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何も無い日常とX

「テストおわったな。結城。」


翔は虚空を見つめ、同じく虚無の眼の結城に合いの手を求めたが、もちろん返ってくる物は何も無かった。


「おーい。お前、朝からどうしたんだよ?テストで死ぬ前から死んでんじゃん?」


結城はゆっくりと息を吐くと虚ろな目線を翔に向け確認した。

「これって何回目だっけ?」


「はぁ?お前が物理のテストで乙るのなんか毎回だろw」


おちゃらけた翔に少しホッとした結城であったが、同じ様なやり取りをした事があった様な気がして結城は少し背筋が寒くなった。


「いや、そうじゃなくて…。」


何を話したらいいのか分からなくなった結城の脳裏に背筋の寒さと共に蘇った猟奇殺人鬼Xという名前と狐面の姿。


「なぁ、猟奇殺人鬼Xの話、知ってるよな?」

結城は翔に問いかけると思いもよらない回答が返ってくる。


「猟奇殺人鬼X?アニメかなんかか?」


怪訝そうな顔で翔は答えると結城は少し怒りを込めて問い詰めた。「いやいや!あんだけニュースとかになってたじゃん!エグい事件のやつ!!」


「いや、マジで今日のお前なんなん?意味分からんから、そんなニュース聞いた事も無いって!」流石に、ついていけなくなった翔は結城を置いて何処かに去っていった。



「あ、そうか…。」時間を置いて少し冷静になった結城はスマホで検索することを思いついた。


しかし、猟奇殺人鬼Xや前回の夢で調べた被害者について確認しようとしたが、一切ヒットする事はなく呆然とする。

「本当に夢だったのか?」


あまりも凄惨で記憶に残っていたあの事件の数々、そして何よりも自分が経験したあの鋭い痛みと深い恐怖。


忘れたい!しかし、忘れてもいいのだろうかという葛藤の末、人は易しい方に流される生き物なのだとつくづく感じる結城なのであった。


「夢だった!俺は死んでない!テスト前にナーバスだった俺の幻想おつって話!」


頬をバシバシと叩くと痛む頬と冬の冷たい空気に肺が満たされて生きた心地を取り戻していく結城であったーー。


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