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恐怖の会見

 デュートリッヒにて殿下と別れてしばらく。


 首都ベルノは雪解けもあって前回より明るく見える

 はずなのに威圧感を感じるのは、個人的事情か。


「フューちゃん、やっぱり逃げようよ」

「逃げたら地の果てまで追われて血祭りだぞ」

「どうせ素直に行っても責任取らされて死ぬんだぁ!」

「声がデカい。まだ決まったわけじゃないだろう」

「もうこのまま西に向かって、ツィマー卿に匿ってもらおう」

「あのモミアゲが役に立つんか」

「時間稼ぎで死んでるあいだにフルールへ亡命するんだ」

「その発言が一番首飛ぶわ」


 てかモミアゲの扱いよ。

 錯乱してるのかドライなのか、追い詰められるとヤバくなるのか。


 まぁなんにせよ、変なことはしない方がいいだろう。


 責任問題ったって、死刑になるほどのミスじゃない。

 勝ったり負けたりは誰だってしている。


 なんなら私は敗戦をまとめた方だ。

『鉄鹿』負傷で侵攻も遅らせている。


「せいぜい左遷だろうて。

 正直私もその方が助かる。偉い立ち場は面倒が多すぎる」

「そっか」

「だからヘタなことはするな。余計な怒りを買ったら、そのせいで首が飛ぶかもしれん」

「うーん。そもそも罰されるのがお(かど)違い」


 なんて駄弁っているあいだに。


「そこの方。これより先は下馬願います」


 王宮ベルノ城の門まで来た。


 もう祝賀も終わって久しい。

 門衛も通常営業だ。


「フューガ・ミュラーが勅命にて参内(さんだい)つかまつった。

 そう伝えてもらいたい」

「はっ!」


 冬が春になるぶりだが、


「またここに来るとはな」


 最近頻繁に来ている気がする。

 というか、今まで縁がなさすぎたからな。

 騎士学校卒業以来、去年の夏くらいまでは、


『もう一生来ることもあるまい』


 とか思っていたのにだ。

 それを


『今や武功を立てて、頻繁に呼ばれるようになったぞ!』


 なんて言ったら、当時の私は


『ザウパーとかあのへんの連中も見返したに違いない!』


 と喜んだに違いないが。


「確認が取れました。ミュラー卿、お通りください」

「うむ」


 開く城門の鉄扉。

 私を飲み込まんとするモンスターの口にも見えて……


 おい過去の私。

 こっちはこっちで地獄だぞ。











 陛下へ拝謁するにあたって。


 長い廊下を歩かされるのはいい。

 腰元の剣を預けるのは当然だ。


 だが、


「トゥルネーさまは控えの間にてお待ちいただきますよう」

「えっ」


 それは聞いていない。


「どういうこと?」

「何かの間違いじゃないのか? 彼女も勅命にて名指しで召還されている。

 外れるのはおかしいではないか」


 だが案内役の老齢文官は首を左右へ振る。


「しかし、陛下より直接承っております」

「むむ」


 するとアネッサは立ち止まって笑った。


「いいよいいよ、私も緊張するし。

 大事な話はフューちゃんが聞いといてよ。

 私はそれを元にお供する。いつものこと」

「うーん」


 スネた言い方ではないから、そっちの心配はいるまいが。


 気になるのは人払いの方だ。


 まさか、アネッサレベルでは()()()()聞かせられん話をされるのか?


 いや、まぁ、今の私は、書類上の身分だけは高いがな。



 そんな話されても困るぞ!?

 中身はいまだ、最近まで地方のいち武将だった『女熊』なんだ!



 能力はともかく、私はどこかそういうノリでいる。

 というか、今回の


『ご親征の副将解任』


 で、そこに戻れたつもりでいる。


 無用なデカい話なんぞしてくれるなよ?



 あるいは。


 いよいよ責任問題。


『今回の敗戦、フューガ・ミュラーに罪はあるが、副官には問わない』


 ということで分離され、まず私に処分を宣告。

 それからアネッサに事後報告と辞令が行くとかでは?


 それはマズい!

 シンプルに私の身が危ない!



 などと悩んでいるあいだに。

 アネッサは別の案内人に連れていかれる。


 待ってくれ! 我が平和の象徴!


 とも言えず。


「さ、ミュラー卿。こちらでございます」


 私は私で、謁見の間へと連行される。


 イヤじゃあああああ。






「陛下、ミュラー卿をお連れいたしました」

「うむ、ご苦労」


 広い謁見の間に入ると、玉座に陛下が一人おわすだけだった。

 しかも、


「奏官、退がってよいぞ」

「ははっ」


 お互いの腹心どころか、第三者が最後の一人までいなくなってしまう。


 おいおいおい、いいのか。

 私がナイフでも隠し持ってたら、とんでもないことになるぞ。

 賜死(しし)を恐れて何か()()()()(やから)がいても、おかしくないんだぞ。


 いや、そこまで行かずとも、だ。


 私と陛下が1対1ということは。

 今ここで魔力反応があっても誰も止められない。



 いざとなったら妹属性魔法で……



 いかんいかん!

 最近すーぐ悪魔に魂を売る発想が出るようになっている。


 誇りを思い出せ、フューガ・ミュラー!

 伏して生きるより立って死ぬをよしとする、オマエは騎士だろう!

 君よ気高くあれ!


 というのを鼻で笑ったとしても。

 柱の陰に誰ぞ控えているかもしれんしな。


 やはりこの国で我々臣民は、陛下の御前にあっては


『煮るなり焼くなり』


 なのだ。

 受け入れられないなら()()()()アネッサの言うとおり、亡命すべきだ。



 とはいえ、緊張しないわけはない。


 実のところ、


『敗戦の責を問われる』

『なんらかの罰を受ける』


 というのはなさそうだと思っている。


 なぜなら、そんな話をするのに人払い不要


 どころか、王が公明正大であったことを担保する傍聴者が必要だからだ。


 だからこそ、


「ミュラー卿。まずは遠路遥々ご苦労であった。

 北方の(えき)にて疲労困憊のところ、申し訳なく思う」

「もったいないお言葉です」


 執拗なまでの人払い。

 手紙で済ませず呼び付けるほどの内容。

 王者の礼とはいえ、臣下のいち騎士に丁寧な態度。


「さて、早速本題に入ろう」



 いったいどんな話をされるんだ?

 私が受け止められる話なのか?




「ミュラー卿には残念なことなのだが」

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