図書室にて
続きます
遠足から一日、朝のホームルームである。教師からこんな連絡があった。
「中間考査が2週間後に行われるよー。みんなちゃーんと対策するんだよ」
とのこと。
今日が5月の第2週だから、だいたい6月の頭か、5月の終わりくらいか。
中学のころは一週間前で全然間に合っていたんだけど、高校のテストとなったらねぇ。
まあとりあえず英語と数学を中心に進めていくか。社会とかの暗記系は一週間あれば十分だろうし。
というか、うちの高校、忘れてたけど結構の進学校なんだった。進学校だったら、テストがむずいのは当たり前か。うぅー、先が思いやられる。
そんなことを考えているとホームルームの終わりを告げるチャイムが鳴ったのだった。
放課後、今日は火曜日なのだが、俺は図書室に行くことにした。もちろん、仕事のためではない。では何のためかというと、勉強するためだ。別に家で勉強してもいいのだが、その場合読書したい衝動に負ける未来が描けた。つまり、誘惑物に負けないための行動である。
図書室につくとあたりを見渡してみる。
誰もいない。
俺だけ?来るのが早すぎたのだろうか?まあいいや。
沈黙が続いているこの部屋で俺は準備をしてペンを走らせていくのだった。
「お....さく...と..ん」
「おーい、遡斗君」
ん?なんか俺の名前が呼ばれているような気がする。気のせいか。
俺はペンを走らせ続ける。
ここの式をこっちに変形して、あとはこの式を解いて....
「ねえってば」
「聞いてる?」
ん?もう一人のさくとめちゃくちゃ無視するじゃん。良くないぞ。そんなことを思いながら、一応周りを確認してみると、隣で少し涙目になってこちらを不安そうな目でこちらを見つめていたのは教室で前の席の池野陽奈さんでした☆
そして怒られる未来が見えました☆
というかよく考えたら図書室には俺しかいないんだった。
「私は.....遡斗君に嫌われたんじゃ....ないかって....えええええーん」
そう言って涙を流す陽奈。予想とは真反対のことが今起きている。
とりあえずここは図書室なのでマナーは守っていただきたい。
「しー!ここ図書室!」
いやまぁ、俺と陽奈以外だれもいないからいいんだけど。
ちなみに本のバーコードをピッてする人もなぜかいない。俺が勉強を始めてから体感30分くらいなので忘れているか、めんどくさくて帰ったかだ。圧倒的前者だろうけど。
てそうじゃなくて。
俺は謝罪を言う。
「ごめん陽奈。俺、集中してたし、それに俺のことだとは思わなかったんだ」
陽奈が首をかしげたので補足しておく。
「俺、中学のころはぼっちだったから人に下の名前を呼ばれるのが少なくて。最近は陽奈が呼んでくれてるけど、まだ慣れてないっていうか....」
俺あるあるである。名前を呼ばれても返事をしない。2回目以降はさすがにするけど。というのも、俺のことを呼んでいなかった場合、周りからこいつ自意識過剰なのかなって思われそうで怖いからである。我ながら、幼稚な自尊心である。
「私のこと、嫌いになってない?」
俺を見つめるその目は何かを恐れているように見えて、一匹で迷った心細いような小鹿を連想させる。
「あぁ、嫌いになんてなるわけないだろ。お前は俺の唯一の友達なんだから」
「よかったぁ」
またしても、小さな涙を流す陽奈。今度は顔から安堵が伺える。
というか、そんな俺に嫌われたくなかったのだろうか?
まぁ、何はともあれ泣き止んでくれてよかったと心のなかで思うのだった。




