転移、決意そして、出会い
気が付くと草原のど真ん中にいた。ここが異世界ってやつらしい。ずっと端のほうに壁らしきものがある…反対側には都市だろうか…?いくつかの建物が見える。この草原の真ん中にいてもどうしようもない、とりあえず都市らしき方へ向かってみよう。
…しばらく歩き続けると、都市は結構な大きさであることが分かった。あれだけの大きさであれば多くの人がいるだろうし、仕事もそこそこにあるはずだ… 前の世界では、仕事になじめず何度も転退職を繰り返した… 三度目の転職先ならと思ったが、そこでも人間関係がうまくいかずにいた。自暴自棄になり、無気力に毎日を生きていた矢先に、事故死…
あの時の言葉を思い出す…
「異世界でやりたいこと…か」
思えば人に言われるがままに勉強をし、受験就職と生きてきた。自分の意志で決めたことがいくつあっただろうか? 今の俺は一度死に蘇ったに等しい… ならこの世界ではやりたいことは全部やろう!
思うがままに生きてみよう!
「よーし、やりたいことは全部やるぞ!!!」
そう大声で宣言した時、目の前に女の人がいた。思いっきり目が合っている……
全身を鎧に包んでおりいかにも騎士っぽい。女騎士さんはこちらを怪訝そうな目でみている。
目の前で急に大きな声で叫ぶ人がいたらどうだろうか… うん、変な人ダネ!
「ヌムエド騎士団のアデリアだ。こんな草原の真ん中で何をしている?」
「あっ、えっと、気が付いたらここに…?」
ものすごい変人を見る目で見られてる! いや確かに大声だしたけども!、言動も、しどろもどろだし、理由もめちゃくちゃだけども! ……冷静に考えてヤバイやつだった…どうしよう…
女騎士さんはしばらく考えたあとに、渋々といった感じで街まで案内すると申し出てくれた、ありがたい。その時、本気で嫌そうだったのが心に痛い。あんな宣言しなきゃよかった、普通が一番!
アデリアさんによると街までは歩いて一時間ほどらしい。哨戒をしていたら怪しい男が武器も持たずにいたから声をかけたそうな…変な奴もいたもんだ …自分のことだった
これから行く街は”ヌムエド”というらしい。この国のなかでは三番目の大きさだとか、なるほど大きいわけだ。
「ところで身分証はもっているよな? 都市に入るには必須だが?」
「持ってないです(ドヤ顔)」
「お前のこと斬ってもいいかな(ニッコリ)」
「ごめんなさい、持ってないです」
「最初からそう言えばいいものを…」
身分証はアデリアさんの方で何とかしてくれるらしい。いい人に出会えてよかったなぁ…
話しながら歩いていると街の入り口に着いたようだ
「ついたぞ。ここがヌムエドだ」