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21.東方戦線壊滅せり ◆日本国旧東京・世田谷区・東方戦線 NH.TK.sg4091:9566EF

 ああ、無常なり。本物の感情を持たぬ超知脳《AGI》にも、そう思わせるほどの命のはかなさ。マザーの指示通りに、大勢が陣形を整え、できることはすべてやり切った、そんな万全の体制だった。そして、この荒れすさぶ灰色の町で銃声が聞こえたその時、力の差が一瞬にして知れ渡った。三人のマザー自警団は、灰色の風に吹かれながら、命を手放すことになったのだ。

 もちろん、自警団も応戦するがどこから攻撃がなされているのかもわからない。手がかりの一つ、足がかりの一つもない。専用回線でマザーに問い合わせても、解析中。次第に大規模な爆発が、あたりを窪みだらけにしていく。

「もう無理だ! 撤退しかない」

 多くの叫びを突き抜けて男が叫ぶ。その声を聴いて、多くの者の士気がさがった。おずおずと後退する前線。こちら側の吉報は、ない。

〈りんこ……、琳瑚、こ*、来い。マザーに……、してもらえ〉

 撤退の中、琳瑚は、明らかに自分へ向けた通信を傍受した。この殺しが行われている最中、まさか自分にいたずらなど来るはずがない。そう思って、いやしかし、無視すべきものだと一蹴したいが、あのざらざらした通信の声でも、そこに儚い懐かしさを思わず見た。

〈琳瑚、今の通信の主は定かではありませんが、座標は特定が完了しました。今回の件とはすべてにおいて、関連がないと思われます。行くのは好ましい選択ではありませんよ〉

 それは彼女にもわかっている。それでも接触を試みたかった。

〈そうだ、りん……。私がわ*るか〉

 不思議と、歩を進ませる声だ。

〈グエンです。琳瑚さん、どうしたんですか! そこからは未測定の地域です。何が起きても〉

 琳瑚は、これ以上の通信が入らないよう、例の通信以外はすべての接触を設定で切る。

〈ハベルさん、グエンです。琳瑚さんが〉

 グエンは、最も琳瑚と離れていないハベルに、琳瑚の不可解な行動を告げ、避難させるよう要請した。

〈来たな、よし、ここなら届く。いいか、琳瑚、お前は、マザーの姉であり、娘だ〉

 声が鮮明になるにつれ、懐かしさもより鮮明になって来る。胸を苦しめるほどのときめき。彼は、

〈開道誠樺・天寧、堂上澪子。お前はその名前を、絶対に思い出せないように、記憶を閉じられている。だが、お前が開道博士の娘であり、澪子の姉であることは、私やマザーがいる限り、絶対に色あせない事実だ!〉

「琳瑚!」

 大きな耳鳴りと、くらめき。琳瑚は心への轟きが大きすぎたせいで、一連の出来事がまったく正確にとらえられなかった。ちょうどやってきたハベルの目は、彼女の代わりに現実をしっかりととらえていた。琳瑚が顔面を、アルティレクト傘下の機人体ヒューマノイドに何やらかざされていたという現実だ。

「おい」

 それは瞬時に終わり、相手は素早く撤退をしていた。琳瑚はうなだれている。

〈全部隊へ。一時撤退をしなさい。撤退場所はどこでもいいですが、なるべく基地の近く、隠れられるところに行きなさい〉

 マザーの撤退命令は、二度繰り返された。次いで、ハベルの通信通知が鳴りやまない。面倒だが、何やら現を抜かしている琳瑚に肩を貸しながら、いちいち対応していく他はない。彼はクレアに持たされていた小分けの菌糧ミールを、残らず咀嚼し飲み込んだ





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