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感謝と怒り

続きます。

今日は図書委員の仕事があるらしい。


私、池野陽奈はこの日を楽しみにしていた。それは、この学校にどんな本があるのかという好奇心から、そして、友人である有栖川くんと本の話題で盛り上がる機会がついに来たというわくわく感からだった。


たぶん、彼は本の話題を出せば話に乗ってくれるだろう。しかし、普段の会話でそれをするのはもったいないと思った。というのも、私がそれをし始めたら、毎日、本の話題しか話さなくなって、有栖川君がうんざりしてしまうのが目に見えているからだ。だから、私は有栖川君と本の会話をするのは図書委員の仕事がある水曜日だけにしようと思った.




帰りのホームルームが終わり、有栖川君と一緒に図書室に行こうとする。しかし、後ろの席を振り返っても、いなかった。慌てて、周囲を見渡すと教室から出る彼の姿を目撃した。私は周りに注意を向けながらも、彼めがけて一直線に走っていく。いやまあ、廊下は歩くものなんだけど。良い子はマネしちゃだめだよ。


「おーい、待ってよー」


そんな言葉を発しながら、彼に近づいていく。やがて追いつき、


「こういうのは、普通一緒に行くものなのに。有栖川君ひどいよー」


そんな不満を口にしながら、横並びになって歩く。


「一つ、友達の話をしよう。決して、俺の話ではないからな。」


そうして、聞かされた中学のころの有栖川君の話。私はなぜ彼の可愛いらしい側面を見たような気がした。


まあ、私が有栖川君の立場だったら、その日中は泣いていただろうから、有栖川君に同情しておいた。


「それはご愁傷様だねー。まあ、今は今、過去は過去だよ」

「いや、だから、俺のことじゃなくてですね、、」

「わかってるよー」

私はわざとらしく気づいていないふりをするのだった。



図書室につくと、先生に書庫に案内されて、説明を受ける。今日はどうやら書庫の整理をする仕事があるらしい。ということは図書室にないような古い本もたくさん漁れるかな。そんなことを思っていたら、やがて先生の説明が終わり、手を付けることに。


どこからやろうかなと思って、有栖川君に聞く。

すると、

「じゃあ、俺は棚の整理をするから、池野はそこの積んでいる本をジャンルごとに分けていってくれ。」

有栖川君が積まれに積まれまくった本を指しながら、そう言ってくれた。

私は地べたに座り、作業をする。結構、本の高さ、高いなー。落ちてきたら、どうしよう。まあ、何とかなるか。私は楽観的に考えた。


作業を続けると、推理ものの小説が出てきた。これ、ちょっと古いやつだけど、有栖川君は知っているのかな。好奇心が私に押し寄せてくる。これは有栖川君がどこまで話題についていけるかを試すチャンスだ。


そう思って、その本を有栖川君に見せようとして、彼のほうを本を持ちながら、向こうとして、何かと何かがあたって、鈍い音がする。


あ、やばい。本が揺れてる。こっちに倒れてくる!


私は俊敏な動きができるわけじゃない。ほんとにやばい。なんて、思っていると、視界が少し暗くなる。


「え」


驚きのあまり、声が出てしまう。私は、今抱きしめられている?有栖川君に?

思考が追い付かない。そんなことを考えていると、本が倒れる。痛みは感じなかった。ちょっとして、視界が開けると、目の前には顔を赤らめた有栖川君がいた。


数秒後、理解が追い付く。そうか、私は本が倒れるところで有栖川君に助けられたのか。ん?それだったら、私は有栖川君にけがをさせてしまったのか?しかし、見ても痛そうにしているそぶりはなかった。倒れた本たちを見てみる。私のほうには倒れていなかった。


いったん整理しよう。本が倒れてきて、彼は私を助けようと私の頭を守ってくれた。でも、本は私たちのほうには倒れなかった。


つまり、結果的には私は抱きしめられただけ?その瞬間、顔が赤くなる。ペタペタと顔を触って確認し、手で覆い隠そうとする。心臓の鼓動音がすごい。

「ばか」


なんで、私はこんなことしか言えないんだろう。もっと、「ありがとう」とか「顔赤いよ。どうしたの?」とかいじることもできたのに。


少しして、冷静な思考ができるようになり、重大なことに気づく。


今回は怪我がなかったからよかった。しかし、もし命にかかわる場面だとしたら?有栖川君は自分を犠牲にして、私を助けてくれるんじゃないか?そうか、納得がいく。


だから、私は「ばか」って言ったのか。私は恥じらいの中にも怒りを含めていたのではないだろうか?自分を犠牲にする有栖川君に。


でも、罵倒したままじゃだめだ。だから、私は謝罪を口にするのだった。


「でも、私も不注意だった。ごめん。」


それから、先生が帰ってくるまで沈黙が続いた。

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