勉強会2
続きます
俺たち以外誰もいない図書室。どちらもしゃべらなければ、外から部活の喧騒が小さくだが聞こえてくる。
「ここの式はどうすると思う?」
「うーんと、まずはxが0のときに式が成り立つかを確認する?」
「そうそう、そうだ。やればできるじゃん、陽奈」
「えへへ」
陽奈は褒められて、嬉しそうな顔でこちらを見てくる。
こいつは褒められて伸びるタイプだと思っていたが、どうやら正解だったようだ。
褒められて伸びるのは、俺が考えるに、人間は感情が伴えば、記憶に残りやすいからだと考える。
そんなどうでもよいことを考えながら、俺は次々と方針が違う問題を解説していくのだった。
「ふう、やっとほとんどがわかった」
悪戦苦闘の1時間の末、やっと陽奈がほとんどの問題の本質を理解した。
陽奈は疲れていそうな顔をしているが、加えて問題を理解できて満足そうな顔もしているように見える。
「遡斗先生、ありがとう。やっとわかったよー」
なぜか呼び名が先生呼びになっているが、まあ悪い気はしない。
陽奈に勉強を教えていてわかったことが2つ。
1つ目、陽奈は問題の本質を理解するのに多くの時間がかけるが、理解さえしてしまえばあとは問題がすらすらと解けるようになるということ。やはり、基礎固めは大切なんだなぁと実感する。
2つ目は答えが誤答になるとき、原因はだいたいが計算ミスであるということだ。人のことを言えたものではないが、計算ミスはやっぱり改善すべきだと思ってしまう。
そんなことを考えていると、下校を知らせるチャイムが鳴り響いた。
図書室が静かだったからだろうか、やけに大きな音だと思ってしまう。
窓のほうを見ると、さっきまでとは異なり、オレンジ色の光が差し込んでいた。
「よし、帰るか」
そうして俺たちはまた一緒に帰ることにしたのだった。
帰り道。影法師が2人並んでいた。
「遡斗君は定期試験対策は順調?」
「いや、社会とかは全くノータッチだから、割とまずい」
「そっか」
「とかいう陽奈はどうなんだよ?」
「やばくなくはなくはなくはない」
「どっちだよ?!」
「あっはは」
「まあ、それなりに頑張るつもりだよー」
そう言って、陽奈はすこし思案するように顎に手を置く。
「あっ、遡斗君がご褒美に何かしてくれるなら、私頑張れるかも!」
陽奈が期待したような目でこちらを見つめてくる。
それ、俺がすげえ負担するやつだよね?!んまぁ、一応話だけは聞いておこう。
「具体的には?」
「うーん、考え中だけど、休みの日に一緒にお買い物したり、あとはおいしいスイーツを食べたりとか?」
今回は俺が当初思っていたものではなく、ついていくだけという簡単なものだった。
それぐらいのことでこいつのやる気が上がるなら良いだろう。
そう思い、俺は陽奈に承諾の返事をする。
「そうだな。んじゃあ、こうしよう。全教科で75点以上を取ること。これが条件だ」
「わかった」
「ちなみに1点たりとも譲らないぞ?」
「うん。わかってるよー」
そうして、俺たちは約束を交わしたのだった。




