた魔王が、言葉を呑んだ。

 僕が剣を上段に構えたからだろう。


 距離は十メートル離れているが、十分に届く。

 僕は気を剣に乗せて、振り下ろした。


 剣から放たれた光波が、一直線に魔王へ向かう。今度は彼女が、横っ飛びをしてそれを躱した。長い黒髪が一束ほど、切断されて宙に舞う。

 光波はそのまま直進すると玉座の間の壁を通り抜けた。実際は通り抜けたのではなく、斬ってそのまま進んでいったのだが。

 それを見送っていた魔王はこちらに向き直ると、頷いた。


「その年齢で剣気を操るか。しかも、飛ばしてみせるとは。大したものだ――才能は認めよう。勇者としては、その性格が玉にきずだろうがな」


 それは聞き流して、僕はもう一度、言った。


「降参、してくれませんか? 次は当てます」

「当てればいいだろう。誰も止めんぞ」


 魔王は、右手を振りかざした。

 その手には、黒い炎のようなものがまとわりついている。

 これは、危険だ。本能が訴えてくる。


「せっかくの最終決戦だ。思う存分、魔物を殺して身につけた技術を私に振るってみせろ。なに、私も運動不足気味でな。気が済むまで付き合おうぞ」


 魔王は剣のように右腕を振りかぶると、一気に間合いを詰めてきた。

 速い。

 心臓を狙ってきた貫手を、聖剣で受ける。


 刃を立てて受けたのだが、魔王の手には、傷ひとつつかない。どころか、剣と斬り結んだかのような硬質な感触があった。

 魔王も、感心したかのように言葉を漏らした。


「我が手刀で折れぬか。良い剣だ」


 聞き終わる前に、後ろへ跳ぶ。


 目の前、鼻先を下から上へ、なにかが鋭く切り裂いていった。蹴りだ。脚も黒い炎で覆われている。下がらねば急所を潰されるか、真っ二つになっていたかもしれない。


 そして、振り上がった脚が、今度は落ちてくる。かかと落としだ。


 僕は身体からだを捻り、回転させた。体軸を少しずらして、踵を回避する。

 回転しながら、一歩踏み込む。ついでに構えた剣に回転の力を乗せて、魔王の胴のあたりを目がけて、横薙ぎに斬りつける。


 剣は空を切った。まだ踵落としの脚も地に着いていないはずだったのに、魔王は五メートルほど飛び退っている。


 彼女はまだ微笑が顔に残っている。が、その目はやはり、刃物のように鋭い。こちらを本当に切り裂ける――ただの視線に、それだけの力が宿っているのが分かる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ