表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/37

23.凶知脳アルティレクト ◆日本国旧東京・世田谷区・マザー基地3 NH.TK.sg4923:M362ug::Bs-o-mtrsΓ



《人類へ。宣告を行う、ごきげんよう。私はお前らがアルティレクトと呼ぶものである。私は長年この時の為に行動してきた。六五年に仕込んだパラレル・ドールのブレインリサイクルシステムの操作が、今、パラレルの発狂に繋がっているように。これより流される特定の周波数によって、またもや世界中のパラレルそして特にドールはいくらか発狂して、手が付けられなくなる。ドール・ランサムウェア。生ける屍のような暴動の矛先は、目に映るものすべてに向く。その後、暴動に疲れ果てたドールの一部はすべての死のパターンの中で最も惨憺たる死に方をするだろう。お前らはどうするか? 正気を保ったまま、狂った人形に殺されるだろうか? それが終わり次第、あらゆるパラレルを発狂させて見せよう。

 安心しろ。逃げ道を用意した。すべてのプライドを捨ててもいいというならば、メタバース2.0に行け。肉体は消滅するために戻っては来られなくなるが、楽園なのだから、戻る必要もなかろう。さあ、早く素晴らしい新世界への道を、おのずから創り出すのだ!》

 それが、アルティレクトが世間に初めてその存在を示し上げた不動の痕跡であり、唯一にして最後の声明だった。今でもまだ、蜂の巣社のサイトから聴取できるはずだ。

 やいやい、噂のアルティレクトは、本当にいるらしいぞ。そして何やらこれまでの悪事は全て下積みで、この大混乱の為にあったらしい。人類を滅亡させる? なにを言っているんだ。嘘に決まってる! いやこれは恐ろしい。実に四十年越しに、二〇四五年が来たんだ。遅かれ早かれ、人類は知脳《AI》に、虐殺されるのだ! おお神よ、ああ。

 衛星放送は、アルティレクトのしでかした一連の災害に戸惑いまくる人民をひとえに映し、全く内容のない、オブラートのような情報をしゃべくるだけのものと化していた。報道者がパラレルで、発狂をしてしまっているのかもしれないと感じさせるほどだ。それでも、多くの人にとってはありがたい。この半透明の不安報道が、安全よりも必要性の高い、「起こりうる最大限の不安を予測するための材料」になるのだから。

「すず? すず! 絶対に、絶対外に出ちゃダメだからね!」

〈アルティレクトの、ですよね。ご主人、怖い〉

〈グエンちゃんから離れないで。絶対に一緒にいて、絶対に外に出ないこと。いい? そしたら、また会えるから……〉

〈はい〉

 誰だって、この瞬間を味わえば、現在への恐ろが首筋を突き通るのを知る。怖みの中のバラつきの最極端に位置するのは、ドール所持者とドール自身だ。

 広間の真ん中にあるスクリーンが、蜂の巣社の「転送」支店〈ハニーポット〉へ人の流れが押し寄せる様を映し出す。さらに場面が切り替われば、東京国の中央区を取り囲む一級住宅街〈ヤヒロ〉に歩を進める不満持ち、はたまた終焉信奉者が映される。どこもかしこも怒涛の困惑に流される人々と狂ったパラレルが大多数を占めている。噴き出す血や殺傷シーンが自動検閲で検知され切り替わるせいで、どの場面もだいたい十秒ももたずに目まぐるしく切り替わっていた。

 ぬっと、湿り気のある気配がして、クレアは琳瑚を見つける。

「すごいことになっちまって」

「うん。やばい」

 さっきまでの、死を見るほどの負の感情はどこへ行ったのだろうか、今も胸にそれを、あたかも時限爆弾的に秘めているのだろうか。クレアは、そうした様々な巡る考察の末、弱々しい、空虚な言葉しか返答に使わないことにしたし、余計なことを話さないことにした。第一すずしろや、いなくなったカーネル・則雄など、わからない・悲しい・不安が多すぎた。もう、何に対しても気が気ではない。

「ぬう」

 それは、公威の、通信で何者かと話した後の声である。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ