ともだちep.3
続きます。
これはep.3です。ep.4を読みたい方は目次のep.4と書かれたものを選んでください。
次の日、学校につき、靴を履き替えるところで
「あ、おはよう。有栖川君」
と声を掛けられる。
誰だろう、俺に声をかけるなんて、物好きな奴もいるんもんだなと思い、声がした方へ体を向ける。
黒髪の日本人らしさを感じさせる姿勢の良い女の子、池野だった。
俺は返事をする。
「中学のころはあんまり話しかけられなかったから、俺に話しかける奴はやばいやつかと思ったよ。」
「誰がやばいやつって?」
池野は満面の笑みを浮かべてこちらを見る。こういうときって、内心割と怒ってたりするんだよな。
ソースは俺。中学のころ、委員会で同じになった女子と委員会の仕事した時があって、その時、ファイルが必要だったから、その女子に
「ファイルとってきてくれない?」
っていわれたの。俺、耳がわるくてさー、そいつが
「タイル、放ってきてくれない?」
っていったんだとおもってさ、何言ってんだこいつ、タイルは投げるもんじゃねーぞと思ったんだ。
でもさすがに聞き間違いかなーと思うじゃん。だからさ、
「何?タイルってなげれんの?多分聞き間違いだから、もう一回言ってくれない?」
って言ったらさ、満面の笑みで
「は?」
っていわれたの。言葉と表情が一致していなかったんだよね。これぜったい怒っているだろって思ったんだ。
んで、今の状況がこれ。
「誰がやばいやつって?」
池野は満面の笑みを浮かべてこちらを見ている。こういうときは素直に謝るのが一番だということを俺は知っている。俺は二の前は踏まないぞ。
よって、
「ごめんて。中学のころ、ボッチだったから、話しかけてくるのは告白ゲームをしてた女子とか面倒ごとを押し付けてくる先生だけだったんだ。だから、お前を侮辱する目的で言ったんじゃない。」
「ならいいの。でも、ぼっちか。うーん。」
と池野はすこしつぶやいてから、
「じゃあわたしが友達になるよ。これで、有栖川君はボッチ卒業だね。」
と言ってくれた。
え、ぼっちってこんなに簡単に卒業できるのか?おれは疑問に思い、池野に尋ねる。
「友達の定義とは?俺、こんな簡単にぼっち卒業しちゃっていいのか?」
「なんか、哲学みたいな話だね。うーん、いいんじゃないかな。と言っても私がそれを決めるべきじゃないけど。あそうだ!」
と、ひらめいたように池野は言う。
「有栖川君がこれから、友達をつくっていく過程でその答えを見つければいいんじゃないかな。」
「そりゃあ、名案だ。」
そんな会話をしながら、俺たちは自分たちの教室へと向かうのだった。