冒険者ギルド
アデリアさんに連れられてやってきた場所は、大きな酒場のような建物だった。押して開けるスイングドアの先には、広めのホールがあり、左手のカウンターには職員らしき人と、こちらから話かけている人が見える。右手は食事スペースになっているようだ。ガヤガヤと大勢が食事をしながら話している。
「何をしている? こっちだ。」
アデリアさんは、すでにカウンターの方でこっちを呼んでいた。すぐに近くによっていくとカウンターの向こうから職員らしき女性がアデリアさんに話かけてくる。
「こちらの方が登録希望者ですか? 確認ですが本当に大丈夫でしょうか? 有事の際の対処能力がない人に登録はお勧め出来かねますが…?」
そう言ってカウンターの女性はこっちをじっとみてくる。ものすごい怪訝な目をしている。
「大丈夫だ。私の推薦だからな。それにこいつは、カドラス草原のど真ん中でも無傷だったやつだぞ。ここの依頼で困ることもあるまい。」
そういうと自信気にアデリアさんは胸を張った。ドヤ顔でこちらを見られても状況は、さっぱりわからない。だいたいなぜ、彼女が自慢げなのだろう? 疑問は尽きないが、とりあえずここについて改めて聞いてみる。
「ここはどういった場所なんでしょうか?」
「ここは冒険者ギルドです。各地からの依頼を我々冒険者ギルドがとりまとめ、登録していただいている冒険者さんに振り分けることで運営されています。」
続けて職員のお姉さんは、冒険者ギルドについての詳しい説明をしてくれた。どうやらここ冒険者ギルドは、各地から普通の人では対処できない、あるいは難しいものについての依頼を引き受け、それを登録冒険者に斡旋して運営されているらしい。規模の大きい”なんでも屋”といった感じだろうか。依頼内容は魔物の討伐から探し物、物品の運搬まで多岐にわたる。危険の伴わない仕事もあるらしいが、だからと言って、有事の際に対処能力のない冒険者では、ただ死ににいくような依頼がほとんどらしい。いやいや、昨日まで危険のない世界で、一般人やってた人間に務まる仕事だとは思えない。
「アデリアさん流石に魔物の対処とか言われましても… 戦闘経験ゼロの人間には無理ですよ…?」
仕事を紹介してもらったアデリアさんには悪いが、魔物との戦闘が予想される職場は厳しいだろう…
そう思いアデリアさんに言ったのだが…
「なんだそういうことか。そういうことは早く言え。戦闘経験がないならやってみたらいいのだ。」
「_____はい?」
アデリアさんは、なにを言っているのだろうか…?いやいや経験ないからやってみればいいでしょって…それで何とかなる話ならそもそも、この組織に依頼など来ないだろう。戦闘のエキスパートにお願いしなければ、何とかならないからこの組織があるわけで_______
「とにかくまずは習うより慣れろだ。行くぞ!」
そう言ったか言わずか、アデリアさんに小脇に抱えられ連行された。どうやら拒否権は自分にはないらしい。カウンターのお姉さんと目が合う。いい笑顔ですね。なんで人がドナドナされていくのにそんなにいい表情をしてらっしゃるんでしょうか…? ……異世界って世知辛いね。泣きたくなってきたよ。