表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
始まりの魔王と終わりの勇者 ~ふびんな天然最強勇者の僕が、猫になった最凶ワンオペ魔王さんと、大陸を救う旅に出た――食べて戦って呪われて恋もする、ハチャメチャな144日間の記録~  作者: 式見 汀花
第一章 西の都 ~海の見える都~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/59

第28話 代替案

 僕と魔王は西の都に帰り着くと、まず首長邸を訪ねた。

 そこに神官長も呼んでもらってから、事の顛末てんまつを説明する。


「……という、わけだったんです」

「なるほど、そういう理由が……」


 痛ましそうに、首長と神官長は頷いている。

 僕はまず、神官長に話を聞いた。


「あの。宝玉をそのまま、質屋さんに貸してあげるということは、できませんか?」

「……しばらくの間であれば構いませんが、ですが、街に破邪結界を張るときに、どうしても必要となります。そして破邪結界を張った後は、結界の力を維持するために、教会に安置しておく必要がありますから……」

「そうですか……」


 元々、そうであることは破邪結界を作る一員である僕自身が、よく分かっていることではあったが。


 となれば、本命のプランを提出するほかない。

 僕は訊ねた。


「新しい神聖宝玉を作ることって、できませんか?」

「新しい?」

「はい。この問題ってつまり、神聖宝玉が一個しかないから問題なわけで。質屋さんとか、あんなふうに病気で困っている人に貸してあげられる分と、教会に置いておく分の宝玉があれば、全部丸く収まるんじゃないかって思うんです」


 僕の言葉に、神官長はなるほど、と膝を打った。

 が、すぐに顔が曇る。


「神聖宝玉は、魔水晶ますいしょうを素材として作るのですが」


 魔水晶――生命エネルギーを蓄えることのできる水晶のことだ。一般にほとんど流通はしていない、非常に希少な鉱物である。


 神官長は続けた。


「近くに、魔水晶の鉱山が、あるにはあるのです。しかし、もう何十年も、閉鎖されたままなのです。件の神聖宝玉も、そこで採れた魔水晶に、先々代かの神官長が力を込めたもので。もっと昔は、豊富に宝玉も用意でき、病める人の助けとなったのですが……」

「どうして閉鎖を?」

「魔物が棲み着いてしまったのです。それも、強力な……」


 そんなことだろうとは思っていたが。

 それなら、事態の収拾は簡単だ。僕は立ち上がった。


「勇者さま?」

「鉱山の場所を教えていただけますか。必要な分の魔水晶さえあれば、神官長、新たな宝玉を作っていただけますね?」

「それは、もちろんですが……。危険ですよ。先代の勇者も挑戦しようとして、断念したのですから」

「父さんが?」


 僕が言うと、神官長はしまった、という顔をした。別に侮辱するような意図でもなかっただろうが、先代勇者が僕の父だという考えに至っていなかったのだろう。

 それに、僕は笑った。


「大丈夫ですよ。僕は父どころか、歴代と比べても、最強の勇者だって言われていますから。もし本当に危なかったら、逃げ回って、なんとか水晶だけでも回収してきます」

「そ、そうですか……」


 神官長は、不安そうにしながらも引き下がる。

 と、ぽつりと、誰もいない空間に向かって魔王が言った。


「私を当てにしているなら間違いだぞ。ひとりで行けよ」

「はい。最初から当てになんて、してません。ここでのんびり、おいしいものでも食べてゴロゴロして待っていてください」

「ご、ご一緒しないんですか?」


 首長が訊いてくる。それに、僕は肩をすくめた。


「ええ。ちょっと……ケンカしちゃって。でも、水晶の回収くらいでしたら、僕ひとりで平気ですから。魔王さんのこと、よろしくお願いします」

「は、はあ」

「じゃあ、そういうことで。神官長、地図に場所を書き込んでもらえますか」


 もちろん、最強の勇者たる力が完全に消失してしまったということを、首長たちは知らない。


 だが、だからといって、目の前の事態に手をこまねいているわけにはいかないし、弱音も吐いていられない。


 僕は勇者だ。たとえ、茶番によって作られた存在だろうと、僕は勇者だ。


 いや、まだまだ勇者としては未熟だと分かっている。でも、そうあろうとしてきた。


 みんなが手を取り合って、笑って、楽しく、平和に生きていけるように、そのために戦うという心に、偽りはない。

 誰かが犠牲になって成り立つ平和なんて、そんなもの、僕は認めない。


 もし、みんなの中からひとり、どうしても犠牲を払わないといけないのなら――


 真っ先に犠牲になるべきは、勇者でなくてはならないはずだ。


 僕は、そう思っている。

 僕は、どこにも逃げるつもりはなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ