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始まりの魔王と終わりの勇者  ~猫になった最凶魔王と天然最強勇者のハチャメチャ144日間大陸救済旅~  作者: 式見 汀花
第二章 東の都 ~いろいろとデカい都~

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第110話 激闘後の目覚め #3

 魔王が、僕に訊いてきた。


「で……なに食うんだ、小僧」


 言われて、考える。

 まず、真っ先に頭に浮かんだ食べものがあった。それを答えた。


「じゃあ、みたらし団子が食べたいです」

「は? みたらし団子?」


 魔王が間の抜けた声で答えてくる。僕は頷いた。


「はい。みたらし団子が食べたいです」

「なんで?」


 兵士長の娘が訊いてくる。それに答える。


「ええと……今回、僕の命を救ってくれたから、かな。改めて食べてお礼をしたいというか、そういう気分なんだ」

「お前はつくづく、わけが分からんな」


 魔王がぼやく。

 そこを、聖女が取りなした。


「ははっ、まあ、いいじゃないか。起きたばかりだし、重いものも食べづらいだろ。そういうことで、行こうじゃないか。私も甘いものいきたい気分だしねぇ」


 誰も反対はしなかった。

 僕たちは六人連れ立って、以前に入ったのと同じ、甘味屋ののれんをくぐった。


 そして僕はみたらし団子を。魔王はフルーツあんみつを。聖女は三色のおはぎ。兵士長の娘はわらび餅。守護龍はどら焼き。破壊龍は、チョコレート羊羹を頼んだ。飲み物は、全員が濃いめの緑茶を。


 注文の品はすぐに揃い、僕たちは会話をしつつ、食べ始める。


「で、どういう意味だい少年。なんでみたらし団子が命を救ったんだ?」


 早速、聖女が訊いてくる。

 僕はみたらし団子を手に持ち、答えた。


「火炎弾を斬り裂いて、僕はもう、ほとんど力が残ってなくて。みんなの力で背中に取り付いたけど、掴めなくて。で、なんとか背中にへばりつこうと思ったときに使った剣気のイメージが、ここのみたらし団子だったんですよ」

「なにそれ」


 兵士長の娘が、半笑い、半呆れで言う。

 それに僕は、大真面目に答えた。


「あのとき君にみたらし団子を恵んでもらえてなかったら、そのまま転がり落ちて終わりだったと思う。ありがとう」

「なんか……それでお礼言われても、実感ないけど。お兄ちゃんの助けになったんなら……まあ、いっか」


 兵士長の娘は、わらび餅を食べながら頷く。それも非常にぷるぷるもちもちしていて、おいしそうではあった。

 と、聖女が破壊龍に訊いた。


「覚えてるかい? 戦いのことは」


 それに、破壊龍はまだチョコレート羊羹には手をつけていない状態で、頷く。


「うん……。覚えてる。最初、ここで……なんか、口の中に針を刺された。痛かった」


 呟くように言ってから、僕を見てくる。


「あとは……空で戦った。ぶつかろうとしても、ひらひら避けるし、身体にくっついてくるし、逃げ回るし……。本当に、鬱陶しかった……。ぶっ殺してやるって思った」

「あはは……」


 わりと真剣に殺意の眼差しを向けてくるが、笑ってごまかす。

 僕は、訊いた。


「今は、どう? まだ、ぶっ殺したい?」


 それには、目の殺意を引っ込めて、首をすぐに振る。


「……全然。ちょっとムカつくけど……。でも、なんで、あんなに怒ってたんだろうって……そんなふうに感じる」

「そっか。それは、よかった。みたらし団子、食べる? おいしいよ」


 僕が勧めると、破壊龍は、みたらし団子を手に取った。

 串からそのまま、団子のひとつに齧り付く。

 このお店のみたらし団子はこの街の例に漏れず、握り拳ぐらいの大きさがあり、しかも生のお餅のような粘りともちもち感が特徴だ。(今日知ったが、メニューに喉に詰まらせないよう注意、と注釈がついていた)


 もにゅもにゅと口を動かし、嚥下えんげするまで、僕らはずっと、破壊龍を見守っていた。

 別に喉に詰まらせるのではとか、そんなことが心配だったわけではない。

 飲み込んで、破壊龍は微笑した。


「……おいしい」


 それに、僕たちも笑顔になる。


 いろいろと質問をしようかと思ったが――今はまだ、そういうことはしなくてもいいだろう。時期尚早だし、あまりにも残酷だ。

 今は休んで、自然と、自分がここにいてもいいのだと、感じてほしい。


 神聖宝玉を取り寄せて、破邪結界を張るまではまだ時間がある。周囲の町村にも張って回らないといけないし、まだ、東の都に滞在することにはなる。


 その間に、僕のできることをしよう。

 そう思って、僕は笑った。


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