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帰り道

続きます。

それから、仕事が終わり、池野と二人で帰ることに。


「お疲れさまー、来週もよろしくね。」


先生にそう言われて、俺たちは図書室を後にする。


そして、一階に降りて、靴を履き替え、外に出る。


西日が差している。4月だから、だいたい5時半ぐらいといったところか。そんなことを思っていると、池野が声をかけてくる。


「知らない本がいっぱいあったね。私は結構読むほうなんだけどな。」


すこししょんぼりしているように見えた。


「同感だ」


俺はそう返事する。


「というか、本が倒れた時、助けようとしてくれて、ありがとね。まあ、不発に終わったけど。」


そう言って、なぜかジト目でこちらを向く彼女。俺はあの瞬間を思い出して、顔が赤くなる。


「仕方ないだろ。あの時は助けるのに必死だったんだし。」

「あーれ、有栖川君顔赤いよー。どうしちゃったの?」


こいつ、からかってっきてんな。俺の中には信念的なものが存在する。その一つとして、やったら少しはやり返すというものがある。よって、俺は恥ずかしがるばかりではなく、反撃に転ずる。


「まあ、池野のことは大切に思っているし。」


真顔で言ってみる。これ、自分で言うのもなんだが、結構恥ずかしい。まぁ、もちろん冗談だけど。恥は捨てたはずなんだけどな。


「へえ、そうなんだ」


そうつぶやいて、顔を真っ赤にしながら、俯く池野。


「えへへ、うれしい」


本心なのか、からかいなのかわからないが、そんなことを言ってくる。


「でも、私も有栖川君のことを大切に思っているよ。」


これにはさすがの俺もびっくりする。なんせ、俺は今までぼっちだった身だ。他人、ましてや、女の子からそんなことを言われたことはない。


つまり、そういうことを言われることに耐性がない。


したがって、今度は俺が顔を真っ赤にして俯いていた。


池野がそれを見て、追い打ちをかけるようにこちらに近づいて耳元で囁いてくる。


「というか、私を抱きしめたとき、どんな感じだった?」


う。ほんのりといい香りがしたなんて、お世辞にも言えない。


というか、今すごい顔赤いから、言ったら本当に信じられて、ドン引きされそうで怖い。したがって、無難な答えで納得させようとする。


「大きめのぬいぐるみを抱きしめているような感じだった。」

「ふーん、そっかあ」


目の前に分かれ道が見える。右のほうが俺の帰路で、確か左は最寄り駅につながるみちだったっけ。


「わたしがぬいぐるみってことは私は頼りがいがあるってこと?」

唐突な質問をしてくる。俺の返事を何かの比喩だと思ったのだろうか。俺にもその答えはわからない。沈黙を返す。


「まあいいや。いざとなったら、私もできるだけ頼ってほしいな。じゃあ、私、こっちだから。ばいばい」


そう言って、左側の通路を走って、遠ざかる池野を俺は呆然と眺めることしかできなかった。

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