遠足4~ありがとう編~
続きます
目を覚ますと設営されたテントの中の簡易的なベットの上にいた。
周りには誰もいない。
記憶が断片化している。または記憶が飛んでいるといってもよい。
んん、私、どうしたんだっけ?そう思い、過去を顧みる。遠足でバーベキューをみんなとして、それからみんなで遊ぼうってなって......そこまでしてようやく思い出す。
私、お母さんにあれだけ体を動かしすぎないようにいわれていたのに、鬼ごっこで走り回ってしまって、挙句の果てには倒れてしまったんだ。
ん?ならば、ひとつ疑問が浮かぶ。どうして私はここにいるのだろうか?
救急車を呼ぶにはこの森は不便すぎだ。というのも、そもそも私たちはここに来るのにまず20分くらい、森の中の道路をバスで移動しさらにそこから5分ほど階段を上ったところにあるからだ。
嘉ちゃんや遡斗君なら私をいち早く助けてくれようとすると思った。
そこで一つの考えに至る。班の誰かが私を背負うかしてここに連れてきてくれたんじゃないかな。
まただ。また、私はみんなに迷惑をかけてしまった。
みんなが楽しみにしていたであろうこの遠足を私が台無しにしてしまったんだ。
あとのことを考えずに行動した後悔と自分の体の弱さに向き合おうとしなかった自分に対する怨みの気持ちでいっぱいになる。
どうしてか血の味がする。どうやら、無意識のうちに唇をかんでいたようだった。
私なんて最初からいなかったほうが....
そんな時だった。
テントのカーテンのようなところから顔を出したのは嘉ちゃん、羽田君、そして遡斗君の3人だった。
「陽奈ちゃん、大丈夫?」
みんな、私のことを怒って責めるとばかり思っていた。
でも、現実で私の耳に届いたのは私を罵倒する言葉じゃなくて、そんな温かい第一声だった。
「な....んで.....」
気づけば、頬には涙が伝っていた。
「ほら、やっぱり。陽奈ちゃんは自分を責めてた。有栖川君の予感が的中したね」
私は遡斗君が私のことを見てくれていたのがうれしかった。
「あぁ、そうだな」
そう返答してから、遡斗君はこちらを真剣なまなざしで見て言う。
「陽奈、俺はお前と一緒にいて何かをしてさ、楽しかったんだ。遠足に行く前なんて、だるいくらいにしか思っていなかったんだのにな.....だからさ、その....いてくれてありがとう」
私は自分には価値がないと思っていた。
それどころか、私は一生誰かに迷惑をかけながら生きていく迷惑な存在だと思っていた。
でも、いま、遡斗君は私にいてくれてありがとうって....一緒にいてて楽しいって....そう言ってくれた。
私は今、初めて、存在していいんだって言われたような気がして、それが嬉しくて嬉しくて。
「あああああああああああああぁ」
気づけば、私はさっきよりも大粒の涙を流しながら泣いていた。子供みたいに泣いた。
こちらこそありがとう、遡斗君、それからみんな。




