文化祭0.5 嵐を荒らした男子生徒
続きます。
俺の作戦はこう。
まず「映えたもの」つまり以前流行したもので、考えたところ、タピオカドリンクが有効だということに気づいた。
ひとーつ、安い!タピオカドリンクに入っている黒いつぶつぶ、いわゆるインスタントタピオカは1キログラムあたり1000円ほど。
またドリンクの方もまとめ買いだと割引のものが多く、箱買いで購入すると2ℓ、20本で2500円ほど。一人500ml、500円で提供することを想定している。またドリンクの種類を増やすことも容易である。そしてこれは予算を安くするという要望を満たし、適する。
ふたーつ、応用が効く。俺がタピオカドリンクを選んだ理由はコレに尽きる。どういうことかというと、『コスプレ』である。服装としては女子にはメイド服で、男子には鬼の格好で営業してもらうことを考えている。
なぜか?それは人間は物の性質の差というものに大きく興味をそそられる、または気になるという特性を備えている(と俺は思っている)。
例えば、学校の数学の授業で先生がメイド服を着ながら授業をしてみたと想定してほしい。気にならないわけがない。コレこそ「ギャップの差」が裏で働いているのではないだろうか?
一見関係がなさそうなタピオカドリンクとメイド服または鬼の格好。これらのギャップを利用して、受けを狙い、SNSで拡散してもらい、さらなる客を呼ぶ。
また、これはクラスメートの要望にもあった、業務が容易かつ楽しいという条件を満たすのではないだろうか。というのも、作業が簡単なことを望む生徒は裏方をすればいいし、少し難しいけど楽しいことを望む生徒はコスプレで来客者を楽しませればいいからだ。
ここで、コスプレについて、生徒がそれを着飾っているのを見るにはプラスで100円払ってもらうというシステムを追加する。これによって得られるメリットは二つ。
一つ目、衣装鑑賞代として、ドリンク代とは別に代金を請求することで、ドリンク自体が高いと思わせることを防ぐことができるという利点。
二つ目、自分はドリンクだけを頼んだ客と比べて、より充実したサービスを受けられていると感じさせられる可能性が高まるという利点。それによって、より良い評判が流れ、客の満足度も上がるだろう。
つまるところ、俺が用意したのは以下の作戦。
500円、500mlのタピオカドリンクを提供する。この際、プラスで100円払えば、生徒がコスプレをした状態でタピオカにストローを刺してくれる。いわば、「ベビタッピ」というやつである。
あとはこれをクラスメイトに伝えるだけで俺の仕事は完了するのだが。問題はその伝え方にある。
仮に俺が「みんなー、聞いてくれ」と必死に訴えかけたって、「お前何言ってんねん。雑魚は引っ込んどけ」であっけなく終わりそう……
そこで考えたのが原稿の文章をAIにぶちこんで、AIに読んでもらうという作戦。
なお、これをすれば俺はAIよりも無能であることが証明されてしまう………だめだな。
「うにゅうにゅ」
俺は一人途方に暮れていた。それが伝わったのか、後ろから陽奈が声をかけてくる。
「溯斗君、何か名案を思いついたの?」
「ん?あぁ、まあ。ただ俺のメンタルは豆腐以下、いやもはや豆腐未満と言ってもいい。つまり、俺は自分の意見が人前では言えない」
「ふーん、なるほど」
そうして陽奈は少し思案し、とんでもないことを方にしたのだった。
「みんなー、溯斗君にいい提案があるんだって」
陽奈?!俺を殺す気か?!(もう死んでるかも)
陽奈の方を見ると、親指を立ててニコニコしていた。
「そうなのか有栖川」
「教えてよ、有栖川君」
「ワイの意見と同じ方向性なんやろな?」
「有栖川って誰だっけ?」
「どんな種類なの?」
「費用はどれくらいなんだ?」
さまざまな質問が飛んでくる。てか、なんか悲しい質問もどさくさに紛れて入ってんだけど。泣くよ?
流石に無視するとクラスメイトの全員を敵に回すことになるため、黙ったままではいけない。うぅ…これはやるしかない…!
「あぁ、俺から説明させてくれ。まず何をするのか、だが、、、俺からはタピオカミルクティを提案する。理由は2つ。1つ目に材料費が安価であり、2つ目に他の出し物よりも映えを狙いやすいからだ。具体的には約3500円の材料費で最低でも40000円の利益が見込める。500円で500mlのタピオカミルクティの販売を考えている」
おぉーと言う声が聞こえるが、俺は話す口を止めない。
「さらに、だ。今回、みんなのうちの何人かにはコスプレをしてもらいたい。というのも、『コスプレを着た生徒によるストロー刺し、いわゆるべびたっぴ』というサービスをプラス100円払ってもらうことで体験できるシステムを作りたいからだ。
またシフトに関しては3箇所に別れてほしい。まず裏方の仕事、次に会計の仕事、そして案内・ストロー刺しの仕事。自分に合ったのを選ぶことができるのも利点だ。たとえば簡単な作業を望むのなら、裏方に回ればいいし、思いっきり楽しみたいというのなら、案内やストロー刺しの仕事に回ってくれればいい。
要は適材適所だ。どうだ?ここまでで質問はないか?」
ここまで俺が喋ると教室がざわざわし始める。さっきまで全然方向性が見えなかったのもあってか、俺のプレゼンに対しては半分くらいの人が納得しているように見える。
疑問に思ったことがあったのか、女子のクラスメイトが質問してくる。
「コスプレについてなんだけど、具体的には何を考えているの?」
「一応女子はメイド服、男子は鬼の格好を考えている」
女子がメイド服なのはわかるけど、なぜ男子は鬼の格好なのか?と首をかしげる人が多数のように見えたので、補足しておく。
「人間はその特性としてギャップに惹かれる性質があるんだ。今回は鬼とタピオカということでその性質を存分に生かしている。また映えによるSNSを使った拡散も期待できる」
さきほどの疑問を持っていた生徒たちの頭の上のはてなマークがびっくりマークに変わったように見えた。
「それなら、私のお母さんが衣服関係の仕事をしていて普通の業者に頼むより安く済むかも」
「いいじゃん、タピオカ」
「楽しそうだな」
「やろやろー、タピタピしたーい」
と色々なところから賛成の声が上がる。よしっとこれで俺の案は採用の方向へと………
「ちょっと待てよ。俺は反対だ。タピオカミルクティなんて流行遅れだ。そいつのよりももっと他の物の方
がいいに決まってる!」
だよな。そんな上手く行くはずないか。俺の案に反対の人たちがその意見に同調する。
俺はどうすればいい?何を言うべきだ?このままだと廃止される流れに持ち込まれてしまう。
どうすれば……!
「ははっ、ははははっ。おもしれーな」
一人の男子生徒が高らかに笑い声を上げる。
「は?何笑ってんだよ夏川羽天」
さきほどの主犯格の生徒は意味が分からず困惑しているようだった。
「夏川くん?どうしたの?」
困惑していたのはその生徒だけでなかったようで、一人の女子生徒がその夏川という男を見ていた。
「んあ?俺はただ有栖川の意見がいいと思ってな。やろーぜ、タピオカ」
夏川は対立が激しくなり論争が起こりそうなこの場面でなお、へらっと笑っていた。




