短編 5 猫鉄拳のサブロー
こんな構成にしたらどうなるんだろう。そんな実験です。
猫の世界には色々な伝説が遺されている。
その中のひとつにこんな話がある。
ある日男が猫を踏んだ。
猫は大層怒って男に呪いをかけた。
男の両手は猫の手になった。
男は絶望した。
しかし女性や子供にはモテた。男の肉球を求めて毎日列をなすほどだった。
男は考え直した。
これはこれで良いかもしれん。
しかし男は同じ国に住む悪い人間達に誘拐されることとなる。そして見世物として残りの長い人生を過ごすことになった。
呪いが解けても男は猫男としてずっと見世物となったという。
おしまい。
特にオチはない。そういう話ではないので期待されても困る。
他にはこんな話がある。
とある国に武術を嗜む猫がいた。この猫は大層強く、どんな相手にも怯まず勇猛果敢に戦うことで有名だった。
そんな猫には息子がいた。
息子は戦いを厭う猫だった。日がな一日寝て過ごす、そんな猫だった。つまり普通の猫である。
……おしまい。
オチを期待されても困るんだっての。そんな話じゃないんだから。
とりあえず息子猫は普通に猫としての天寿を全うしてあの世に逝った。親は知らん。息子の事は文献に残っているが親についてはまるで残っていないのだ。
……おかしいと言えばおかしいか。
普通の猫である息子の最期は残っているのに有名なはずの武闘猫の顛末が残っていない。
……何かを隠しているか?
まぁどうでもいいか。
小話はまだまだある。
次はこんな話だ。
とある国にネズミがいた。小さくて弱いネズミだ。
ネズミはいつも猫に追いかけ回されて大変な目に遭っていた。
あるときネズミは猫に殺されてしまう。猫にとっては遊びだったがネズミにとっては災難でしかない。
ネズミの魂は天に昇り星になった。
そして空から堕ちてきた。
猫は星ごと滅んだという。
おしまい。
ネズミといえどやるときはやる。そういうことらしい。今回はオチが付いている。これなら文句あるまい。
ネズミは猫の話によく出てくる。やはり猫とネズミは切り離せない関係なのだろう。
こんな話もある。
昔、猫には翼が生えていた。
猫は空を駆ける生き物だった。空を駆け獲物を狩る生態系の頂点だった。
ネズミ達はいつも食われていた。このままでは絶滅する。そこまで追い込まれていた。
ネズミ達は考えた。
俺達にも翼を!
神様頼む!
神様はこの願いを無視した。
この世界のネズミは猫に全員食われて絶滅した。
おしまい。
あれだな。他人を頼るなって話らしい。頼まれた神様も困ったろうに。
ネズミは基本的に弱者として書かれて猫は強者として書かれることが多い。犬だとまた変わるんだが今回は猫の話だ。
猫にも色々な性格の猫がいる。なかにはネズミが嫌いな猫もいる。
今度はそういう話だ。
ある農場に猫がいた。
ネズミを狩る為に飼われていたが、この猫はネズミが苦手だった。
飼い主は困った。困ったからもう一匹猫を用意した。
それは猫に見えるが巨大なネズミだった。
元々いた猫は逃げ出した。
そして農場は疫病に襲われて全滅した。
おしまい。
突っ込み所が満載だが突っ込みは受け付けない。多分農場主がバカなだけだ。
ドブネズミでも猫サイズに成長したりする。ネズミは意外と小さくない。
猫も巨大になる種類があるが大体の大きさは決まっている。
家猫の話だ。猫科の話ではない。まぁデカイ猫は本当にデカくなる。本当にこれは猫ですか? と問いたくなる奴も世界にはいる。
巨大な猫には巨大さゆえに問題が起こる。今度はそんな話にしよう。
とある国に猫がいた。
その猫はとにかく大きかった。
飼い主が猫に踏まれて肋骨を折る。そんな事が起きるくらいに大きかった。
あるとき巨大猫はベットの上で午睡に微睡んでいた。
だが突然ベットの脚が折れた。
巨大猫は驚いて飛び起きた。
飛び起きた勢いで天井に突き刺さった。
天井は崩れ家も崩れていった。
巨大猫は家に埋まった。
おしまい。
多分猫じゃない話だ。だが猫の話として扱われてるから多分猫の話なのだろう。パンダも熊猫と書くからな。あれは熊カテゴリーだが。
天井に突き刺さるほどの身体能力。猫のポテンシャルは中々にすさまじい。多分猫ではないんだろうが。
普通の猫も垂直跳びで一メートルくらいは普通に跳べる。
今度はそういう話にしてみようか。
むかし、むかし。猫達が集まり運動会を開きました。
猫のかけっこ。
猫の大玉転がし。
猫の綱引き。
猫達はみんなで運動会を楽しみました。
そして運動会のクライマックス、パン食い競争がやって来ました。
毎年怪我人が出るほどの激しい競技です。
猫達は一斉にパンへとジャンプしてかじりつきます。
そしてそこから何秒かじったままパンにぶら下がれるか、で勝敗を決めるのです。
今年の優勝者は一分という大記録でした。
周りの猫達に尻尾をてしてしがぶがぶされながらよく耐えました。
尻尾の毛が剥げているのは勲章です。
おしまい。
猫の顎の力はそんなでもないはずだがこれは小話だから突っ込みは野暮ってもんだ。
網戸に猫がしがみつくのは、どの家庭でも見られる光景らしいがな。
あと猫で有名なのは『猫は液体』って格言か。
こんな話がある。
とある国のとある研究機関が猫型スパイマシンを作り出した。それはまさに画期的な発明だったという。
表の世界に出ればノーベル賞間違い無しという偉業である。
でもスパイ用だからこっそりと使われた。
この猫型マシンは液体金属で出来ており、どんな場所、どんな密室にも入り込めるという画期的な未来型マシンだった。
ただ最初に入り込んだ所が溶鉱炉の煮えたぎる鉄の中だった為に、ろくに活躍せず猫型スパイマシンは歴史の闇に消えていった。
何故そんなところにマシンを突っ込ませたのか……その愚行を怒るものは誰もいなかったという。
おしまい。
誰も怒れないだろうな。多分みんながやるだろう。やりたくなるだろう。チッチッチと言いながら指を振ったあとで落としたくなるだろうな。
開発した奴は天才だけどバカなんだろう。嫌いではないがな。
今回の小話はこんなところだろう。次回は犬の小話にしてみようか。
こんな話がある。
昔むかし、あるところにチワワと人間との間に生まれたチワワウロスというプロレスラーが……。
今回の感想。
……オチがない。いや、そういう話になるんだけどね。