後ろのギタリスト
僕は庭のベンチで眠っていた。とても心地がいい。
日差しの温かみ、青い空の清々しさ、南国を彷彿とさせるギターの音色…
ん?
いったいなぜこんなところでギターの音が聞こえてくるのだろうか。ここは一応住宅街なのに…
何はともあれ、いったんベンチから降りるしかない。よいしょっと…
そして僕は驚いた。僕の後ろにギターを持った男が立っていた。
年齢は…40代後半といったところか。いやいや、今はのん気に年齢のことを考えている場合じゃない。
なぜこんなところに入ってきた。不法侵入じゃないか。
金が欲しいならもっと金持ちの家が近くにあるのに。
というか、ギターを持っている理由がわからない。本当に何なんだ?頭がおかしくなる。
「すみません」
何だっ!?突然喋りだすなよ…
「この辺で殺人事件が起きたと聞いてやってきた警察署の中本と申します。突然ですが、あなたが犯人ですよね?」
「はあ?」つい声が漏れた。僕は犯罪なんてしないし、ましてや殺人なんてするわけがない。しかも、あまりに突然すぎる。
「ああ、やはり、記憶喪失というのは本当だったんですね。」
記憶喪失?ああ、そうか。僕はすべてを思い出す。
「いやあ、ギターを弾いて注意をそらしたのは効果的だったなあ、よし次は…え?」
僕は警官目掛けてシャベルを振り上げた。悪い感触でもなかった。