かくしごと
続きます
私は生まれつきで心臓が弱かった。小学校のころ、みんなが外で楽しそうに遊んでいるのを教室の窓から眺めてはいいなぁーって何回呟いたのだろうか。私は外で遊べないから、仕方なく本を読んで時間を潰した。
「おいおいー、お前何で一緒に遊ばないわけ?」
小学校のときに、クラスメートの男の子からそう言われた。私だってそうしたくてそうしているわけではないのに。
「心臓が弱いから、外で遊ぶのはお母さんにだめって言われているんだよ」
「言われているからしないんじゃなくて、心臓が壊れちゃうのが怖いだけなんじゃないの〜」
「っ!」
私だって……私だって……
そうは思ったものの言葉は心のうちに留めておくことにした。
それとは裏腹に頬をつたうものがあった。たぶん、悔しかったんだと思う。こんな体が。男の子に何も言い返せない私が。
「やーい、嘘泣きか?」
それを境にとめどなく溢れる涙。その涙にはいろいろな感情が含まれていた。
それから、次の日に学校にくると、みんなが腫れ物に触れるみたいに優しくしてくれた。でも、私はみんなが私に向ける目が前とは違うことに気づいた。可哀想なものを見るような、そんな目だった。
私はそれからそんな目を2度と向けられないように、心臓が弱いことを隠し続けてきた。
本は私の心強い友達だった。昔はそんなことなかったけど、いま本がなくて心臓が治っている世界と本はあるけど心臓は弱いままの世界、どちらを選ぶかって訊かれたら、後者を選ぶと思う。だって、本を通して私はいろんなことを知れて、自分の中にあった私の知らない感情を知れて、本を媒介としていろんな友達に出会うことだってできたから。
今日は5月2日。ゴールデンウィーク中日であるとともに、遠足の日である。私はこの日がかけがえのない1日になることを心の底から願っていた。
時刻的にはまだ朝の5時で家を出るのが7時30分くらいだから、全然時間がある。ワクワクしすぎかなーなんて思うけど、思えば私の寿命多分人よりも短いんだよねー。今のうちにいっぱい楽しんでおかないとあとで後悔する気がする。ということで、私の心配(?)は杞憂に終わったのだった。




