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2乙目

記憶の答え合わせが終わって尚、ここがどこなのか分からない。いや、拉致されたと言う事だけは理解が出来た。


そしてー。


何よりも目の前で椅子に縛られている男性。


運転席から降りてきたヒゲヅラの男だ。


「おい!あんた!生きてるかっ!?」結城は響きすぎないようにトーンを抑えた声で男に声を掛けた。


男は始め呻くように声を上げたが、やがて呟くように一つの言葉を繰り返す。


「うぅ。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」


「おいっ!ここはどこだ!あんた達はなんなんだよ!」結城は少しトーンを上げて声を上げる。


「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」男は尚も同じ言葉をくりかえす。


ガチャっ。


結城の背後から扉の開く音がした。


「結城くぅ~ん!起きたぁ?」


無機質で気味の悪い合成音声が部屋に響く。

どうやらボイスチェンジャーを使用しているようだ。


「あんたは!?俺をどうするつもりなんだ!!」結城が叫ぶ。


すると同時にヒゲヅラが椅子を激しく揺さぶらせ、部屋に入ってきた人影に懇願する。

「息子は!?妻は!?頼む。俺はどうなってもいいから息子達は逃がしてやってくれ!!」


「うるせぇ、だまれ。」


無機質な音声と共にヒュンヒュンと何かが飛ぶ音が聞こえた。


ダーツの針がヒゲヅラの左腹部と左太ももにプスッと刺さりブルブルと震えたと同時に男の甲高い叫びか部屋に鳴り響く。


「ストラ〜イクッ!って競技が違うかっ!テヘッ!」


部屋に入ってきた人物はひょうきんな口調で場を和まそうとしているようだが、シンと静まり返る部屋の空気に肩をすくませた。


「はぁ、安心しな。あんたは観客。殺しはしないよ。息子も奥さんも無事さ。今回はね。」


「あ、ありがとうございます!ありがとうございます!」男は泣きながら礼を言った。


「但し!絶対声をあげるな!結城くんとの会話を邪魔したらコロース」


もう一本ダーツを投げるとその一本は男の股間に突き刺さった。


「…nn!n!」男は苦痛に悶える。


「よろしい。いい子ちゃんですねー。…さて。」


部屋に入ってきた人物は手をパンッと鳴らし結城に語る。

「ここ!良いところでしょー?このコテージさぁ。そこのおっさんのコテージなんだけどさぁ、何回か使わせてもらってるんだよねぇ。ま、おっさんにとっては始めましてなんだろうけど。」


「俺をどうするつもりなんだ?」結城は震えながら声を捻り出す。


「ウ~ン。恐怖に震える結城くんの声っ!たまらん!」部屋に入ってきた人物は自分の両方の肩を両手で抑え身悶えした。


そして、くるくると回転しながら結城の背後に近づき結城の両肩をパンっと鷲掴みにした。

「単刀直入に聞くよ?君、一回死んだ?」


「えっ、どうして?」

結城は思わず反応してしまった。


「えっ!マジ?嬉しい!」部屋に入ってきた人物は結城の目の前にぴょんと姿を表した。


その姿はハイエースの後部座席から降りてきた狐面の人物であった。


「ははっ!だよねぇ!だって今までに無い行動パターンなんだもん!それに!なにそのスーツ!刺されるの知ってたんでしょう!こことここ!」狐面は夢で刺された場所を手のひらでポンポンと叩いて結城がビクンビクンと反応するのをキャッキャっと楽しんでいた。「まぁ、今回はもっと別なヤリ方考えてたけどね。」


「マジでなんなんだ。くそったれ。」結城は混乱が治まらず悪態をついた。


「ふふふー、それなら、お面とボイチェ用意しといて良かったあ。顔と声知られたらこれからの鬼ごっこ楽しくないもんねぇ!」悪態を無視して結城の膝に乗っかり、結城の両の頬をプニプニする狐面。


ファン、ファーン!


遠くからサイレンの音が聞こえると、結城は希望に目が輝いた。

「助けがきた!?」


「ありゃあ、早いなー。まぁあれだけ派手に暴れればか。警察優秀優秀!」敬礼のマネをしてバッと結城から降りる狐面。


「もう少し楽しみたかったんだけどさぁ。結城くん。次は熱々ラブラブでいっぱい愛してあげるからねぇ〜!」


そう言うと、狐面は体勢を変え結城の背後にくるりと回ってヒゲヅラに向けて指示を出した「おい、おっさん!こっち見ろ!結城くんとメイクラブするところを!」


結城の目の前に出された狐面の両の手はナイフを握っていた。


「くそったれ!なんなんだよ!なんなんだってこれーっ!?」


そして狐面は背後から抱き寄せるようにゆっくりとナイフを結城のみぞおちに差し込んでいった。


ナイフはズルズルと入っていき、鋭い痛みとみぞおち独特の鈍痛を感じた。


「愛してるよ、永遠の13人目!愛しの結城くぅ〜ん!あっ、イクッ!!」狐面は白目を向いて絶頂した。


結城はありとあらゆる気色の悪さに鳥肌がたち、徐々に吐き気が催す。


「がはっ、ごぼっ。」大量の吐血と共に自分の心拍が低下するのを感じる結城。そして、ゆっくりと目を閉じると、全ての感覚が再び闇に溶けていったーー。


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