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始まりの魔王と終わりの勇者  ~猫になった最凶魔王と天然最強勇者のハチャメチャ144日間大陸救済旅~  作者: 式見 汀花
第二章 東の都 ~いろいろとデカい都~

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第112話 破壊龍 #2

 どんな言葉をかけていいのか、僕には、皆目見当がつかなかった。


 この子は、世界を破壊しようとして、当時の勇者に封印された破壊龍だ。紆余曲折を経て今の時代に蘇り、大幅に力は落ちていたが、邪気に導かれるまま再び大陸を恐怖に陥れようとした。


 それはつまり、自分の生きていた時代をすっ飛ばし、知っているものなどなにひとつない遙か未来に、たったひとりぼっちになってしまった、ということでもある。


 破壊龍という宿命を背負わされた上で、この時代の完全なる異物にもなってしまった。

 そんなことになって、はたして、自分の居場所を見つける、という気持ちになれるものなのだろうか?


 罪の意識を抱え、しかしそれを償う相手もいない、全く違う時代に取り残されて。

 そんなことなら死んだ方がマシだ、と思うのは、当たり前かもしれない。


 僕はその辛さを想像しようとしたが、できそうになかった。

 遙か未来に、自分だけが罪を抱えて蘇るなんて、想像できるわけがない。


 だが、この子がこの世界に、この時代に馴染めるのかどうかは、僕たちにかかっている。それだけは、確かなことだろう。

 それも、ただ気を遣うとか、なだめすかすとか、そういうことではなくて、心から打ち解け合って、信頼してもらえるようにならないといけない。


 そのためにどうするのがいいのかは分からないが――

 僕は背中を撫でながら、声をかけた。


「……とにかく、しばらく、一緒に行動してみない?」

「……一緒に?」

「うん」


 僕はハンカチを取り出して、破壊龍の涙を拭った。


「そうすれば……うん、たぶん、自然と、ああ、ここにいても大丈夫だなって思ってもらえる……そんな気がするんだ。今日は、楽しかった?」


 それには、こくりと頷く。が、痛ましい表情だ。


 きっと、この子は――過去から今に至るまでにあったことと、自分のしてきたことを、すべて記憶しているんだろう。

 受け答えからして利発な感じがあるし、だから、自分のしてきたことの重大さもよく分かっていて……。


 今、嬉しいし、楽しい――そういう感情を抱くことに、ものすごい戸惑いがあるのだろう。自分なんかが、嬉しく思ったり、楽しく思ったりしていいのか、と思っているのかもしれない。


 それについて考えながら、僕は言った。


「きっと、馴染めると思うんだ。僕たちって、結局は似たものだと思うし」

「……え?」


 目を潤ませながら、破壊龍はきょとんとした。

 その顔に、笑いかける。


「僕は、一応この時代の勇者で。僕の頭の上に掴まってぶら下がってる黒猫、いたでしょう? あれは、この時代の魔王なんだ」

「……ええっ?」


 泣くのを忘れて、驚いた顔になった破壊龍に、僕は続けた。


「聖女さんは、もっと古い魔王なんだって。で、あの、赤い髪の毛の女の子は、僕の次の勇者になるって言われてる。あと、守護龍さんは、きっと……君と同じ時代に作られていて、今は、僕たちの味方をしてくれている」


 守護龍のことを訊いて、破壊龍は少し、目を曇らせた。なにか、知っているのかもしれない。

 が、ごまかすようにか、我慢しきれなくなったのか、くすっと笑った。


「……変なの。なんで、勇者とか、魔王がいっぱいいて、しかも一緒にいるの?」

「さあ。それこそ……なんでか、成り行きでこうなってるんだけど。でも、楽しく一緒に馬鹿をやりつつ、君を止めることができるだけの力を出せた。仲間だから」

「……仲間」


 自分には関係がないもの、という具合に、破壊龍は呟く。

 それに、僕は頷いた。


「君も、もう、仲間だと思ってるよ」

「……私も? 勇者の?」


 また、驚いたような声だった。それにまた、頷く。


「もちろん。でも、なんていうか……言葉でくくれるようなものでもないと思うけどね。仲間とか、友達とか、家族とか……そんな感じ。どれとも違うような気がする。でも、どれよりも強く繋がってるような……たぶん、そんな感じなんだ」


 言うと、破壊龍は、しばし、呆然とした。

 なにかを考えているようだ。

 しばらく待っていると、彼女は口を開いた。


「……私が仲間になったら……」

「勇者と魔王と守護龍に、破壊龍まで加わることになるね」

「いいの……? それ。もっと変な集団になると思うけど……」

「ふふ、そうだね。でも、面白いし、いいんじゃないかな」

「いいのかな。……面白くても。私なんかが……そんなふうに感じても」


 苦しそうに、破壊龍は言う。

 僕は、頷いた。


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