蛇足話 ネクタイってこんなイベントがあるんだね
とりあえず文化祭編の前に蛇足話を入れさせてください(´Д`)
話は定期考査1日目に遡る。朝の登校時間、通学路を歩く。ここ最近ではもう見慣れた通学路だ。すたすたと俺が歩く音が聞こえる。
ローファーを履いているため、すたすたというよりかはカタカタというほうが正しいのかもしれないが。
いつも陽奈と別れる分かれ道のあたりに来ると、見慣れたうちの高校の制服をまとって登校する学生の姿があった。おそらく、ここの近くにある駅で降りて、そこからは徒歩で学校に行く人たちなのだろう。まあ特に顔見知りの奴はいないため、俺には縁のない話なのだが。というか、逆にじろじろ見ていると俺がよくない人みたいになるため、やめておこう、俺の社会的な身の安全のために。
そんなことを考えながら、ぼーっと歩いていると、うしろからカタカタという音がした。俺、もしかして歩くの遅い?後ろの人の邪魔になっていると思い、歩く速さを上げるものの、その音は耳を未だにつんざいている。
あれ?
俺もしかしてつけられているのか?
はっ!
俺もついにストーカーされるほどの有名人に?!
んなわけあるかー!
歩く速さをまた上げてみるものの、依然としてその音は消えなかった。
勇気をだして後ろを振り返る。お化けでも幽霊でもどんと来い!
なんて思っていたが、後ろを振り返り、俺の目がとらえたのは俺の良く知る人物ー池野陽奈であった。ここをこの時間帯で歩いているってことは、前を歩く電車勢と一緒の電車に乗ってきたということなのだろう。うん。これ、俺が陽奈を無視していたって彼女は考えるよね。断じて違うけどな。今日がテストであることを考えると、俺が無視をしたと思わせることは彼女に精神的な不安を与えるのかもしれない。それはよくないな.....
とりあえず、朝の挨拶+無視をしたことの謝罪という形から入ることにする。
「おはよう、陽奈」
「おはよう遡斗君......その.......私、無視されていたんじゃないよね?」
やっぱり不安になっている。彼女は陽気そうに見えて、結構な寂しがり屋で、結構不安になりやすいのである。
「まさかそんなわけあるか。ごめんな。本当に気付いてなかっただけなんだ」
「そっかあ、よかった」
そう言って、今までの不安が消し飛んだように、にぱーっと笑顔を見せる陽奈。テストがあるというのに、嬉しそうな顔をしている。ふつうはテストがあれば、ほかの事象に関わらず、どんよりとした気持ちになるはずなんだけどな。
まあ、そこが彼女のいいところでもあるわけだが。俺は結構そういうところ、好きだけどな。
「あっ、そういえば!」
俺が珍しくネクタイをしているのを指さして、陽奈はスカートのポケットからネクタイを出してくる。
うちの高校は全校生徒がネクタイを入学時に購入させられている。基本的には着用は自由なのだが、定期考査や模試のときには着用が必須となっている。
それを彼女は思い出したのだろう。しかし、ネクタイを手にしたまま、首につけようとはしない。
「どうしたんだ?ネクタイ、つけないのか?」
「うん、、実はつけ方がわからなくって、、、、ネクタイなんてほとんどつけたことないし」
確かにそうかもしれないな。忌まわしき高校入試の時に、男子はネクタイのつけ方を学ぶかもしれないが女子はその手軽さや、つけているときの感じから、リボンのほうを学ぶ人も少なくはないはずだ。
「遡斗君、どうやってやるの?」
「ええっと、まず、襟を立てて、ネクタイを首にかけて、んで二つを交差させるだろう?そのあとに...」
「言葉で言われても分からないよぉ」
彼女はどうやらネクタイをつけるのに苦戦しているようだった。
「遡斗君、やってくれる?」
「え?まあ良いけど」
彼女のネクタイを結ぶように言われた俺は、立ち止まって、彼女の正面に立ち、いじくっていたのだが。
いつも自分でやるのと左右反対だから、わかりづらい!
左右反対で分かりにくいのなら、彼女と同じ方向から結べばいい。そう思った俺は、陽奈の後ろに立ってする。俺と彼女の身長差的に、彼女の頭がちょうど俺の顎くらいの高さに来ていた。
うん、やりやすくなった。
ほんのりと甘い香りが鼻腔をくすぐってくる。....て、余計なことは考えたらだめだ。
手を動かせ、有栖川遡斗。
あとはネクタイの先端を、ここのわっかに通して...
そうしていると、なぜか生温かい視線を通り過ぎる学生の人に向けられていることに俺は気づいた。
というのも俺たちは道路の真ん中の方向を向いていた。
陽奈の顔を後ろから覗くと、こちらもなぜか頬が朱に染まっている。
わけがわからずぽかんとしていると、陽奈とは違う電車で来たのであろう加河に会った。そして、出合い頭に
「おはようさん二人とも。朝からお熱いですなー」
と言われたのだった。それを境に、陽奈の顔が今よりも紅潮し、茹でたタコみたいに真っ赤になっていた。
そこで俺はようやく自分が何をしていたのか気づいてしまった。どうやら俺は気づかぬ間に陽奈を後ろから抱きしめていたようだ。
それに気づかなかった俺が恥ずかしい。
その途端、俺の顔も真っ赤になり、たこさんが2匹できたのだった。
「その、ごめん陽奈...」
「ううん!私こそ、こうなるってあんまり気づけてなかったって言うか...そもそもネクタイを結んでほしいって言ったのは私だから...それに別に嫌じゃない…から……」
いつも目を合わして話してくれる陽奈だが、今回は目が合うたびに逸らされる。
それから、陽奈のネクタイを早急に結び終わり、陽奈から感謝を言われたものの、それから学校につくまで俺と陽奈が言葉を交わすことはなかったのだった。
「にひひ、ふたりとも赤くなって、可愛いー」
加河に小さくそう言われたものの、その文に返事はなかったのだった。
有栖川君の化学の点数が悪かったのはこれが原因なのか?!
いや、ただ教科書を読んでいなかったのでしょう。




