表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/71

戦の醍醐味

 同時だった。



 うわあっ、と絶叫がこだまする。



 敵方の(とき)の声だ。


「数は!」

「暗くて分かりません!」

「ちっ」


 言ってる間に、



「敵襲ーっ! 敵襲ーっ!」



 夜番の連中は交戦を開始している。

 飛び交う魔法弾も、殺し合いでなければ流れ星なんだがな!


「団長ー!!」


 あまりのことに、アネッサも飛び出してくる。

 コイツはぐっすり寝れていたようだ。


「鎧の前後が逆だぞ。直してこい」

「いいえ、首の前後が逆なんです」

「そうか。寝ぼけとるんだな。顔も洗ってこい。ついでに私の鎧とハルバードも頼む」

「洗うんですか?」

「持ってくるの! 早く眠気覚ませ!」


 図太すぎるのも考えものだな。

 アイツに指揮を任せて、自分で準備しようかとも思ったが。

 任せなくて正解だった。


 前線はいち早い指揮官の到着を待っているだろう。

 裸同然、布の服で向かうのは怖いが仕方ない。

 突破されるよりは安全だ。






 負傷した味方を後送しとるヤツがいるな。

 陣の外周が近い。


「無事かっ」

「団長!」

「膝に矢を受けたようです」

「そうか。命は無事でよかった」

「もったいないお言葉です」


 そう言うな。

 死なれたら事務が面倒なんだから。


「聞きたいんだが、君らは見張り隊にいた者か」

「「はっ」」

「敵勢はどのくらいだ?」

「魔法の数からして、おそらく同規模です」

「攻撃が来る方向を見るに、包囲はされていません」

「そうか」


 陽動して裏から別の手勢が、という可能性もあるが。


 おそらくは


物見櫓(ものみやぐら)にちょうどいい高所が空いている』

『夜のうちに少勢で抑えておこう』


 と考えたんだろう。

 我々第四騎士団が完全に姿を消していたからな。


 存在がバレていたなら、もっと殺意が高い

 確実に排除できる備えで来るはずだ。


「ありがとう。後ろで手当てをしてくれ」

「面目ありません」

「なんの。その代わり盾を借りていくぞ」

「ぜひ! 武具だけでも団長のお役に立てれば光栄です」

「もう立っているよ。じゅうぶんにな」


 これでアネッサが来るまでの安全は確保できるだろう。

 そんな遅れないだろうし。


 走れば言ってる間に最前線だ。


 さすが我が第四騎士団。

 すぐに人数が集まって迎撃できている。

 魔法を使えずとものし上がった鬼が、鍛え抜いただけのことはある。


 炎属性なんかも飛んできているが、


「どうだ」

「団長! なんとか食い止めているところです!」

「よくやった」


 中年騎士が敬礼する。

 言葉と裏腹、余裕があるってことだ。


 うむ、陣柵も突破されていない。

 現状防衛は成功しているようだな。


「このぶんなら()()()()()です」

「確かにな」


 相手にとっても不意の遭遇で、準備がなかったんだろう。

 無人と踏んでいたわけだし。


 例えば攻城戦は『相手の5倍の兵力がいる』と言われる。

 長靴どもに数で劣る我々が、今まで生き延びている最終手段だ。


 我が陣は城ではないが、坂の高低で似た効果は得られるだろう。


「だが、それだけではダメだ」

「えっ」


「団長ーっ! 武器をお持ちしました!」


「おうアネッサ」


 やっと来たか。

 盾だけだと敵が乗り込んできたとき困るからな。

 ラムアタックするしかない。


「それで、『それだけだとダメだ』というのは?」


 わざわざ着装が終わってから聞くとは気が利くな。

 やはり余裕ではあるらしい。


 だがな、



 私は結構焦っているぞ。



「撃退するだけではダメなんだ。


 我々は奇襲部隊だからな」


「あっ」


 アネッサは気付いたらしい。

 そう、


 なんのために朝から()()()()()まで、寒い思いをしていたのか。



「我々の存在が敵本隊に知られては、作戦が全てパーになる!



 ヤツら、1人として生きて帰すわけにはいかんぞ!!」



 それも1秒でも早くだ。

 ワーワー騒いどるわビカビカ魔法飛ばしとるわでは、敵本隊に嫌でも知れる。


 となれば、



『「女熊」だ! 「女熊」が出たぞ!』



 おう。敵兵どもが騒ぎ出したな。

 どうやら特製ハルバードのシルエットで、誰を相手にしているか理解したらしい。


『「女熊」ったらあの!』

『マルティノ閣下の手勢を打ち破った!』

『500で5,000の兵を追い返した!』

『魔法を使わずとも、素手で人間を脳天から左右に引き裂くという!』

『パンチで下アゴを吹っ飛ばすと聞く!』


 何言ってるかは分からんが、ビビっているならかまわん。


 狼狽えて、逃げようか進もうか止まろうかで足並みも乱れて。

 敵の陣形が崩れる。


 陣形が崩れると魔法や弓矢を撃てなくなる。

 射線に味方が入って危ないからな。



 逆にこちら側は。


 騎士たちが加速度的に集結している。

 ビックリして飛び起きた分、遅刻しそうな朝に似た勢いがある。


 立地もこちらが上、(さか)落としだ。


 こりゃもう、


「騎士団! 守っていても(らち)が開かん!



 突撃して殲滅せよ!!」



 もちろん一番乗りは私だがな!


『「女熊」が跳んだぞ!』

『あの高さの柵を!?』

『熊ですらないのか!?』

『山猫はこっちの総大将だろう!』



「オラアァ!!」



『ぎゃああ!』



「続け! 騎士たちよ! 我に続け!」




「「「「「うおおおおお!!」」」」」




 よしよし。

 私たち500人はひとつの雪崩となった!


 人間の熱量をまとめてぶつけるこの感じ。

 戦争や殺し合いなど楽しむものではないが、


 やはりコレがたまらないのだ。


(かな)わん! 逃げろっ!』


「追えっ! 女の尻と思って追え!



 諸君らも騎士なら、地獄の底まで送り狼して差し上げろ!!」



 何より、




『妹属性』を使わず()()を運べるのがたまらん!!




 この際敵も木も変わらん。

 邪魔なものはまとめて薙ぎ倒す。

 ただそれのみ。


 今の私ならできる。

 なんでもできる。


 連中はもう逃げ腰だ。

 背中では反撃できない。


 だが進撃する後続に阻まれ退がれない。

 後続も前衛が邪魔で私たちを迎撃できない。


 混乱した屈強など、冷静な()()()()()より弱い。


 敵なんかいないのと一緒。

 無人の野を行くが如し。


「フハハハハハ!」


 ノリノリで坂を下っていると、


「お」


 あれに見えるは騎乗の男。

 山道なんて、騎馬より徒歩(かち)の方が動きよいもの。


 それでもあえて、馬に乗り続ける者が

 味方からも目立つようにしておく必要のある者がいるとすれば



「見つけたぞ、『お兄ちゃん』」



 ヤツが指揮官だ。




 これはツイている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ