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3回目の朝

深く冷たい沼の底に居る。意識ははっきりしているのに全身の感覚が無くただひたすらに気持ちが悪い。手足は動かない。助けを呼ぼうにも声は出ない。これが死…?


怖い怖い怖い怖い怖い!!誰か助けてくれ!


当然助けなど来ない。既に長い時を暗闇で過ごした。とても寂しい。もう何も感じないならせめてこの感覚など無くなってしまえばいいのに…。


そう思いかけていた瞬間、頬に幽かな温かさを感じた。


そして、遠い光の中から僅かに人の声が聴こえた。


結城は心の底から叫んだ。

誰かいる?誰でもいいから助けて!!



「…ろ!起きろ!」


結城の体に跨った翔は結城のほっぺたに両拳をグリグリとしながら鬼の形相になっていた。


「マジで起きろや!完全遅刻だぞ!」


「う、う、ん…」

結城は目を開けたが、全く焦点が定まっていない。


「いや、昨日そんなに飲んでないだろー。って、まさか、市村さんに連行されたパターン?」

翔は呆れた顔でコチラを見ている。


「あれ?俺。生きてる?…翔?」

結城は熱くなってやや腫れた頬をゆっくりと撫でると、今度は両の眼から生暖かな雫が頬に伝うのを感じた。



涙を流す結城を見て驚く翔。

「いゃ、いや!俺そんなに強くやってねーぞっ!」


結城は翔をグイッとはね除けて上体を起こすと心配そうに言った。「翔。右足は大丈夫なのか…?」


「はぁ?寝坊助が寝ぼけた事言ってんなぁ!マジでやべぇぞ。今日の1限目、吉田の物理テストだぞ!」


物理のテスト…。


普段なら反吐が出るはずの日常の言葉に安堵する自分がいた。


これまでが悪夢であり、これからは現実であると自分に言い聞かせるかのように反芻した。


「物理のテスト…?」





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