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最後にして最大

 皆さん、突然ですが。



 (ワタクシ)フューガ・ミュラー

 異例の大出世でございます。



 わーわー

 どんどんぱふぱふ



 で、どういう出世をしたのかというと。


 まず以前の役職が『西方方面軍副将』。

 要は司令官のモミアゲに次ぐ偉さだったらしい。

 あんまりよく分かってなかった。


 てか、そんなポジションの私を潜入捜査に出したのかアイツ。

 同じポジションが複数人いるとはいえ、バカだろ。

 外様イジメがすぎるだろう。


 国王陛下の肝入りだぞ?

 威光と意向を踏みにじる気か?

 いっそチクってやればよかった。



 というのは置いといて。


 それがこのたび、



『王国騎士団副団長』



 となりました。


 どういう役職かって?


『王国騎士団』というのは『南方』『西方』問わず、



『白十字王国軍全て』



 を指す名称だ。


 これには身分が騎士ではない、徴兵された士卒も含まれる。


 で、もうお分かりだな?

 その団体の『副団長』ともなると、



 私はついに騎士として2番目に偉い存在



 ではない。

 副団長は他にも数名いるし、団長より偉い名誉職もあるらしいし。


 なんて肩透かしはありつつも、大出世かましたことに変わりはないのだ。

 何せ地方の副官から、それも数ヶ月まえは第四騎士団長だったんだからな。


 メタな例えになるが、


『地方支社の営業部長が、数ヶ月で本社の専務かなんかになっている』


 レベルのことだ。



 でもまぁ、私一人で南方、西方の2正面を制したし?

 王国史にも比肩する者なき大英雄だし?

 これくらい当然というか? むしろまだ足りないんじゃないのっていうか?


 あれだけ中央に嫌気が差していた私ではあるが。

 役職をくれるなら貰っておくさ。

 何せ給料やら待遇やら全然違うからな。


 もはや私は上級国民サマ。

 ザウパー? 誰ソレ。そんな下等民、顔も思い出せん。



 てなワケで。

 人生の絶頂を更新し続ける私が、今何をしているのかというと











「ミュラー卿。君が来てくれて、私は実に心強い」



 北方方面軍重要拠点、デュートリッヒを目指す軍勢に混ざっている。


 朝の日差しは柔らかい。

 かっぽかっぽ、馬の蹄の音は優しい。

 隣にいらっしゃる殿下の声は温かい。

 後ろにいるアネッサのオーラも比較的穏やかだ。


 だが、



「今回の対神聖鉄血帝国戦線、どうしても()()()()ことはできないんだ。

 君には期待している」



 行く道は険しい。






 どうりで私のスカウトに必死だったわけだ。



 私なんかでも見れば分かるし、

 アデライド殿下も憂いておられたのだ。


 フリードリヒ殿下とハインリヒ殿下の不仲。



 言い換えれば王国の後継者問題。



 これを国王陛下が気にしていないわけがなかった。



 本来なら長男たるフリードリヒ殿下で決まっている。

 何も問題になる要素はない。



 が、なんとでもケチつける(やから)はいるもんだ。


 ハインリヒ殿下

 よりはその取り巻きとかだろうな。


 ハインリヒ殿下が国王になった方が甘い汁をすすれるヤツ。

 フリードリヒ殿下が国王になっては困る何かがあるヤツ。


 ソイツらが中立派に、あることないこと吹き込んで


『ハインリヒ殿下の方がふさわしい』


 とその気にさせる。



 そうなったら面倒だ。


 さすがに陛下がフリードリヒ殿下を指名すれば、その場で反対はしないだろう。


 だが陛下ご自身が身を退かれたあと。


 即位直後の新人たる王を待っているのは、



 自分のアンチが大量にいる、割れた議会だ。



 即内乱とまでは言わない。


 だが、これで国を守っていけようか無理に決まっている(即答)。


 内憂外患。

 ありとあらゆる問題へ対処するにあたって、まず足の引っ張り合いから始まる。

 国の利益より優先することかって思うかもしれない。

 でもアンチはそれが自分の利益だからな。



 では、どうやってこれを回避したものか。


 簡単な方法がひとつある。

 それは



『フリードリヒ殿下に、押しも押されぬ実績を持たせる』



 ことだ。

 無根拠ゆえに無際限な、誹謗中傷にもハインリヒ上げにも。






 そのために今回選ばれたのが、



(いくさ)で大活躍した』



 という称号だ。


 こりゃデカいよな。

『国家安全保障』こそ、国民が統治者に求める最大の見返りだ。


 善政を敷くとかは極論、そもそも支配者が縛らなきゃ、国民も好きに生きるのだ。


 じゃあなんで法に耐え、税に耐え、身分差別に耐え、王者を戴くのか。

 それが



『徒党を組んで生活を脅かしにくる敵から、徒党を組んで守ってくれる制度』



 だ。


 殿下が戦に勝利すれば、その能力がある証明となる。

 何より、宮殿に籠っている政治屋連中が讒言(ざんげん)しても説得力がない。


 そのためにご親征が企画されたのであり、



 サポートに私が編成されたのだ。

 ふたつの戦場を、敗北寸前の戦場を、無事に収めたこの私が。


 中央の役職を付けられたのも、このためだろう。


『現場の武官ではなく、殿下が連れてきた殿下の部下』


 とすることで、私の手柄すなわち殿下の活躍となる。


 また、私を方面軍より偉くすることで


『指揮系統に横入り』


 ではなく


『さらに上』


 に位置できる。

 指示が通りやすくなるってことだ。



 絶対に失敗できない!

 圧を感じる!



 私の手で、私の作戦で殿下を勝利に導けという圧を!



 ていうかこれは賭けだ。

 逆にご親征が失敗、敗走した場合、



『フリードリヒ殿下には国家を外敵から守る能力がない』



 との烙印を押されかねない。


 単に戦に負けるだけではない。

 私の采配ひとつで、国の将来が変わるかもしれんのだ。



 このプレッシャー、胃に来ないヤツがいるか!?



 アネッサくらいだろ。






 が、それらが消し飛ぶほど、輪を掛けてマズいことがある、と言ったら?



 そう、それこそが


「ミュラー卿。我々は今回の戦、なんとしても勝たねばならないのだ。

 もちろん私個人の問題もあるが、



 昨年末大敗した北方方面軍。

 援軍の我々が建て直さねば、社稷(しゃしょく)が危ない。



 何せ相手はあの、神聖鉄血帝国なのだから」



 今回の相手そのもの。


 南方西方どころではない。

 白十字王国とは北方と東方を回り込むように国境を接した、



 最大最強クラスの軍事国家である。











お読みくださり、誠にありがとうございます。

少しでも続きが気になったりドキドキしていただけたら、

☆評価、ブックマーク、『いいね』などを

よろしくお願いいたします。

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