はじまりep.1
本日から投稿させて頂きます。よろしくお願い致します。
ポカポカとした日差しがさす朝、俺は桜並木の歩道を歩く。
「今日はいい天気だな。晴れて本当によかった。縁起がいいな!あはははっ」
と大きな声で話しかけるのは俺の父悠斗だ。
母は2年前に他界した。俺は母さんが大好きだった。父はそれを知っていたので俺が大きなショックを受けるんじゃないかと心配し、まだ真相のすべてを話していない。まあ、それは俺のためなので俺も自分からは聞こうとしない。あくまで父さんが言ってくれるのを待っている。
「着いたな。お前はここで3年間を過ごすのか。うぅ、考えただけで涙が、、、」
「父さん、泣くの早すぎだぞー。その涙は3年後にとっとけー」
「なんか、棒読みじゃない?父悲しい」
とまあ、こんな感じで喋っている間に着いた目的地。
紗耶高等学校。家から近いからここにしたんだが、それなりの進学校ではあるらしい。
今日はクラス発表→ホームルーム→入学式→各自解散という流れで予定が進むようだ。
父さんとは別れ俺はクラス発表を見に行くことに。掲示板に張り出された紙を見る。こういう時、なんかドキドキするよね、なんて考えたり、というか周りザワザワしててうるせーな。
「うん、わかってたけど、誰も知らない」
自分は2組だった。とりあえず、2組の教室へ向かう。
入学式は後で組ごとに整列して、会場に入場するという形のようだ。
時間になり、ホームルームが始まった。
「じゃあ、みんな席に着いて。入学式の説明をするよ。っと、その前に私の自己紹介だった。今日から1年2組を担当することになった高倉富実と言います。担当教科は現代国語だよー。みんな、1年間よろしくー」
なんか、この人クラスメイトとの距離感近くない?
そして先生の自己紹介が終わると、入学式の説明で、座席の確認や並び順の確認をした後、提出物を出したり、逆に資料や校舎案内の紙などが配られたりした。
「よーし、やることは終わったし、自己紹介タイムだ。」
やだやだやだ。俺は心の中で駄々をこねる。こんなことして何の意味が、、俺の苗字は「有栖川」最初に呼ばれることが多い。
「多分顔知らない人がほとんどだから、名前と出身中学、あと趣味とか得意なこととか話していこう。じゃあ、名前の早い順に言ってもらおっかなー。じゃあ、そこの男の子!」
彼女が指したのは俺だ。デスヨネー。俺は有栖川溯斗と言う名前なので、こういうときはだいたい最初に呼ばれる。この制度、不公平だから、やめにしない?と訴えかけたいのだが云々かんぬん....(以下省略)
「えー、俺は有栖川溯斗と言います。出身中学は苫山中学です。趣味は読書です。得意なことはありません。1年間よろしくお願いします。」
「おおー、苫山中学ってこの辺りだったよね。確か、このクラスにも2人苫山の人いたっけ。岡崎くんと野村さんだったけ」
俺は少し驚いた。同じ中学の人がいたとは、、
「ふたりともー、そうだよねー?」
その2人といえば、明らかに目を逸らしていた。ちょっと待ってくれ、まさか同じ中学だったのに、顔覚えられていないのか?嘘だろ...
軽く絶望感を覚える。
先生は生徒の様子を見たのか、俺に質問してくる。
「ええーと、本はどんなのを読むの?」
こういう時、答えに迷う時ってあると思う。実際、今の俺がそう。みんながあまり知らない本を言うのか、有名どころを言うのか。迷った末に、俺は正直に答えることにした。
「俺が好きな本は、『茶色の服の男』という本です。確か、アガサ・クリスティが書いた小説です。」
俺がそう言って、周囲の反応を探ろうと、周りを見るも、先生も含め半数以上の生徒が怪訝そうな顔をしていた。
「へ、へぇー、そんな小説があったんだ。知らなかった。」
といい、先生は次の人に自己紹介をお願いするのだった。
「出席番号2番、池野陽奈です。出身中学は、ここから電車で20分ぐらいのところにある南総中学です。趣味はさっきの人と同じ読書で、特技は棚の整理とかで.....」
周りからはクスクスと楽しそうに笑う声が聞こえて、
俺はこの人の話を聞き流しながら、こういう人は友達たくさんできて、反対に、陰気な俺は3年間ぼっちなんだろうなーなんて他人事のように思うのだった。