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24話 終わりの始まり

 恐らく皆んなが居るのは、区役所前の中央公園に違いない。

 あそこなら莉里を遊ばせることもできるし、ある程度の広さもあるから、幸太郎が狼男になったとしても直ぐに助けを呼べるだろう。


 まずい…月が出ている。

 しかも今日は、綺麗な満月だ。


 まるで、あの時のような…

 僕は今、昨日の僕よりも優しくなれているのだろうか。

 

 事実を隠そうとカイトを追いかけているのは、優しさなのだろうか。


 本当の優しさとは、事実を伝えて人を殺す事をやめさせる事なのではないだろうか。


 信号待ちで足を止める度に、答えの出ない自問自答を繰り返す。


 永遠のような時間が流れる。

 

 もし、幸太郎が狼男になって皆んなが襲われてしまっていたら?

 カイトが全てを話した事によって、幸太郎に何か影響が出始めたら?


 嫌なことばかりが頭をよぎった。


 病院からの長い道のりを走り抜け、やっとの思いで公園に着いた。


 辺りはもうすっかり暗く、より一層月の輝きが増している。


 人気はほとんど無く、風に揺れる木々はどこか不気味なものを感じていた。


 公園を進むと、人影が見えた。


 間違いない。皆んなが居る。


 「こんなところにいたのか、探したんだぞ」


 背中を向ける集団に僕は足を運んだ。


 「おい、カイト。今の話は本当なのか」


 翔太郎の声が聞こえた。


 嫌な予感がする。


 ゆりと莉里は不思議なものを見るような目で


 幸太郎を見ていた。


 すみれはというと、こちらからはその表情は見て取れないが、落ち着いているというのは分かる。


 そして…肝心の幸太郎は。


 驚いた顔をしていた。


 それもそうだ。

 いきなり親友がやってきて、お前は狼男で殺人犯なんだ。と言われたって信じるわけがない。


 記憶に残っていない限りは…


 「そうか…あの日見た光景は夢じゃなかったんだ…

 俺の記憶だったのか…

 俺の、心臓の…」


 どうやら、狼男になっている間の記憶は断片的にしか無いらしい。

 

 「あの、肌を切り裂く感触も、頭にかぶりつく感覚も…全てが本物だったのか。

 ただの夢であって欲しいとずっと思っていた。

 幸せな毎日を過ごしているのに、何故あんな夢を見るんだとずっと考えていた。」


 幸太郎は膝から崩れ落ちて、涙を流した。


 僕には、その姿が、ただの人間にしか見えなかった。


 「実は…俺も、昔は体が弱かったんだ」


 カイトが幸太郎に歩み寄る。


 「君ほどではなかったけど。でも、学校を休みがちな俺は、よくクラスの奴に虐められたよ。

 ズル休みをするなだの、先生のお気に入りって言われたりね。

 本当に辛かった…

 だから大きくなったら、弱い人たちの味方になりたい。

 ヒーローになりたい!って本気でそう思うようになったんだ。」


 知らなかった。

 まさか、カイトにそんな出来事があったなんて。

 人より正義感が強い奴だとは思っていたが、まさかそんな理由があったとは…

  

 幸太郎の涙が止まった。


 しかし、それは同じ味方を見つけたからではない。


 嫉妬だ。


 「昔は俺と同じで体が弱かったって?

俺の気持ちがよく分かるって?

じゃあ、お前は人を殺した事があんのかよ。

生きる為に…人を殺した事があるのかよ!!

人を助けることばかりをしてきたお前には、俺の気持ちは分からねえよ。」


 幸太郎の体が徐々に変化していく。


 衣服の軋む音が鮮明に聞こえる。


 背中には寒気が走り、辺りには獣臭い匂いが充満した。


 「こっちへ来い!カイト!」


 翔太郎が必死になってカイトに呼びかける。


 さっきまで月に照らされて泣いていたその細い身体は、いつの間にか人ならざるものの姿になっていた。


 また一つ、世界にヒビが入る音がする。


 この世は残酷だ。


 「全員逃げろ!」


 翔太郎とカイトの号令で一目散に逃げ始めた。



 「月が隠れるまで全員なんとしてでも逃げ切るんだ!

 今のアイツには、幸太郎としての記憶はない!

 ただの、狼男だ!」


 チラッとだが、すみれが莉里を抱えて逃げていくのを確認する事ができた。


 こうして僕達は散り散りになって、狼男から逃げる事になった。


 

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