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夢を持たない男子高校生は幸せの意味を知らない  作者: セーラ
第三章 有馬 ひじり編
27/31

27話 1万年後また会えたら

 その日、不思議な夢を見た。

 城の裏にある、大きな原っぱで少年と少女が楽しそうに駆けている。


 時折、少年は物珍しそうに昆虫を見てみたり、花の匂いを嗅いでいた。


 どうやら、少年は身体が弱く、少し走っただけで、息が切れてしまうほどだ。


 「ねえ、スリード。大丈夫?苦しくない?」


 優しく声をかける少女の服装は、お世辞にも綺麗とは言えなかった。


 それに対して、少年の方は、貴族の様で格式のある格好をしている。


 「ああ、大丈夫だよ。それよりも見てよ!この蝶々!図鑑で見たものとそっくりなんだ!」


 少女は少年に微笑みかける。


 「僕も早く、病気を治してこの世界の色々なものを自分の目で見てみたいな。きっと、この世界は図鑑に書かれていない、沢山の不思議に満ち溢れているんだ!」


 少年は、目を輝かせながら原っぱに寝転んだ。

 暖かい気持ちのいい風が、頬を撫でる。


 「そうだね。君ならきっと叶えられるよ。でも、旅をする時は、私も一緒に連れて行ってね?」


 少女も少年の横に寝そべった。


 「え?どうして君もついてくるんだい?」


 少女の顔が徐々に赤みをおびていく。

 

 「だって…それは…君のことが--」


 風でその先はよく聞こえなかった。


 ただ、少年の顔も徐々に赤くなっていったので、恐らく、そういう事なのだろう。


 というか、何故、僕は他人の告白で少し恥ずかしくなっているんだ?

 これが、共感生羞恥心ってやつ?


 ズキン


 急に頭が痛み始める。

 ズキン

 ズキン

 ズキン


 頭が肩割れるようだ。

 目の前が、ノイズが入ったように何も見えなくなる。


 ここで、僕の心の中に一つの疑問が浮かんだ。


 これは、本当に夢なのかーー



 やっと、前が見えるようになったと思ったら、舞台が急に変わっていた。


 説明されなくともわかる。ここは、あの少年が住む城の中だ。


 窓からは、美しい庭園を覗き込むことができる。


 その廊下で、どうやら噂話をする2人のメイドの姿が見える。


 「また、王子様がお城の外へ逃げ出したらしいわよ。先ほど、執事が死に物狂いで探しに出かけたわ。」


 「また、逃げ出されたの。今月でもう何度目なのかしら。噂によると、城下町の見窄らしい娘と遊んでいるそうじゃない。」


 廊下に響かないように交わされたその会話を、聞いている人物が1人だけいた。


 その男は、廊下の奥から現れた。

 屈強な身体、アゴに蓄えた大きな白い髭、そして、


 「息子がいつも迷惑をかけているようですまない。許してほしい、あの子はもう長くないのだ。」


 この身体全身に響くような低い声。

 まさに、王になるべくしてなったような存在。


 慌てふためく、メイドの様子が見てとれる。


 『い、いえ!申し訳ございません!ご子息様の噂話など‼︎』


 メイドの1人が近くにあった花瓶を割りかける。


 危ないところだった…あのポンコツ具合は、ゆりに似ているな。


 「長くないからこそ、息子には自由に生きてもらいたい。今でこそ、お騒がせモノになっているが、アレでも昔は、病気のことで塞ぎがちだったのだ。

 少しでも、暇つぶしになる様にと買い与えた図鑑を見る様になってからは、よく外へ逃げ出す様になった。」


 少し笑いながら、王が話を続ける。


 「息子の夢は、世界を自分の目で見ることだ。この世の不思議も、暖かさも、切なさも、恥も。何もかもが息子の前では、新鮮なのだよ。

 出来れば、その夢を叶えられる様に…もっと丈夫な身体で…産ませてあげたかった…。」


 「王様…どうか涙をお止めください…。」


 どうやら、少年の命はもう長くないらしい。


 恐らく、少年の世界を見るという夢は叶わないだろう。


 そして、あの2人には、いずれ別れがーー



 パッと目が覚めた。


 知っている天井。ここは僕の部屋だ。


 僕は、夢の出来事をハッキリと覚えていた。


 またあの夢か--


 それにしても、何故、こんな夢ばかりを見るのだろうか。夢にしては物語が出来すぎてはいないだろうか。


 まあ、考えてもわからない。

 取り敢えず、約束の場所へと向かうとしよう。


 土曜日の朝は、最高だ。

 今日一日遊び倒しても、次の日はまた休みがある。


 今日は、莉里とすみれと有馬さんとショッピングモールで買い物をすることになっている。


 勿論、目的はそれだけではない。


 昨日、突然身元引き受け人として、現れた有馬と莉里の仲を確かめるためだ。


 少しでも莉里が、怯えている様子があれば、打開策を考えなくてはならない。

 最悪、ウチで引き取ることになったとしても!


 アイツが帰ってくるまで、莉里を泣かすわけにはいかない。


 いざ!尋常に勝負!


 僕は、ショッピングセンターへ向かうため台場へと足を踏み進めるのであった。


 その日、僕は有馬の不可解な言動を度々、耳にすることも知らずに…

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