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魔物とのたたかい

 アデリアさんにドナドナされること数刻、最初にやってきた草原のあたりにやってきた。さすがにずっと女性の小脇に抱えられるのも抵抗があったので、途中で降ろしてもらえたが、逃げようとしたらすぐに捕まった。もはや俺に選択肢はないらしい。というより、何の根拠があって魔物と戦えると思われているんだろうか? 気になったのでアデリアさんに聞いてみた。


 「アデリアさん。アデリアさん。そもそもなんで魔物と戦わされるんですか? 俺はバチバチの素人ですよ? あれですか、新手の殺人ですか? 誰も見てない場所で魔物とやらせて___むぐぐッ」

 

 話かけていたら口を縛られた。もごもごとした声しか出せない。えっ、本当にやれらちゃう感じですか、これ?まだ死にたくはないんですけど、何とかなりませんか、何でもしますからッ!目で訴えているとアデリアさんはニッコリと笑って一言。


 「 う る さ い  」


 どうやらダメみたいですね。グッバイマイ異世界ライフ。来世は危険のないぬくぬくとした世界がいいな。そんなことを考えていると、森の方から巨大なニワトリがやってきた。いや、あれニワトリかなあれ。赤いトサカに、鋭いくちばし、白い体毛は完全にニワトリのそれだが、大きさが3mを軽く超えている。おまけに尻尾らしき部分からヘビさんがこんにちわしているのだ。完全にヤバイやつだよ、あいつ。首にもなんか禍々しい首輪ついてるし。トゲトゲして、当たったら痛そうなヤツ。


 「ほう、コカトリスか。ちょうどいい。タイシ、あいつとやってみろ」


 アデリアさんからの死刑宣告が入りました。しかしここまで来てしまったらやるしかない。覚悟を決めると、口枷をはずしてもらえた。これで万全。死の危険を感じているからか、体が小刻みに震える…。不思議と心地いい緊張感がある。やれそうかもと思えてきた。人間死を前にすると、何でもできる気がする。


 「アデリアさん。もしこいつと戦って生き残ったら、俺と結婚してください。」

 「なっ、なにを言っているんだ、お前… そんなこと言う場面じゃないだろ! それに私みたいな女となんて…」

 「いや、アデリアさんだからですよ。この世界にきて、右も左もわからない俺を助けてくれた、アデリアさんだからです。」


 これだけは真剣な気持ちである。こんなに親切に助けてくれたのも、お節介を焼いてくれたのも彼女だけなのである。この死が目の前にある時だからこそ、伝えておきたかった。よし、これで戦える。


 「分かった。この戦いに勝ったらだぞ! 取り消しは無しだからな! 絶対だぞ! 絶対!」


 アデリアさんが言うのと同時にコカトリスが突っ込んでくる。自分よりはるかに大きいものが突進してくることに、ものすごいプレッシャーを感じる。だが今の俺は、何でもできるモードなのである。右手を握りこみ、突っ込んでくるコカトリスに向かって思いっきり振りかぶった、次の瞬間___


 コカトリスが、吹っ飛んでいった。


 「えっ??? はっ??? 」


 コカトリスの巨体が宙を舞い、30mほど先で大きな音を立て地面に落下した。状況から言って、俺のパンチ(フォームも何もめちゃくちゃで、正直当たったのも奇跡だった)で吹っ飛んでいったみたいだ。うーむ、ハードパンチ。ボクシングの才能あったかな、俺。

 

 「やったな、タイシ!!! これでお前は私の旦那様だッ!!!」


 アデリアさんに思い切り、抱きしめられた。嬉しさ半分、苦しさ半分である。なんか、意識が遠くなっていくような… 首絞められてる…? 気づいてくれたみたいだ。状況はよくわからないが、アデリアさんが喜んでくれたみたいでよかった。こんな状況でも自分の告白が叶ったことはとてもうれしい。


 遠くに倒れたコカトリスだが、ゆっくりと起き上がろうとしている。とどめを刺そうかとも思ったが、どうも様子がおかしい。さっきまであった敵対心が感じられないのである。恐る恐る近づいてみると、どうも首輪が落下の衝撃で壊れたらしい。破片があちこちに散らばっている。どうも感謝しているらしい。近づいて恐る恐る撫でてみると、座ってくれた。触り心地はフワフワでとても、心地いい。

よく見るとかわいいヤツじゃないか。このコカトリス飼えないかな。ペットに欲しい。アデリアさんに相談しようと思ったが、コカトリスを倒してからというもの、俺の右手ひっついてずっとくねくねしている。告白する相手間違ったかな…俺…。


 この後、アデリアさんが正気に戻るまで、右手は離してくれなかった。ちなみに、正気に戻ったのは1時間後である。よっぽど嬉しかったのかな。喜んでるアデリアさんは見飽きなかった。

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