遠足1
続きます
目的地に着くと、まずはバーベキューの準備から始まった。具材は、牛肉ととうもろこし、たまねぎ、ソーセージ、あとマシュマロなんかもある。誰やねんスモアしようとしているやつ、なんて思ってしまった。俺にも分けてください。スモアとは焼いたマシュマロとチョコレートの層を2枚のグラハムクラッカーで挟んだもので、アメリカやカナダのデザートである。
ちなみにここは森の中で広々と使えるらしく、周りには俺たち以外誰もいない。他班との間隔は広めなのだろう。
「溯斗君、何食べたい?」
「そうだな。俺はとうもろこしかな」
「とうもろこしかー。私、つぶつぶが弾ける感じの食感がちょっと苦手かなー」
「まぁ、確かに賛否両論ある野菜だもんな」
「うん」
「そういえば、服そっちにしたんだな」
いま、陽奈が着ているのはショートパンツとニットベストの方だ。
「うん、今日はこっちの気分だったんだ。もしかして、もうひとつのほうがよかった?」
「いや、多分どっちだって似合うと思うけど」
「けど?」
「今はまだ春なわけでその…」
俺は途中で言うのを躊躇した。というのも、気にしすぎかもしれないと思ったからだ。これを言ったから嫌われたみたいになるのは避けたい。
「その?」
「やっぱりいいや」
「だめ。気になるから、最後まで言って」
「ハイ。春なのに半袖のズボンみたいなの着て、寒くないのかなと思いまして」
「ぷはっ。ははは」
そして、陽奈にめちゃくちゃ笑われるのだった。だから嫌だったんだよ。心のなかでそうつぶやく。いやまあ、これに関しては俺が完全に悪いから、何とも言えないんだけどね?そしてまだ陽奈は追い打ちをかけてくる。
「へえ、遡斗くん、私の足を見てたんだ。私の生足はどんな感じだった?」
にやにやといった表情でこちらを見つめてくる。こちらの反応を見て、楽しんでいるようだった。一度は何かを言い返そうかと思ったが、これでセクハラになったら完全に俺が黒であり、退学の可能性もなくはない。考えすぎかもしれないが、ここは謝っておくほうがいいだろう。
「その、ごめん」
「いいよ、遡斗くんも男の子なんだね」
そう言われると、恥ずかしいな。そんなことを考えていると、少し遠くから俺たちを呼ぶ声。
「二人とも手伝ってー」
察するに、バーベキューの下準備中なのだろう。俺たちは声の方向へと向かうことにしたのだった。
「んんー、火がつかない」
俺たち4人はバーベキューコンロを囲みながら、嘆いている。今は炭に火をつけるためにいろいろ試しているんだが、これまた難しく苦戦している。
幸い、班でバーベキューをする時間は予定では3時間あるため、急ぐ必要はないようだ。
「キャンプ経験者の人、手上げてー」
加河がそう言うが、声は虚しく森へと消えていく。といっても、ホラー映画に出てくるような森ではなく、太陽の光が木の葉の隙間から注いでいて幻想的な森なのだが。
「ううー、おうちのガスコンロにいかに頼っていたのかがわかる」
「だねー」
加河の発言に対して陽奈がそう答える。
というか、全然羽田がしゃべらないんだが。これじゃあ本来の遠足の意義である仲を深めるというものが達成されなくなってしまう。これはよろしくない、そう考えた俺は羽田に質問する。
「羽田は野菜なら何が好きなんだ?」
その瞬間、女子2人の注目をなぜか集めてしまう。もしかしたら、俺と同じように気にしていたが、急に話しかけるのも違うと考えたのかもしれない。
「ええっと、スイカかな」
???
返事が返ってきて、俺はスイカが野菜であるという事実を数秒間かけて脳味噌から引っ張り出してくるのだった。




