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「ヤク……」って言いかけて止まると誰もがちょっと不安になっちゃう説

こいつ殴る……!

そう思ったものの動けないプラチネに対し、何も気にせず近づきポーションを振りかける。

その瞬間、プラチネは旅商人に殴り掛かり、それを慌てて旅商人は躱していた。


「お前、何者だ?」


プラチネの思いを言葉にしたかのようなアシドの言葉だったが、その後に続く言葉は異なっていた。


「なんでポーション一発で完治してるの!?」

「いつの間にこのダンジョンに入ってきた?」


旅商人は困ったように頬をかき、まずプラチネに答えた。


「えっと…ポーションについては、まず、水の曜日の関係で水属性アイテム効果倍増で約1.5倍の効果になりまして、更に、【道具屋の心得】というスキルがレベル10なので、アイテム効果を10倍に、【心ばかりのおまけ】というスキルで+1に。そして、【薬神の加護】によってポーション系の効果を更に89倍にすることができます。なので、ほぼエリクサーですね」


いや、心ばかりのおまけはどうでもいいわ。薬神の加護で89倍って何?8・9(や・く)だから? ほぼエリクサーって最高級回復薬のアレのこと? っていうか、薬神の加護持ってるのー!?

と、心で騒がしいプラチネを無視し、旅商人はアシドの方を向いた。


「えーと、今さっきお邪魔しました」


アシドは信じられないものを見るかのように眉間に皺を寄せ尋ねた。


「さっき? 私が戦闘に興じている間にかい? あの少しの時間でここまでくるだ……」

「嘘つき! ずっと部屋の前にいたんでしょうが!」


アシドが言い終わるよりも早くプラチネが叫んだ。


「ずっと、だと…嘘をつくな! であれば、いつ入ってきたというの!?」

「は? 何言ってるの、あなた?」


いつの間にか、アシドとプラチネの会話が始まり、旅商人はその場を静かに離れた。


「私は、獣人と魔人のハーフ。この臭いゆえに嗅覚はほぼ意味を成さぬが聴覚はこのダンジョンのすべての音を聞き分けられる。先ほどのような戦闘を行っていなければねえ。あなたたちの足音は聞こえても、あの商人の音なんて一切聞こえなかったわ」

「はあ? 部屋の前までいて気づかないなんて鼻だけでなく耳もおかしいんじゃないの?」

「部屋の前ですって?」

「そうよ!散々私たちとあの商人で話をしていたでしょうが」

「……は?」


アシドが固まる。その様子を見てようやく異常なことが起きているのではないかと気づき始めた。


「あー、それはですね。僕の【消音】の魔石の効果ですね。で、嘘呼ばわりはやめてください。信用にかかわります。僕はちゃんと、ダンジョンを出て、帰ってアイテムを取り揃えて、ここに戻ってきたんですから」


プラチネは自分の耳を疑った。消音の魔石で音を消していた?

そういう効果のある魔石が存在することは知っている。

けれど、魔石というのは魔力をため込む石でサイズによってため込んでおける量が変わる。

旅商人が持っているのは、キュウに売ったものと同じくらいのサイズである。

キュウの消臭の魔石はキュウに効果があるので精いっぱいだった。

普通はそうだ。仮に多少底上げしててもそこまで消せる範囲は広がらない。

広げてしまうと一気に魔石の魔力を消費してしまうからだ。

例えば、『6人分の大きな声を含む商談の騒ぎ』を消すとなると、本当に一瞬だけだ。

それ以上は、常に魔力を注ぎ込まなければならない。

そんなことが出来るのは一流の魔法使いくらいだ。

けれど、彼は旅商人だ。

どういうこと?

そして、もうひとつ。

プラチネという勇者率いるパーティーが半日かけてたどり着いたここまであの僅かな戦闘の時間だけで行って帰ってきた?

どういうこと?

頭が追い付かないプラチネだったが、アシドもまた自分の理解を超える存在に混乱していた。

けれど、彼女自身は魔人の血を引いていることもあり、考えても無駄なことは考えない。

己の刹那の感情に従うだけだった。

それは、怒り。

理解不能な存在に対する怒り。

今もまた、アシドの気づかぬうちに他の4人の治療を終えていた理不尽なる存在。

あの目障りな商人を、消す。

アシドは知っていた。

商人という奴らには攻撃のスキルがないことを。

仮にどんな高いステータスを持っていたとしても、スキルで高めなければ、ソロバンの盾を破ることはできないだろう。

商人がアイテムの効果を何倍にも引き上げたように、戦闘用のスキルは攻撃の威力を何倍にも高める。

プラチネがアシドの態勢を崩すほどの攻撃ができたのもスキルの力なのだ。

けれど、その攻撃スキルが商人にはない。

そう思い始めると、漸く理解の及ぶ存在に、餌となった商人が愛おしく思えてきた。

なんて儚く可哀そうな生き物かと。

そんな愉悦の目を向けていた商人が消えた。

いや、いた。

愉悦の、目の、前に。

衝撃。腹。

痛みはない。ソロバンの盾が守ってくれた。

けれど、身体が飛んでいく。

は?

魔法衝撃ごとぶっとばした?

は?

勿論、それはプラチネ達も同じ思いを抱いていた。


「「「「「「は?」」」」」」


問題なく着地したアシドだったが、その脚は震えていた。


「い、い、今の吹っ飛ばしたのは、どういうアイテムの力かねえ?」

「あ、今のは普通に殴りました」



「「「「「「「は?」」」」」」」


お読みいただきありがとうございます。


実験も含め、今日完結まで一時間ごとの連続投稿させていただきます。

23時で完結しますので、一気読みされたい方は23時にまとめてお読み下さい。

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