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夢を持たない男子高校生は幸せの意味を知らない  作者: セーラ
第三章 有馬 ひじり編
30/31

30話 夢の一つ

 「ど…どうする?」


 すみれが少し顔を赤らめながら聞いてくる。


 その顔を見た瞬間、僕も少し照れてしまった。

なんで、アイツは顔が赤くなってるんだ?

もしかして…俺のこと…。


 そんなこと、天地がひっくり返らないとないか〜。

 

 自己完結してしまった。


 何故なら、すみれはクラスでもかなり人気のある美人だからである。

 その透き通った様な声も美しく、小鳥と会話ができるかと思ったほどだ。


 それにしても、僕は…入学当初からすみれに一目惚れしてるんだよな…。


 もし…もし、すみれも俺のことが好きだったら…。


 「ねえ!海行かない?暑くなっちゃった。」


 少し動揺した様な素振りを見せながら、すみれが話し出した。


 そういえば、ニュースで今日はかなり暑くなるとか言ってたな。


 かなり突発的な提案をされたが、潮風に当たり冷静に考えたい気分だったので、提案をのむことにした。


 「やっと、海を見る事が出来るね。」


 そう呟く様にすみれは言い放った。


 「え?僕は海を見た事があるけど、すみれはもしかして初めて海を見るの?」


 ハッとした表情を浮かべながら、すみれがこれを否定する。


 「いや、違う違う!こっちの話だから!」


 こっちの話?一体何の話なのだろうか。


 近頃、彼女はどこかおかしい気がする様な…。


 海へ着くとそこには雄大な自然が…


 広がっているはずもなかった。


 海の色は汚染物で汚され、空気は後ろの道路で濁りきっており、大きな橋こそ綺麗なものだが、この自然に人工物は必要ない。


 やっぱり、ここの海は汚いな。

 そんな事を考えながらふと、彼女に目をやった。


 僕の目に映る彼女は、まるで長年の夢を叶えた少女の様な嬉しそうな表情をしていた。


 「随分と楽しそうだね。」


 自然と言葉がこぼれ落ちる。


 「楽しい…か。どっちかっていうと嬉しいかな。」


 少しドキッとしてしまった。


 これって、もしかして、そういうことか?

 2人でこの海を見れた事の幸せで「嬉しい」って事なのか?


 意を決して聞いてみようか…そんな事を思いつつも彼女の言葉の続きを待った。


 「まあ、正しくは半分嬉しい。かな?いつしかの2人でこの景色を見るのが私の夢だったから。」


 そう言うと彼女は、海とは反対の方へと足を運ぶ。


 何か、悪いことでも聞いてしまったのだろうか。

 それよりも、半分嬉しい?と言うことは、過去に意中の人がいて、その人と海を見る約束でもしていたのだろうか。


 さっきの表情とは、打って変わって少し寂しそうに見えた。

 ただ、海に反射する夕日の光で彼女は、とても美しく見える。


 「日も落ちてきたし帰ろうか。」


 「そうだね。今日は楽しかったよ。」


 「私もよ。なにせ、夢が一つ、また叶ったのだから。」


 はるか海の向こうを見ながら彼女は言った。


 夢が一つ…か。

 彼女は、この先一体、いくつの夢を叶えていくのだろうか。

 僕に手伝える夢はあるのだろうか。


 彼女が夢に苦しんでいるときに、いつも側で支えるのは自分でありたい。

 不思議と…いや、不思議ではないか。

 何故なら僕はー


  彼女のことが好きなのだから。


 その事を、本当の意味で自覚してしまった瞬間、僕はぶっ倒れそうになった。

 そうか。人を好きになるということは、こういうことなのか。


 いつの日か僕にも夢ができて、それを君と共有する事が出来たらどんなに嬉しいだろうか。


 君は、喜んで僕の夢を手伝ってくれるだろうか。


 もう、ここで君のことが好きだと伝えてしまおうか。


 いや、何故かは分からないが、それは今ではないということがはっきりと分かる。

 もっと、適切なタイミングがあるはずだ。


 電車の座席に2人で座ると、疲れがドッと押し寄せてきた。


 肩にトン…と重みを感じる。


 僕は肩で、その幸せを背負いつつも少しばかりの眠りについた。

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