メンタル豆腐を鍛えてみることにしたんだ
続きます
◯有栖川 溯斗
「メンタル豆腐を鍛えるっていっても、どうするんだ?コレをすれば鋼のメンタルになりますっていうのがあるのか?」
「あると思う?」
「ナイデスヨネー」
豆腐を鋼にするのは茨の道だということに気づいて、軽く絶望を覚える。
「やっぱり、修羅場を体験させるのが1番!ってことで今から校長室でなにか問題を起こしてみよう!」
「しれっと俺を退学の末路へと誘おうとするんじゃない」
「ふふっ。冗談だよー」
「ちょっとずつ慣れていくしか道はなさそう」
「何してるんだ?」
なぜか、俺は陽奈につんつんと胴体をつつかれている。
「ん?見ればわかるよねー」
「俺が聞いているのはそうじゃなくて、なぜそんなことをしているのかなんだが、、、」
「多分、これは近からず遠からずなんだけど、男の子って女の子に触られると気持ちが舞上がっちゃう生き物だよねー?」
「まぁ、一般的にはそうなんだろうけど。俺は違うけどな?」
「んでその気持ちをコントロール出来るようになれば少しはメンタルも強くなるんじゃないかと私は思ったんだよー」
「話聞いてた?俺、多分その一般の中に入ってないんだが、、、」
「嘘を付かなくてもいいんだよ?」
「……ついてないぞ?」
「さっきの間こそがそれを証明しているんだよ。それに、前図書委員のときに私を庇って抱きしめたときに溯斗君の心臓の鼓動音すごかったの、私知ってるんだからね?」
どんどん陽奈の笑み———というかニヤニヤに近い——が深まっていく。
「うぐ」
「図星さんだ〜」
「煮干しってうまいよなー、あははっ」
嘘笑いで誤魔化してみる。
「話を逸らさないの。豆腐から脱却したいんでしょ?」
「いや……でも恥ずかしいし、な?」
「照れないでよー」
陽奈はあいかわらずと俺の胴体をつんつんしてくる。
もしや、俺弄ばれているのでは?
というか、よくよく考えればいつものパターンだな。俺の弱い部分を見つけると、俺が恥ずかしくなるようにからかってくる。俺だって、伊達に生きてきたわけじゃない。
ぼっちたるもの、周りに細心の注意を払うべし。
これは長年の経験から学んだことである。
ソースは俺。
あれは中2の夏頃だったか?俺は電車の席に座っていた。たしか、朝の時間帯だったから、結構混んでいたはずだ。んで、俺の前には杖をついて歩くおじいさんがいたんだ。俺はそのことにすぐには気づかず、ずっとスマホの画面を見ていた。しばらくして、なぜかまわりの視線がこちらに向いていることに気づいた。その意味を察した俺は、なにも言わず席をたったのだった———
ん?いいやつじゃん(自画自賛)。
ぼっちっていい奴なんだな。そうだ?!みんな、ぼっちになろう!そしたら、世界は優しさに溢れる!みんな、毎日楽しくなる!
って、何アホらしいことを。
てことで反逆開始だぁー!
「陽奈、そんなにして俺に触れたいのか?」
「ふぇ?!別にそうじゃないもん!」
はい、引っかかったー。陽奈は結構押しに弱い。それは俺がコイツと出会ってから1ヶ月で学んだことの一つである。
「私はただ溯斗君がメンタルを強くしたいっていうから、手伝おうかなって思っただけで……」
「そっかそっか、でも陽奈にばっかり手伝ってもらうのも悪いからなー。あ!そーだー、最近友達ができたから、その人に手伝ってもらおうかなー」
嘘である。女の子の友達というか男友達さえ、できていない。ん?待てよ?その友達=陽奈とすれば嘘ではないな。
「え?その人って男の子?」
「女の子だが?」
まぁ、その女の子とは陽奈のことなんだが。
その言葉とともに頬を膨らませていく陽奈。何か不満があるのかもしれない。
それはそうと一応嘘は言ってない。
「〜〜!溯斗君、それはやめといた方がいいんじゃない?」
何故か陽奈の顔からは焦りのようなものが窺える。
「なにかあるのか?」
「何もないけど、でもその場合はその子に迷惑じゃない?」
暗に俺、ディスられてない?
「もう!わかった。んじゃあ、さっきのは認めたってことでいいから、その子には手伝ってもらわないで!」
「は、はぁー」
俺は陽奈が何を言っているのかが一瞬理解できず、困惑する。なぜそんなにムキになっているのだろう。
その場合、俺は陽奈にメンタル強化を手伝ってもらえないってことになるよな?いやまぁ、別にそこまで変わらないから、いいけど。
「じゃあ、この件はなかったってことで」
「え?」
「え?っじゃねーよ。そもそも付き合ってない男女がこう言うことをするのはだな……不健全っていうか……そのー……とにかくなしだな」
「わ……わかった」
「んじゃあ、続きを再開するぞ」
そうして、また歴史の一問一答は再開した。
陽奈から心なしか寂寞を感じたのは気のせいだろうか?




