遠足2~やっと炭に火が付きました編~
続きます
「ふぅー、やっとついた」
苦労の末、1時間ほどかけて、ついに炭に火が付いたのだった。もう作業としてはこれだけでおなかがいっぱいなのだが、物理的にはお腹がすいている。ぐぅー、と俺のお腹からまるで猛獣が叫びをあげているような音がする。
「さあ、食べよう!」
加河がそう言うとともに具材をバーベキューコンロの網に並べていく。それはいろいろな野菜や肉が並んでいて、まるで食材のサラダボウルだった。
トングが2つ用意されていたため、2人ずつ代わりながら肉や野菜を裏返していく。
「おぉー、この肉、焼き色がついてきたね。いけるんじゃない?」
陽奈がそう言って、牛肉を指さす。まあ、牛なら最悪中が焼けていなくとも食べられるか。されど、さすがに最初に食べるのは気が引けるため、お箸をのばそうとはしないが。
「食べたい人ー」
陽奈が元気よく質問するが、みんな俺と同じ考えを持っていたのか、誰も返事しなかった。うんうん、こういうときって、最初に食べづらいよな。その気持ちは痛いほどよくわかる。
ソースは俺。中学のころ、学校の遠足で同じようにバーベキューに行ったんだ。んで、焼きあがったお肉を俺が最初に取ろうとしたらね、班の人に「有栖川、勝手に肉を食うな」って言われたんだよ。もうその日は遠足から帰ったら、布団の中でひとしきり泣いたもんだ。
※俺のメンタルは豆腐です。
過去を思い出しているばかりではいけないと思い、俺は最初に食べても咎められない雰囲気を作ろうとする。
「最初に食べても、今回は誰も咎めないぞ。多分」
その言葉に疑問を抱いたもだろうか、加河は首を傾げ、質問してくる。
「ん?有栖川君、もしかしてそういう経験があったり?」うぐ、この人鋭いな。
「あぁ、まあな」
そして先ほどのことを話すと加河が腹を抱えて爆笑する。そんなに面白かったのかね。
「ドンマイ、有栖川君。人生のなかではそういうこともあるって」
一応慰められもする。というか、加河は人生2周目なのだろうか。人生を悟ったような口ぶりだ。
「加河は転生者なのか?」
そうではないと思いつつも、尋ねてみる。
「ははははっ」
「遡斗君、面白いこと言うね」
陽奈と加河が、そしてふだん笑わなさそうな羽田までもが笑っていた。というか、加河に関しては笑いすぎてお腹を痛そうに抱えている。てな感じで雰囲気が緩み、いろいろ焼けてきたところで俺たちは食べ始めるのだった。




