お出かけ2〜電車編〜
続きます
電車内にて。土曜日だからか満員電車ほどではないが人が多い。俺は窓際の方に立ち、陽奈は俺の前に立つ。
「溯斗君って結構背高いよねー」
そう言われる。いやまあ、平均くらいなんだが。
「ん?そうか?男子の平均くらいよりちょい大きめくらいだと思うが?」
「確かにそうかも」
「んー?陽奈が見えないなー」
そう言って俺は遠くを眺めるように、手をおでこにかざす仕草をする。からかわれてばかりいるのでたまにはいいだろう。
「私は平均だよ!」
そう言って陽奈は頬を膨らませる。可愛い。
「はは。そうだな。ごめんごめん」
めちゃくちゃ棒読みで言ってみる。こう言う時は冷静でいる奴が勝つらしい。
「だから私は、、、きゃ」
え?ええええええ!?
電車が突然揺れて陽奈はまるで平衡感覚を失ったようにバランスを崩す。よって、その前に立っている俺はもちろん陽奈を受け止めることになる。ふんわりと甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
密着状態とはまさにこのことか。陽奈は両手を俺の胴体にやむおえず置いている。
「大丈夫か?」
俺は平然を装いそう言う。心臓がバクバク音を立てていた。期せずにこちらに寄りかかって、身長差的に陽奈が俺に抱きついたまま、下から上目遣いで見上げる形となっている。紅潮した顔がこちらを向いている。めちゃくちゃ気忙しい。たっぷり数秒間お互いの目を見つめ合った後、気まずいと思ったのかすぐ逸らされる。俺は慌てて陽奈の両肩に優しく手を置き、陽奈を引き剥がす。というか、さっき陽奈が片手を俺の心臓の近くに置いていたから俺がとても動揺しているのを知られたりしませんように。
「その……ごめん」
目を逸らされたままそう言われる。ちなみに顔はまだ火照っており、目は少し潤っていた。
いや本当だよ。陰キャな俺はただでさえ女の子と密着状態になったことなんかないのに。今ので寿命が5年くらい擦り減った気がする。
まだ心臓がバクバク音を立てていて、うるさい。
「べ、別に構わない。というか今のは陽奈は悪くない」
俺はまたしても動揺を悟られないように内面とは裏腹に平然とした態度でそう言う。
それから駅に着くまで沈黙が続くのだった。




