表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

現代はもう間接民主制(議会制民主主義)では民意を反映できない。ネットの時代、もうオンライン直接民主制を採用すべきときでしょ?そんな時起きたネット政変


プロローグ



 すみません、いきなりタイトルで見栄を張って

嘘をつきました。


 実は私の時給、午前中分は

東京都の最低賃金である1030円。

午後分以降は表題通り1800円です。


 どうして午前中と午後では時給が違うの?


 そもそも内閣総理大臣の報酬が何故時給なの?


 その謎をこれから順を追って説明します。


 まず、何故午前中は安い?


 それは首相の職務のスケジュールを見ると分かります。


 一般的に首相の執務はAM9:00から。

 まず最初にやる仕事が

内閣総理大臣決済の書類にハンコを押す事。



 一日約300件以上の決裁書類に

ハンコを押さねばならないけれど、

ただ押すだけなら単純作業だし

そんなに時給が高くなくても良いだろうと云う事。


 だから12:00まで死ぬ気で頑張ってハンコを押し続けても

時給は1030円です。

 (しかも、もし300件押印のノルマが達成できなければ、

未達の件数×30円がペナルティとして報酬から差し引かれる)


じっくり中身を吟味している時間など無いのです。



なんて過酷な職務なんだ!!



 でも午後以降は外国要人の対応・接待、

国会対策やメディア応対など、

チョットは仕事に頭を使うから

1800円くらいは出してやらないと

可愛そうとの温情からの設定なのです。





 では次に何故首相が時給職扱いなの?


 それは今から遡る6年前の事です。




 この国にネット暴動がありました。



 おバカで強欲な政治家や官僚たちがやらかした

煩悩と怠慢に満ちた失敗に

業を煮やしたネット庶民たちが

ネット世界で暴動を起こしたのです。


 その結果当時の政府は倒れ、

政治や行政機関の仕組みまでが

全く新たな組織に刷新されました。


 憲法までも大々的に改正され、

主権在民などの基本的人権はそのまま保障されながらも、

民意の議論、採択の場は議会や省庁から

公設ネットアンケートによる

直接民主制の行政に集約され、

議会や議員たちは只の集計・執行要員に、

 高級官僚たちは、真の意味での

国民の下僕に格下げされたのです。



 総理大臣を筆頭に、各大臣や高級官僚まで

選挙ではなく、公募で決められました。

 しかも財政ひっ迫のおり、

今までの者たちが

高給のくせに給料分働かなかった反省から、

どうせ低賃金に慣れている一般人がその職に就くなら、

どんなに低賃金でもしっかり働くだろうと云う想定から、

要職なのにパート扱いになったのです。




 でも、あまりに時給が低く、

その割に激務であり、

更に失敗したら厳しいペナルティーが科せられる、

そんなポストに就きたいと思う物好きは少ない。

 そうした理由から

公募に積極的に立候補する者が出なかったため、

その多くのポストは、

民間会社や団体からの

出向に頼っているのが実情でありました。


 規定により就任期間1年だけの我慢と、

渋々引き受ける者がいるだけなのです。

(全ての公職は任期一年と規定されている)


だからといって、

もちろん誰でもできるポストではありません。


 非常識な馬鹿はシャットアウトされる仕組みがあり、

厳正な試験に通った者しか資格が得られないのです。


 とは言っても、

その試験は原付バイクの

学科試験並みの簡単なもので、

誰でも取得できるが、

ちゃんと勉強しなければ合格できない、

そんな微妙なサジ加減の難易度でした。


 要するに常識的な一般人なら

選挙資金など無くても、

広く門戸が開かれているのです。



 人選のポイントは

1多少バカでも試験にパスする事。

2仕事にクソ真面目な事。

3骨の髄まで庶民である事。

4低賃金でも腐らず働く事。


 この条件を満たす人材が

強く求めたれた。


 要するに卓越した高い能力など必要としていない。

 その辺の人が普通に一生懸命働ければ良い。

 それしか求められていなかった。




 一方そうした公職のポスト。



 それまでと違い、

有名大学出身者は受験応募資格がはく奪され、

実質的に公職追放されていた。


 何で?

だって東大出など高学歴エリート族は、

プライドだけは高く、

高度な政治判断と称し、自己保身と私利私欲に走り、

売国の徒たちの集団と同じと見なされたから。

 一般大衆の社会常識が通用せず、

ろくでもない行為に終始する

無能な存在との評価しか得られなかったから。


 その証拠に、

1980年代は『ジャパンアズナンバー1』ともてはやされ

あれだけ隆盛を誇った日本なのに、

現在は見る影もない程の、

斜陽な情けない

借金だらけの貧乏国家に成り下がっているのです。


 あれだけ手取り足取り支援してやった

隣国にまで馬鹿にされています。

 それほどの無能で無策な政策しか

やらなかったエリート為政者たち。

しかも誰もその結果の責任をとっていません。




 底辺のネット民たちが怒るのも無理はないのです。



 その報いがそれでした。




 でもそういう輩でも有難い事に

人権は保障されています。

 だから彼らには

公共の福祉に携わることは許されていないが、

個人の利潤追求には規制がありません。


 個人の学習能力が高いという特性を生かし、

研究所などを立ち上げ、自分の研究成果を発表したり、

会社の社長になるのは許されています。


 つまり公共の福祉に直接携わらなければ

能力次第でどれだけ私腹を肥やしても良いよと云う事です。




 一方、一般大衆に過ぎなかった者たちが

いきなり政治の表舞台に立たされても

ただまごつくだけ。


 だから徹底したマニュアル遵守が求められ、

イレギュラーなミスには、

ペナルティが課せられました。



 例えば先代の総理大臣が、

つまらないミスをしたときは、

16時間の【パワハラマシーンの刑】に処せられました。


 哀れな彼は、その恐怖のマシーンに

「お前の母ちゃん出ベソ!」と、

罵倒され続けられたのです。



 その結果彼は軽いノイローゼになってしまいました。


 でも私たちの仕事は

ペナルティだけではありません。

 良い仕事をしたら、報奨金もあります。


 国家に多大な利益をもたらす

成果をあげることができたら、

退職後の年金に、報奨金として

一件に付き毎月300円も加算されます。


 たかが300円と侮るなかれ。

一件300円と云う事は、10件で3000円、

100件で3万円の加算が一生毎月続くのです。


 例えば毎月14万円の年金受給者なら、

17万円も貰えます。




 凄くない?



 別に。



 あ、そう・・・。



 チ~ン。



 因みに私、竹藪平助は、

ついこの前までラーメンの添えものである、

メンマ製造会社で準社員として働いていました。

 ある日社長に時給が上がるから、

一年だけ出向しなさいと命令され応募したら、

事もあろうに、総理大臣にされちゃったのです。





 これからの一年は

波乱万丈の年になりそうな予感がします。


 






     第一話  キャバクラバレた!!




 私、竹藪平助(32歳)が

内閣総理大臣に指名されて今日で1週間。


 ようやく就任に関わる様々な儀式や行事が終息し、

一息ついて羽を伸ばしたいと思った。


 緊張から解放され、タガが緩んだ私は、

ついこの前まで宅配の配達員だった田之上官房長官と

3丁目のキャバクラに行くことにした。


 もちろんそんな私事わたくしごと

SPを同行させる訳にはいかない。


 キャバクラ代は公費から出せないし、

SPの超過勤務代を私費から負担できるほど

報酬も貰っていない。



 だからそう言って断ったのに、

SPのひとり、[角刈りの杉本]がついてきた。

勿論自腹で。



 ひとしきり大人の世界を堪能し、

楽しんだ私たち。

でも翌朝地獄が待っていた。


 私の高校時代からの幼馴染、かえで

いきなりノックもせずアパートのドアを開け、

鬼の形相で迫ってきた。


「コラ!平公!!

お前、昨日キャバクラに行ったって?

何やってんだ!馬鹿!!」


「いきなり何だ、かえで!!」

(何処から嗅ぎつけて来た?)

「お前、昨日キャバクラ行ったろう?」


・・・顔が近い・・・


「え?・・・・き、き、記憶にございません。」

「記憶にない?ふざけんな!!

国会答弁やってんじゃないぞ!!」

「でも、何でかえでがそんな事知ってんだ?」

「ほら、やっぱり行っただろう!」

(ちょっとイラつき)

「だから、何で知ってる?」

「角刈りの杉本がゲロを吐いたんだよ」

「あの口軽野郎!SPのくせになんて口が軽いんだ。」

「私が締め上げ、無理やり口を割らせたのさ」

「やっぱりかえでは鬼だな!どんな壮絶な拷問にかけた?」

「人聞きの悪い事言うな!

私の溢れる魅力を使い、色仕掛けで優しく質問したら

直ぐに教えてくれたのさ。」

「嘘つけ!!今「締め上げて」って言っただろう!

そもそもかえでの一体何処に

色仕掛けできる魅力がある?

胸はペッチャンコだし、おケツはでかいし、

絶対地獄の拷問にかけたに決まってる!」

「失礼な奴!!

そんな事より、天下の総理大臣が

迂闊で軽薄にも

キャバクラに行っている場合か?

世間に知れたら間違いなく過酷なペナルティの嵐だぞ。

そんな事も分からんか?この馬鹿が!!」

「バカに向かってバカって云うな!」

「バカだからバカって言って何が悪い?」

「面と向かって言われたら傷つくだろう?」

「この馬鹿・・・。」




 でもかえでは彼女でもないくせに、

何でそんなに私に干渉する?


 キスもさせてくれないくせに・・・。






   第2話




 私 竹藪平助は、首相官邸への通勤にママチャリを使う。

 官邸は本来首相の住居を兼ねる筈だが、

そんなところに住んでいては国民の声が届かず、

国民生活の実態が見えない。

 更に幽霊が出るとの噂があり、

ネット暴動政変以降、

歴代の首相で官邸や敷地内の

それに隣接する私邸に住んだ者はいない。


 私もその例にもれず、

自分の私邸から通っている。



 私邸?


 

 一階がラーメン屋『蓬莱軒』の店舗で、

その2階の6畳一間を私邸と呼ぶなら

確かにそうだが・・・。

 一応そこは『むつみ荘』という名がある。


 その住人の私は官邸までの道のりを

3年前近隣のホームセンターで買った

12800円の愛車ママチャリ

マッハ15の『流星号』で通う。


 本当は首相にはVIP送迎という特典は有るのだが、

就任初日から3日で利用を止めた。


 何故ならその送迎車が実に狭い。


 政変以前の首相送迎車と云ったら

センチェリーだのクラウンだのベンツだのといった

超高級車のはずだったが、

政変以降、軽自動車に変更されたのだ。


 ホン〇N-BOXやスズ〇スペーシア、

ダイハ〇タントのようなツーボックスミニバンなどに。


 しかもその後部座席に座るならまだしも、

前席をベンチシートに改造、

右から運転手、VIP、そして助手席にSPが押し込められる。


 いくら何でも軽の前席に大人3人も座ったら狭いでしょ?


 何で前席に?

実は後ろの席は要人警護対策で

モーターを特別にパワーアップした

ハイブリットエンジンに載せ替え、

しかも万が一の危険回避の逃走用に

1分間持続して急加速できる

ニトロジェットエンジンまでも搭載している。


 だから後部座席に人は乗れない。


 そんなクレージーカー、誰が造った?


どうやらこの国にはまだまだ改善点が多すぎるようだ。


 そんな訳で私の前に軽の警護車両が3台、

その後に私が「♪マッハ15のスピードだぁ♫」

と歌いながら『流星号』で走り、

後ろにまた3台の警護車両が続く。


  ※印 昔のアニメ『スーパージェッター』

     1965~1966

     で検索してみて。





 その風景は

昔のチンドン屋さんの練り歩きのような、

何処となくユーモラスな空気を漂わしていると思う。


 


 そんな訳で私が首相官邸に着いた頃には、

汗だくでヘロヘロになっている。



 今朝は官邸に出勤前、楓(以降、カエデと呼ぶ)

の奴にキャバクラの事でやり込められているので、

戦々恐々とした面持ちで官邸のドアを開けた。

 そこに待ち受けていたのは

首相専属教育係の板倉だった。


 (あぁ、やはりキャバクラの事、バレてる。)

そう思った私は観念する。



 でも板倉の反応は意外だった。

「キャバクラ?

行きましたか・・・。

 でもそれは貴方の問題です。

 貴方は確かにこの国の元首である内閣総理大臣であり、

公人として規範となるべき人です。


 もちろん政変以前の政治家と云ったら

職業としての政治屋稼業でしたので

人心と権力掌握のため、

せめて表向きは聖人君子を装う必要がありましたが、

今のあなた方公募世代は、

あくまでも一般人からの選出です。

 一般人がキャバクラに行った事が

ニュースになったり

スキャンダルになることはないでしょう?


 だから一年だけ首相になったくらいの人が、

世間の批判に晒される必要はないのです。



 でも・・・・・


内閣総理大臣はあくまで天下の内閣総理大臣。


 自分の推進する政策を貫徹したいと思うなら、

もっと襟を正した生活に徹すべきです。


 キャバクラ通いやパチンコ、

ギャンブル狂いの人がもし首相なら、

いったい誰がその人について行くでしょう?

 確かにその為政者の生活態度と政治は別物です。


 でも政治は一人ではできません。

政治とは力です。

 その力とは共感の集合体です。

 お金ではありません。

 そしてその共感の無い所に共力(協力)は生まれません。

 貴方が任期の間、任務を滞りなく遂行したいと思うなら

議会や省庁や国民の賛同が必要なのです。

 いくらあなたがその辺の一般人だったとしても、

今はこの国の責任者です。


 この一年間、

誰に対しても恥ずかしくない仕事がしたいと思うなら、

技術面では私たちサポート陣が全力で支えます。

 でも人格面は自己責任でお願いします。



 言葉が無かった。


 そうだな・・・。


 私は心から反省した。



 キャバクラは止めて

今夜からは大衆居酒屋とカラオケスナックにしよう。

 その辺は止める気が全くない竹藪平助であった。







       第3話




 ほろ酔い気分でむつみ荘に戻ると、

部屋の窓に明かりが見える。


 古びた薄っぺらいドアを開けると

そこには案の定、カエデが居た。



「何でカエデが此処に居るんだよぉ?

お前に鍵を渡した覚えはないぞ。」


「今日の私邸の留守の当番は、

角刈りの杉本だったでしょ?

だから私の魅力をフルに使って部屋に入れて貰ったの。

彼には玄関の外で警護するように頼んでね。」

「魅力をフルにね・・・。

どんな魅力だか。

 そんな事よりこんな夜遅く、何の用だ?」

「だって今日の昼にあなたの教育係の板倉さんから

電話があったの。

 私にあなたのお目付け役になって欲しいんだって。

 しかも時給は1500円。

 チョットは良い小遣い稼ぎじゃない?

 だから面倒だけど、渋々引き受けた訳。

(本当はカエデ自ら板倉に売り込んだのだが、

それは内緒。)

今夜はその事を伝えておきたかったの。

 分かった?

 お休み。」

「え?

もう帰っちゃうの?

お休みのキスは?」

「何であなたにキスをしなくちゃならない訳?」

「だってお目付け役だろ?」

「お目付け役が何故キスをするの?


 馬鹿!!」



 「だから馬鹿って言うな!」


「あ、それから、

そう云う事だから、

このボロアパートの部屋の鍵、明日の朝、置いてってね。」

「そういう事ってなんだよ?

ボロアパートで悪かったな!

でもお前にこの部屋の鍵を渡したら

もう悪い事できないじゃん。

 勘のいいお前の事だから、

隠れて何をやっても、総てお見通しになっちゃうし。

 だから嫌だね!」

「この期に及んでまだ悪い事を企んでいるの?

いい加減観念しなさい。

内閣総理大臣なんでしょ?

この、『猿間竹男』が!!」


「『猿間竹男』?何じゃそりゃ?」

「押し入れの中に、

洗濯していないパンツが山になっていたじゃない?

その中からキノコが生えていたよ。

だから「さるまたけお」=『猿間竹男』よ。」

「パンツからキノコぉ?

嘘つけ!ボクのパンツからキノコが生えるか!」

「今日は洗濯機3回も回してやったんだからね。

有難いと思いなさい。この不潔なキノコ男!」


 私は思わず押し入れを開けた。

山のように無造作に積まれていたパンツが

洗濯され、綺麗に畳まれている。


 「私、帰るから。

明日は今夜みたいに酔っぱらってないで

真っ直ぐ帰って来るんだぞ!

 明日の晩御飯はカレーだからね。」

そう言ってカエデは帰っていった。



 


 首相の一日は矢の如く早い。


 昔のような不毛な政争はないが、

実務でやらねばならない事は山ほどある。


 そもそも前回のプロローグで、

今はネットによる直接民主制と云ったが、

何故議会や内閣が存在する?


 公設ネットアンケートが国権の最高機関なら

議会での議論に何の意味がある?


 この公設ネットアンケート。

誰でもが参加できるが、

誰でもが参加できるわけではない。



何言ってる?




ネットの世界はネット民の衆愚に満ちている。


  ※ 衆愚? 

    衆愚とは一般大衆に迎合するための愚かな行為。

   =衆愚政治。

   古代ギリシャが衰退したのも

   古代ローマが共和制から帝政に取って代わられたのも、

   衆愚政治が蔓延ったせい。




 でもだからこの国の政治が

衆愚に堕ちてはいけない。


 故に国民を堕とさないためにも

徹底した再教育が必要になるのだ。


 その方法。


 それは一定年齢に達した成人は、

月一回、10分間のネット「政治の仕組み講座」や

「法の精神講座」「社会の良識講座」を

受講する事が義務化された。



(ウヮ!堅苦しそうで、難しそうで、退屈しそう。)

(その内容は小5程度のレベルだが)


 だからと云ってそれを怠ると、テレビ、ラジオ、

講座以外の全てのネットチャンネルが遮断されてしまう。

 でも例え渋々でも受講すると

全てのメディアソースが復活。

 更にその講座を受講した者だけが

公設ネットアンケートに参加できるのだ。


 しかも受講の最後に小テストがあり、

5問中3問以上正解すると、

公設ネットアンケートのコメント欄に

自分の要求を主張する発言権が与えられる。


 一回の講座参加で

一回の公設ネットアンケートへの投票権。

 更に正解者に発言権。

 それが国政を支えているのだ。


 その結果、この国から一般財政と特別財政の

二重予算構造が廃止された。

 不透明で不正の温床の仕組みが

ネットアンケートによって解体されたのだ。


 あれだけ悪どかった財務省の官僚たちも

その多くがスーパーマーケットの

レジのおばちゃん達にとって変わられている。

 そのおばちゃん達も

徹底したモラル教育とマニュアルに管理され、

更に一年ごとの交代だから、

不正の温床が育ちにくい。


 そういった全ての仕組みを

公設ネットアンケートが構築したのだ。


 思わぬ副産物として、

一年政府の要職を経験した者たちは、

下野した後もその経験が体に沁みつき、

有力なブレーンとなった。

 そんな者たちのコメントが世論を支え

有意義な政策が提言された。


 但し、時々VIP送迎車のような間の抜けたポカもするが・・・。




 議会も省庁も素人任せ。

でもいざという時のために

百戦錬磨のサポート陣が組織され、

あらかじめ控えており、

致命的な失敗を未然に防ぐ仕組みも組み込まれている。




 そんな国政組織を中枢から目の当たりにし、

私はまだまだ手探り状態の国政に

真剣に取り組もうかとの自覚が次第に出て来た。


 だって内閣総理大臣なんて、

誰でもそう簡単になれるものでもない。


 私は割と簡単になってしまったが、

そんなのまぐれ。

 本当ならこんな運命って、

どうかしているじゃない?




 今日は財務省主計局の局長を官邸に呼び、

補正予算の詰めについての説明を聞いた。


 局長である彼女は、

私が住むアパートの近所にある

『スーパー≪激安≫』に勤めていた。


 だから顔見知りで

私が『日唐カップラーメン【バゴーン】』と

『大正の【超特大ミルクプリン】』を

いつも買っているのを知っている。


 彼女は私の顔を見るなり、

「あら、平ちゃん

(私、竹藪平助は彼女にそう呼ばれている)

今日はカップラーメンとプリンは買って帰らないの?」

と聞いてくる。

「ああ、買って帰りたいけど

今は財布のひもをカエデに奪われているんだ。

 とても残念に思うよ。」

「だから最近顔を見せないのね。

レジ仲間が「最近平ちゃんが来ない」と言ってたのは

それが理由なのね。

 でもお酒を飲むくせに、甘党でもあるなんて、

将来成人病に苦しむことになるから

それで良いんじゃない?」


 まるで他人事のように言った。


 確かに他人事だけど。


 「今は流星号に乗って毎日通勤で汗を流しているから、

成人病になんかならないさ。」

 「また、そんなこと言って・・・。

たまにはカエデさんに感謝しなきゃダメよ。

アンタの健康管理をちゃんとやってくれてるんだから。」


 おばちゃん口調で云う。


 おばちゃんだけど。





 こうしたやり取りの末、

大切な国家財政の補正予算は組まれてゆく。







     第4話



 今日は朝から

土砂降りの雨だった。



 こんな日は本当についていない。


 雨合羽を着て、

いつものようにチャリンコ『流星号』に乗る。

  

 こんな日の通勤くらいは、

車か電車にすりゃ良かったと後悔した。


 でもあの狭い軽の送迎は窮屈で息がつまる。

 あの男臭い車内はどうにかならないのか?

もし車内で誰かがオナラをしたものなら最悪である。



 電車の駅に行くにも

徒歩で駅に行く位ならチャリンコを使いたい。


 更にその電車も、

朝の通勤ラッシュの満員電車なら

軽の送迎と大して変わらないし。


 今日は昨日の深酒が祟り、

朝寝坊していつもより出勤時間が遅い。

 しかもいつもの通勤経路は

雨と時間帯が遅くなった分、渋滞も激しい。

 チャリだけなら道を縫って行けるが、

軽の行列付きだとそれも無理。


 お陰で官邸に到着したのが大幅に遅れ、

急いでタイムカードを入れたが

2分の遅刻となってしまった。



 教育係の板倉が執務室前で仁王立ちになり、

「総理、遅い!!

国のトップが遅刻してどうするのですか?

そんな事では

誰もあなたについてきてはくれませんよ。」


「たった二分くらい大目に見てよ。


 な?」


「な?

 何が『な?』なのですか?

二分も遅刻したら

決裁書類2~3件分のハンコがその分

遅くなるのですよ。

 一分につき30円のペナルティとして、

60円が差し引かれますのでそのおつもりで。」


「鬼!!

そのくらいの遅刻なら

一般企業なら『注意』くらいで許してくれるよ。

 報酬から差っ引くなんて

此処(ここ)くらいだろ?

酷いじゃないか!」


「何を甘い事言いているのですか!

あなたの担当する職務は国事行為なのですよ。

 とても責任の重い立場なのです。

 しかも内閣総理大臣と云ったら

その中でも特に国の先頭に立ち、

全責任を背負って突っ走らなければならない

職務です。

 それからあなたは遅刻くらいと

思っているようですが、

どんな企業でも遅刻をする様な人間を

信用したり評価したりはしません。

 もっとちゃんとした社会常識を持った

おとなになってもらわないと困ります。

良いですか?

 もう二度と遅刻はしないでくださいよ。

 分かりました?

次は始末書ですよ。」



 朝から思い切り叱られてしまった。


(でも、昔の大臣級のお偉いさんなんかは、

ワザと遅刻するのがステータスだったのに。

 何か納得できない・・・。

 損した気分だな。)



 多分この事はカエデにも伝わり、

今夜はぼろクソに云われるだろう。

 ああ、気が重いなぁ・・・。

 執務室でひたすらハンコを押しながら、

そんな事を考えていた。


 そこへまた板倉が、

「それと、この前言っておいた宿題は

もう出来ていますか?」

「何です?宿題って。」

「忘れましたか?

明日は貴方の総理大臣になって

初めての所信表明演説の日ですよ。

 話す事を原稿にまとめておいてくださいねって

言っておいたでしょう?」


「ああ!忘れてた!!

毎日、目が回るような忙しさだったから

すっかり頭の中から抜け落ちていたよ。

 ハハハ・・・。」

「ハハハ、じゃないでしょ!

原稿も無しに明日演説するつもりですか?

 いくら今の国会が事務的な

翼賛(よくさん)組織に

成り下がった所だからと言って

舐めないでください。


    ※翼賛: 戦前、政党政治が終焉し、

    大政翼賛会に吸収された。

    (政府の方針に)賛成するだけの意味。


 貴方の演説は我が国だけではなく、

全世界の人々が注目しているのですよ。


 世界に例を見ない素人首相が

一体どこまでできるか

みんな貴方の一挙手一投足まで

注視しているのです。


 下手なところを見せたら

今後退任最後の日まで馬鹿にされ続け

何も聞いてもらえず、孤立するのですよ。

 しかも全世界中に

貴方の不名誉な印象が記憶されるのです。

 貴方にその覚悟がありますか?」


 「分かった、分かった!

今晩必死で考える事にするよ。

 でも、一体何を話せば良いのですか?

私は今まで歴代の首相の所信表明なんて

聞いた事がないんです。

 全く興味も無かったし。」


「昔と違い、今の所信表明演説は、

国会の議員たちに

アピールする必要はありません。

 自分の内閣はこれからこんな事をやります、

あんな事をやりますなんて

出来るか出来ないか分からない議会向けの

無駄なアピールの必要はないのです。

 政策は公設ネットアンケートが決めるし。

 貴方がやるべきは

 国民に対して直接呼びかけ、

自分の思いを訴える。

 それが一番効果的で意義があると

私は思いますよ。」





 何だか解ったような、解らないような・・・・。



 

 昼食のカップラーメンを啜りながら

明日何を話すかボーッと考えていた。


 すると私の第三秘書で紅一点のエリカが

私にボソッと言う。

「平助総理ってサ・・・。

見た目ちょっと野暮ったいし、

ドン臭そうだし、

とても私の推しメンの拓哉には

逆立ちしたってかないっこないし。


(オイッ!勝手にアイドルと比べるなよ!)


 それと同じく、

総理には株や通貨の知識や技量について

誰も期待していないよ。

 そう云う事は

財務省や経産省のやり手が担当してくれるし。

 同様にアメリカや中国のような

どうしようもない食わせ者の国との外交は

その分野のやり手が頑張ってくれるよぉ。

 総理がいくらカッコつけても

ダサいだけだから無理しない方が良いと思うよ。」


(ちょっと!失礼じゃないかい?)


 私の目を見ず、

自分のマニュキュアを気にしながら

独り言のように言う。

 大体エリカは年下のくせにタメ口で、

私より何故か時給が100円高い。

秘書が総理より時給が高いっておかしくね?

 

 彼女は元銀座のホステスで、

美人で頭がキレる。


 そこを見込んだ板倉が

拝み倒してスカウトしたそうな。


 だからって少し私を

舐めてかかっている節がある。


 銀座の元高級ホステスなら、

接客の時のように、

私に対する普段の態度や

言葉遣いにも気を使って欲しいものだ。



(ちょっとムカつく!

でも悔しいが的確なアドバイスだな。)


 (よし、私は背伸びをせずに、

明日は等身大で話をしてみよう。)

 そう決心した。

日頃感じた事を投げかけよう。

 きっと皆、分かってくれるさ。






 案の定、むつみ荘に帰ったら

カエデが待ち受けていた。

猿股彦サルマタヒコ

お前、今朝遅刻したって?

何やってんだ?!馬鹿!!」

「誰が猿股彦やねん?

どうせボクの仕事なんて

勤務時間が有って無いようなものじゃん。

 朝は9:00からだけど、

帰りは毎日違うし。

 折衝が有ったり、

会議や陳情が有ったりして、

出勤の時は押せても、

実質、退勤のタイムカードは押せないし。


 そんなのに何の意味がある?


 でも、もう遅刻はしないよ。

朝は初めが肝心だからね。

 明日は演説で忙しいから

今日はもう寝る。

 お休み。」


「お休みじゃねえよ!

ちゃんと演説の内容を考えたのか?」


「何にも考えてなんかいないよ。

いくら考えても、

これで良いなんて思えないし。

 まぁ、何とかなるさ。」


「分った。サルマタヒコがそう言うなら

そうしたら?

 でも、さっき牛丼作っておいたから、

チャンと食べてから寝なよ。

 今日はまだ晩飯喰っていないんだろ?

そんじゃな、お休み。」


「サルマタヒコじゃねえし。

お前、段々口が悪くなってきたな。

 女なんだから、

もうちょっときれいな言葉遣いにしたら?」

「それって性差別発言!!減点3点!!

じゃあな!」


 何が「減点3点だ!」「じゃあな!」だ。

大体『3点』って何だ?

 また報酬からさっ引かれるのか?


 今日はエリカにしろ、カエデにしろ、

もう少し優しく接しろってんだ!





 何の根拠も前触れもないのに

突然自分に優しくなった二人と

チュ~する妄想を抱きながら

牛丼にガッつくサルマタヒコであった。






   第5話  所信表明演説





 今日は衆議院本会議の日。


 内閣総理大臣就任後、

約1か月での所信表明演説である。


 本会議場の聴衆はまばらだ。

それは国会議員なんてそんな何百人も要らないでしょ、

と云う事で、衆議院60人、

参議院30人に減らされたから。

 どうせ翼賛議員に過ぎないし。

 重要決定事項や立法素案は

全部公設ネットアンケート事務集計局が

実務を担当しているから。

 議員の仕事は、ただ採決で挙手するか、投票するだけ。


 議員や閣僚、官僚の汚職疑惑や

不祥事の追求・訴追は

独立査問委員会の仕事であり、

国会討議の場などでは

審議の対象にはならない。


 あくまで行政機関は行政が仕事。

立法機関は立法が仕事。


 本会議や予算委員会などの審議の場で

対立する他党議員や大臣などを

蹴落とすような行為に明け暮れていたら、

本来の仕事にならないし、

第一、そんなの

国民から負託された仕事じゃない。


 元々政治とは、

政敵と戦う場ではない。

政(祭り事)を行うところなのだ。

 敵を倒して権力を我がものにするのは

前近代的な過去の話。


 今は直接民意をネット媒体ではかり、

議会が承認し、行政機関が執行する。

 そこに権力闘争がつけ込む隙間は無いし、

意見の相違からくる対立も起こりにくい。


 以前は政争ばかりに明け暮れていたから

他人が信用できなくなるし、

自分本位になるし、不正に走った。


 そんなで良い政治ができる筈はないでしょ?

恥ずかしい事に、

子供でも分かる事が今まで出来ていなかった。



 だから今は

立場や考えの違うもの同士が

お互いの英知を結集し、

より良い関係を構築するよう歩み寄り、

協力し合う場であるべきだと

新憲法にも明記されている。




 『万人の万人に対する闘争状態は

ここに終焉を迎えた』


 これが新憲法の前文で宣言された

直接民主主義のスローガンである。




 そうした背景を踏まえて

第135代竹藪平助新内閣総理大臣の

所信演説が始まった。


(念のために云うが、

決して『サルマタヒコ』が本当の名ではない。

知ってた?)



 平助が壇上に上がり本会議場を見渡すと、

フゥ~、と深く息を吐いた。


 実は彼は昨晩、全く眠れなかった。

それはそうだろう。


結局原稿なんて全く出来ていないし、

緊張もマックス。

 なにを話せば良いのだろう?

そうして一晩が無為に過ぎてしまっていた。


 しかし、こうして衆議院本会議場を

隅から隅まで見渡すと、

何故か不思議に突き上げてくるような

感情が噴き出してくる。


 この場所は100年以上の長い歴史を積み重ね、

この国の政治の主戦場となってきたのだ。


 私は今、どういう訳か此処に居る。

ひょんな事からこの国の代表者として、

国民に対し、言葉を投げかけ、

明るい未来を呼びかけようとしているのだ。

 こんなチャンスは滅多にない。

 私は自分の全身全霊を賭け

思いの丈をぶつけよう。

そう思うと、不思議な力が湧いて出た。



 壇上に立つ事1分。


 平助は無言であった。


 更に1分。


 本会議場は騒めきだし、

中継するTVの解説者が慌てだした。



 その間、

平助は平気な顔で聴衆ひとりひとりを見据える。



 そしてゆっくりと、穏やかに話しだした。


「国民の皆様、

此処にわたくし第135代竹藪平助内閣総理大臣は、

国民の皆様に呼びかけます。

 どうか私に力をお貸しください。

 私はこの国をより良くするための

精一杯の努力を惜しまない事を約束します。

 私に託された1年。

その1年の間、歴代の内閣がこれまで成し得なかった

数々の不条理の改善を全力で推進する事を誓います。



 ・・・こんなきれい事・・・。

いくら並べても皆さんの心には響きませんね。


 正直に言います。


 私は就任早々、キャバクラに行って

遊んできてしまいました。


  (場内から騒めきと共に

「おぉ〜❗️」との声がする)


 執務前夜に深酒をして

遅刻をしてしまった事もあります。


 その度に私の教育担当に叱られました。


 私は聖人君主ではありません。


 何処(どこ)にでも居る普通の

食品工場生産ラインの工員です。


 でも私は今、此処(ここ)に居て

皆様の前で所信表明演説をしています。


 何故(なぜ)私なんかが

ここで偉そうに演説しているのでしょう?


 その理由は、

これがこの国の制度だからです。


 この国は私のような

不完全なパンピー(一般ピープル)が

普通に政治を担当できるほど、

優れた国民の集合体であり、世界でいち早く

理想的な直接民主主義を作り上げる名誉を

得た国なのです。


 私は見ての通り、何の力も有りません。

 お金も無いし、アイドルのようなカリスマ性も、

溢れ出るような知性もありません。

 今まではただの小心者で、

失敗ばかりのお調子者でした。



 でも!



 今の私にはひとつだけ

誰にも負けない力が有ります。


 それは熱い思いです。


内閣総理大臣と云う

政治の中枢の立場を経験して1か月。


 段々自分がやらなきゃ、誰がやる!

との気持ちが芽生えてきました。


 今でも生活に困窮(こんきゅう)し、

社会をドロップアウトする人が大勢います。


 あらゆるハラスメントに

押しつぶされそうな人が大勢います。


 不正を目撃しても告発する勇気を持てない人。

 なりたい職業に就きたくても

経済的な理由で諦めざるを得ない人。

 重い病気の治療費を捻出できない人。

 学校に行けない人。

 様々な社会制度の狭間に居る人。


 困っている人は大勢います。


 私はつい最近まで

ただのメンマ製造工場の工員でした。

 この職務を終えたら、

また同じ工場に戻ります。


 でもそんな私でも出来ると

背中を押されました。

 私でも出来ると云う事は、

この拙い演説をお聴きの皆様、

誰にでもできると云う事です。


 でも、私ひとりの力では何もできません。

皆様のどなたがやっても、

一人ではできません。


 でも私には無尽蔵に力を得る

『国民の皆様』と云う

強力な味方があり、バックボーンがあります。

 私のみならず、どなたがやっても、

その人が一生懸命この国と国民に尽くすなら、

それを皆が認めるなら、

素人でも立派にやり遂げる潜在能力を

この国と国民は持っているのです。


 だから皆様!


 私に力をお貸しください。

私は皆様にとって

信じるに足る人間になることを誓います。


 そして後に続く次世代の総理大臣に

国造りの道を開く事を誓います。


 信じてください。


私ではなく、皆様ひとりひとりの

可能性と底力を!


 私にできる事は、皆様にもできるのです。


 だから私の職務は皆様にとって

他人事ではないのです。


これは明日の皆様がやる仕事です。

 そう云う思いで

私のする仕事を見ていてください。


 それこそが直接民主制の真骨頂だと

私はここで断言したい。


 私はここに、

自信と自負とプライドの旗を振り続けます。

それは皆様と崇高な価値を

共有することができる名誉の印なのです。


 残り11カ月。


共にこの国を作り上げさせてください。


 貴方の声が、貴方の行動が

力となることを信じてください。


 私はそれを保証できる人間になりたい。

 そのために全力を尽くします。




 第135代 内閣総理大臣 竹藪平助








  






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ