ささやかな希望
暫くの間、二人は目を合わせた状態で時間が止まっていたが、翔が端を切って言葉を発する。「いやいやいや、M.Yってまさか、ねぇ?」
結城は青ざめた表情で呟く。
「まなぶ(M) ゆうき(Y)…。」
「いやいやいや、だからっ!考えすぎだって!偶然!絶対に無いから!そもそも、お前狙われる様な覚えある?」翔は少し冷静を取り戻し、冷静に問い詰める。
結城は震える声で言い返した。
「覚えなんか、あるわけないだろ。でも……もし偶然じゃなかったら?」
翔は短く息をついた。いつもは軽口を叩く彼も、結城の真剣な様子を見て、それ以上茶化すことができなくなったようだ。
「まあ、もし本当に狙われてるとしたら、何か手を打つべきだよな。でも、具体的に何をすればいいんだ?」
結城は答えられなかった。ただ、自分の胸の奥で警鐘が鳴り響くのを感じていた。夢の中で刺されて死んだ自分、現実に存在する「猟奇殺人鬼X」、そして遺体のそばに残された「M.Y」の文字……すべてが繋がっているような気がしてならなかった。
「警察に行くか?」翔が提案したが、結城は首を横に振った。
「無理だ。こんな話、信じてもらえない。それに、何をどう説明するんだ?『夢の中で殺される未来を見た』って?」
「確かになあ……」翔は腕を組み、考え込んだ。
そのときだった。二人の会話を遮るように教室の扉が勢いよく開き、クラス委員の石田が駆け込んできた。
「お前ら、聞いたか!?」
「何の話だよ?」翔が眉をひそめる。
「連続殺人事件の被害者でバラバラにされてて身元不明だった人いたじゃん?それがさぁ!!ウチらのクラスの宮本だったって判ったんだってよ!!」興奮冷めやらぬ石田は猪のように鼻息を荒くして教卓をバンバンと叩きおろしながら叫んだ。
「宮本って、半年前から登校拒否してたアイツ?」
クラス中がざわめき立つ中、結城と翔は身を固くして呆然と立ち尽くしていた。
「まじかよ。」
翔はあまりにも身近な被害者に戦慄すると共に結城の夢をただの夢として見逃すには危険なのでは?と考えるようになっていた。
「おい、結城。今日の放課後、対策考えるぞ。」
翔が結城にそう言うと、結城は今まで暗かった表情を一変させ歓喜に潤んだ目で翔の両腕を掴んだ。「しょー!!やっぱりお前って奴は頼りになるなぁ!」
翔は照れくさそうに結城の手を振り払い「忘れてるようだけど、次、クソ物理野郎のテストだからな。」
結城の顔は今一度凍りついた
「わすれてた…」