17話 終わりの始まり
月明かりが夜の街を照らしている
静かな神社の隅で僕は、歌が目覚めるのを待っていた。
「…お姉ちゃん。」
どうやら目が覚めたらしい。
「気分はどう?どこも悪いところはない?」
魂が抜けた人間は初めて見るが一応気を使ってみる。
「大丈夫。そうか…お姉ちゃんはそんなこと考えていたんだ…」
恐らく彼女の魂は、体の中で起きていて、今までの全ての出来事を記憶していたのだろう。
さて、僕は音との約束を守らねばならない。
…友達の作り方ってどうやるんだっけ?
思えば、友達なんか気がついたら出来ていたし、自分から「友達になろう!」だなんて言ったこともないような…
歌は不思議そうな顔でこちらを見つめている。
「その…あー、そうだな。実はさ、歌!俺と友達になって欲しいんだ!」
言ってしまった。何故だか俺は、少しだけ恥ずかしい気持ちになった。
琥珀歌の次の言葉は、僕の予想をはるかに超えたものだった。
「いえ…気を使ってくれなくても大丈夫。」
気を使っている…?
僕はいつのまにか気を使っていたのか?
「あなたが私と友達になりたいのは、お姉さんとの約束のためでしょ?あなたに迷惑をかけることはできない。私は、君が優しいことを知ってるから、きっと甘えてしまう。」
そうか、僕はいつのまにか気を使っていたんだ。
でも、そんなことは関係ない。
「僕はね、心の底から君と友達になりたいと思ってるんだ。
君は僕のことを知っているけど、僕は君のことをまだ知らない。
そんなの…悲しいじゃないか。
君が人と仲良くすることが、得意ではないことは知っている。だからさ、ゆっくりで良い。
君のことを教えてくれないかな?」
そう伝えると彼女は少し涙を漏らした。
恐らく、姉以外の人に優しくしれるのは初めてなのだろう。
早速、約束を一つ破ってしまった。
きっと僕は、死んだら音に殺されるな…
落ち着いた歌を家まで送って行った。
家に帰ると僕は、気絶したかのようにすぐに眠りに落ちてしまった。
今日は金曜日。明日はもうゆっくりしよう…
そしてまた、不思議な夢を見る。
少年と少女の夢だ。
「ねえ見て!あれが蝶々よ!そしてあれがたんぽぽ!」
小さな女の子がはしゃいでいる。
「すごい!図鑑で見た通りだ!家の外は不思議なものでいっぱいだね!」
男の子の方は位が高いのだろう。上質な素材で作られたいい服を着ている。
「そうだよ!外の世界はね!知らないことや物がまだまだ、たっくさんあるの!」
目をキラキラと輝かせている女の子…この子、どこかで見たような…
すると、遠くの方で女の人の声が聞こえた。
「ーー様!こんなところにいらっしゃったのですか!」
この格好は…お手伝いさんだろうか。
「「うげっ!にげろぉ!!」」
何故か2人は急に走り出した。あのお手伝いさんに捕まりたくないのだろう。
ガタッ‼︎
ベットから転げ落ちてしまった。
唐突に夢が終わる。
外はまだ暗かった。
「随分とまたリアルな夢だったな」
そんなことを呟きながら近くの時計で、時間を確認する。
短い針は2時を指していた。
深夜2時⁈
全然寝れてないな。
ぐぅ〜〜
腹がなった。
そういえば、まだ夜ご飯を食べていない。
戸棚や冷蔵庫を確認するが何も無い。
仕方ないな。カップ麺でも買いに行くか。
少しばかりの小銭を持って、近くのコンビニへと向かう。
何故だか不意に翔太郎のことを思い出す。
そういば、アイツ最近ずっと連続殺人の事ばかり考えてるよな。
全く、琥珀の件は僕に押し付けて、違うこと考えるなっつーの。
そんな文句を考えながら道の途中の裏路地に目をやる。
何か不思議なものと目が合う。
体が全身毛に覆われていて、尻尾が生えていた。
人の手とも取れるその右手に掴まれていたのは、間違いない。
人の頭だ。
二足歩行のその動物⁈化け物⁈は唐突に口を開く。
「いや〜、あの、違うんですよこれ。落ちてたから拾ったって言うか。何というか…取り敢えず、信じてもらえません?」
化け物がこっちに近寄ってこようとする。
その瞬間、僕は明るい方へと後ろを振り向かずひたすらに走っていた。
走っている間は、何も考えることができなかった。




