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始まりの魔王と終わりの勇者  ~猫になった最凶魔王と天然最強勇者のハチャメチャ144日間大陸救済旅~  作者: 式見 汀花
第二章 東の都 ~いろいろとデカい都~

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第111話 破壊龍 #1

 甘味処で食事を済ませたあとは、街を散歩したり、挨拶をして回ることにした。

 聖女たちはすでに破壊龍を連れて、首長や兵士長と面会を済ませていたが。僕はまだ顔を出していない。改めて、まずは首長邸へと向かった。


 首長は僕を見るなり駆け寄ってくると、両手でがっちりと固く握手をしてきた。

 今回の騒動を収めたことに対するお礼として、この数日間の祭りは代金は気にせず、思う存分に楽しんでほしい、との事だった。もちろん、みんなも一緒に。


 新しい神聖宝玉の取り寄せや、破邪結界の構築については、また祭りの後、話し合いをして決めよう、ということになった。今はひとまず、すべてを忘れて楽しんでほしいと。

 その好意に、遠慮なく甘えさせてもらうことにした。


 あとは最終日に、都を救った勇者一行を披露するためのパレードが計画されているということで、みんなで参加してほしい、ということだった。

 僕は、破壊龍も加えてくれることを条件に、それを了承した。

 首長は、少しもためらうことなく、首を縦に振ってくれた。ぜひ、参加してほしいと。


 それから、兵舎へと向かう。

 兵士たちは、拍手で僕を迎えてくれた。兵士長も。


 日頃休みなく稽古に励んでいる兵士たちだが、今日ばかりは休みであるらしい。もちろん稽古が休みなだけで、都を守る兵士としての仕事は休みではない。そんな中で、こうして集まって、僕たちを迎えてくれていた。

 兵士たちにお礼や、戦いの中でどんなことがあったのか、なにをしたのか、という質疑応答をしたりしているうちに、あっという間に夕刻になった。


 それは特に魔王にとって、待ちに待った時間だった。

 兵舎を出て、街に繰り出すと、夕暮れ時の街は、活気に溢れていた。


 昼間に準備をしていた屋台、出店はもう準備が終わっていて、人だかりができ始めている。それを見た魔王は目の色を変えると、僕たちに指示を飛ばした。

 じゃがバター、たこ焼き、イカ焼き、焼きそばなど、屋台グルメを手分けして買ったあとは、広場のベンチに陣取り、みんなで食べた。


 立ち呑みの屋台などもあり、そこで都の人たちと談笑していると、気がつけば時刻は、深夜になっていた。


 聖女、魔王はその場で酔い潰れたりはしなかったが、宿の部屋に着くなり、ベッドに倒れ込みいびきをかき始める。


 兵士長の娘と守護龍はちゃんとお風呂に入り、それからベッドに潜りこんだ。

 破壊龍も、一緒だった。屋台を回っているときも聖女と一緒で、終始、一言も発することはなかったが、穏やかに祭りを楽しみ、守護龍たちとベッドに入った。


 僕は、いつも通り、椅子で膝を抱えて寝る。

 と、目を閉じて、何分経っただろうか。


 気配を感じて、僕は顔を上げた。

 見ると、破壊龍が部屋のドアに手をかけて、出て行こうとしている。


「どこに行くの?」


 僕が訊ねると、破壊龍は小さな声で、トイレ、と答えた。

 反射的に、違うなと思った。

 僕は椅子を降りて、破壊龍に近づく。


 なんとも言えない、微妙な表情で、少女は僕を見上げてくる。

 僕は、手を差し出した。


「眠れないなら、ちょっと歩こうか。まだ、外は賑やかだしね」


 時刻は深夜の二時を回ったところだ。が、今、都は眠らない街と化している。新年のお祭りのように、今も宿の外から、騒ぐ人の声が聞こえている。

 破壊龍は、小さく頷いた。僕の手を、握ってくる。


 部屋を施錠して、街へ出た。


「今日は、あんまり喋らなかったね。まだ、慣れない?」

「……うん。元々、あんまり……喋るのは、得意じゃないから」

「そっか」


 僕は頷いて、それ以上はなにも訊かなかった。

 次の言葉は、中央広場まで出てきてからだった。


「なにか、食べたいものとかない? さっきは酔っ払いが好き放題してたからね。なにか食べたいものあっても、言えなかったでしょ」


 それは冗談だったが。破壊龍は特に笑いもせず、屋台を指さした。

 りんご飴の屋台だ。僕は頷いて、そこへ向かった。

 そしてひとつ、大きなヤツをもらう。


 それから、ベンチに座った。黙々と、破壊龍はりんご飴を舐め始める。

 何十分か、そのまま、そうしていた。


 お祭りで賑やかな中で、僕と破壊龍のいるベンチだけ、静かで――

 なんだか、世界から切り離されたような、そんな気さえした。

 半分ほどりんご飴を食べて、破壊龍は言ってきた。


「……ねえ、勇者」

「ん、なに?」

「……喋らないの? なにか……訊いてきたり、しないの?」

「ん……。そんなに、根掘り葉掘り訊いたり、したくないから。ああ、でも、ひとつ、質問があるかも」

「なに?」

「さっきは、ひとりでどこに行こうとしたの?」


 訊くと、破壊龍はりんご飴を食べるのを止めて、僕を見てきた。

 しかしすぐに、逸らしてしまう。小さな声で呟くのが聞こえた。


「……別に」

「どこか、行こうとしてた?」

「……うん」

「どこに?」

「……決めてない。とにかく、ここじゃない、どこかに」

「ここに、いたくなかった?」

「ううん。違う。ここに、いたい……。でも、私……ひどいこと、したから」


 少しずつ、破壊龍の声は小さくなっていった。

 その顔を覗き込んで、僕は首を振った。


「君は、なにもしてないよ。そういうことをする前に、こうして、元の人間に戻れたんだ。もう、君をおかしくしていた邪気はないんだ。なにも、気にしなくていい」

「でもっ……。私、私は……」


 ぶるぶると、大きく破壊龍はかぶりを振った。

 それから僕の顔を見据えて、言ってきた。


「私なんて、いなくなってしまったほうが、よかったのに……! なんで、なんで……勇者は、私のことを……助けたりしたの……?」


 そして、大きな瞳から、ぼろぼろと涙を零した。やがて、嗚咽し始める。

 僕は、なにも言わず、破壊龍の背中を撫でた。


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